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少し短めのお話のため、本日はこの前の15話とこの16話の2つをアップしています。ご注意ください。
その週末は、まのかの希望で、みんなで予定を調整して、失恋カラオケ祭りと相成った。
「みんなー!今日は、ありがとー!」
とマイクを通してわざとアイドルの真似をして笑うまのかは、いつものように明るく爽やかだけれど、少し痩せたように見える。
今日のこの集まりで私達に、もう大丈夫だよ、ありがとうってことにしたいんだ、とみんなが分かっていた。
そんなに簡単に大丈夫になるわけは無いけれど、まのかにとって、それが必要なのだ。振る舞いから、自分を立て直すために。
大盛りポテトをシェアしながら、ドリンクを飲んで、全力で歌う。立ち上がって、大熱唱する。時々、曲に合わせて変顔して爆笑したり、大屋に対しての痛烈な言葉になりそうな歌詞が来たら、分かりやすい顔と気持ちを込めて歌ったりして、また笑う。
「はぁ、サイコー」
みんなが歌い疲れて少し途切れたところで、まのかがぽつりと言い、そのまま、まのかの次の言葉を待つような沈黙ができた。
「私さ、フラれたあとに意地を張っちゃったのか、プライドが邪魔したのか、ただ引き下がれなくて、」
まのかが誰とも目の合わない斜め下を見ながら話し始めた。
「じゃあ、これからは友達になろうって言ったの。付き合い長くて、お互いのことよく知ってるし、なんかあったらこれからも話し聞くよ、みたいなこと」
「いいじゃん。むしろ、えらくない?」
と、紅羽が口を挟むと、まのかには珍しく自嘲気味に笑った。
「そしたらさ、AIに相談するから大丈夫、って言われたの」
その言葉に、花音は背筋がゾクっとした。
「AI?」
「よりにもよってAI?」
「もう一個の暴言といい、大屋くん、本当にどうかしちゃったの?」
「重ね重ね、よくもそんなことが言えたね」
みんなの反応を聞きながら、まのかは、冷めたポテトにたっぷりのケチャップとマヨネーズをつけて、口に放り込んだ。
「他の女の子の名前出されるのよりはいいのかな?ま、私を拒絶するためにテキトーに言ったのかもしれないけどさ。あー、私との二年弱の時間で培った関係性より、AIの方が信頼できるんだーって思って、なんか笑えた」
「あんまり人にバカって言いたくないけど、バカだね、大屋は」
一花が、大きなため息とともにそう言うと、ポテトにポテトより多い量のマヨケチャを乗せてむしゃりと食べた。
「ああ、なるほど〜思考を放棄したんだね〜」
「もう脳みそ溶けてるんじゃないの」
「AI依存症。大屋くん、いつか絶対後悔することになるね」
「AIに褒めてもらって、一生一人でオナってろって感じ」
最後の最凶のセリフは、爽やかまのかの口から発せられた言葉だったが、それを例外としても普段の面々からはなかなか出てこない辛辣な言葉を吐き出しながら、みんな次々と冷えたポテトに手を伸ばす。いつもはたっぷり残るマヨネーズとケチャップもすっかり綺麗になくなって、あっという間に五人のお腹に収まった。
「はー!モヤつき出し切った!みんなありがとね」
まのかがニコッとして、みんなの顔を見る。
「ホントはグーパンしに行きたいくらいだけどね」
と、大屋とまのかを一番近くで見てきた世莉が言う。
「そしたら、余計まのかが嫌なこと言われそうだから我慢するけど」
「そ知らぬ顔で足引っ掛けるくらいはできそう」
と紅羽が続く。
「絶対幸せになろう、まの」
と言った一花に続いて、
「なるよ~、まのちゃんは絶対幸せになるよ~。そして大屋くんは死ぬほど後悔する~」
花音が念を込めて強く言った。
まのかは、
「あー、めちゃくちゃ愛感じる。ありがとすぎる。みんなもね、みんなも幸せでいてよね」
と言うと続けて、
「花音、日野くんとなんかいい感じなんじゃない?」
とニヤリとする。
「えっ、あ、その…うん…」
突然のフリにしどろもどろになる花音に、
「花音、私に変な気を使わないで、仲良くね!」
と、畳みかけ、
「紅羽もだよ!今まで通り惚気たり愚痴ったりしてよね!」
と、今度は紅羽を指差す。
紅羽は、去年卒業して地元の大学に進学した先輩ともう一年以上付き合っているのだ。
「世莉も、一花も、何か素敵なことあったら、絶対遠慮しないでよね」
みんななんだか泣きそうになる。
まのかの気遣いと切なさと優しさを思って。
「あーあ、相手がいれば今すぐめちゃくちゃ惚気るのにー」
と一花が言って、みんなを笑わせる。
「もう一回、しっかり大屋くんを呪っとくか」
花音が、冗談めかして、両手を出すと、水晶玉を前にした占い師みたいなポーズをする。
まるでアルコールでも飲んだかのように、妙に昂揚した気分の全員がそれに続いた。
「…あれ、うちらヤバめの新興宗教かな?」
「確かに絵面ヤバ」
「呪ってる感めっちゃある」
そう言って、またみんなで笑った。




