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「うっわー、なんかちょい引くわ!結果良かったものの、攻めすぎじゃね?」
あらゆるところをオブラートに包みながら話したつもりなのに、大きな弁当箱もそっちのけで、暁斗がうるさい。
体育館横のドア前の階段で、昼休みの報告会である。
「いや自分でも攻めたなとは思ってるよ…」
改めて第三者に言われると気まずい。確かに、瑛司は自分でも、こんなに気持ちが疾って先を焦るタイプだなんて思ってもいなかった。でも、それだけ明らかに今までとは違う、求めるものができたことに、喜びも感じる。
「そうだな、反省しろよ」
「…花音には謝るよ。でも、さわやかの仮面被ったお前の実体よりは、俺のが全然ピュアだからな」
暁斗は高校に入ってから、瑛司の知る限りでも既に三、四人と付き合ったり別れたりしている。告白されて断って泣かせている姿も見たことがあるのだ。
「俺は、さわやかーに流れに身を任せてるだけよ?そんな自分からグイグイ行ったことないし。ホントよくオッケーもらえたな?時田さんはガード堅そうに見えて意外と押しに弱いのか?心が広いのか?それとも瑛司が異常なテクニシャンなのか?」
瑛司はそれには答えないまま、惣菜パンの続きを齧った。
「てか、瑛司、今までそんなに女にがっついたことなくね?意外よ意外!キャラ変したんか?」
がっついた、という言葉に、瑛司は、紙パックにさしたストローを思わず噛んでしまって、顔を顰める。
まあ、確かに、がっついていた。自分だって、外から見たら、『キャラじゃない』と言っただろう。それでも。
「…絶対欲しいと思ったんだよ」
「ひゃお!変な声でちまった!マジかー。そんなにかー」
聞いた方の暁斗が照れて、少し気まずそうに弁当に戻る。
そしてモゴモゴしながら、また喋り出す。
「なんか女のことはうまく流してるっていうか、それなりに遊んでるようで、どっかで最後まで踏み込まないっつーか、踏み込ませない感じだったのにな。人は変わるんだなー。……てか、瑛司とは仲良いけど、こんなガッツリ恋バナすると思わんかったわ」
照れ笑いする暁斗に、瑛司も、だな、と答えて、噛んだところを直したストローでジュースを飲み、擽ったい空気から気持ちを逸らす。
仲は良いし、真面目な話から下ネタまで話すわりに、こんないわゆる恋バナはしたことがないのだ。
「あー、そういや前に、瑛司が時田さん口説くって言い始めた時に、愛菜と美月のこと気にしてたけど」
「あー、美月はお前だろ?」
と瑛司が返す。
美月は暁斗のことが好きなんだろうなと時々感じてはいたのだ。
「やっぱり?なんか俺もそんな気はしてた〜」
と暁斗は大口で食べながら特に表情もなく返す。
「またさわやかに流されて付き合うのか?」
瑛司は、先程の本人の発言をそのまま言葉に載せて聞いた。
「んー、ないかな。受験あるし、向こうも今からそこまで冒険せんでしょ」
「受験な」
「そうだよ、なのにこのタイミングでよく行ったわ、瑛司は」
「あぁ」
暁斗は空になった弁当箱をもぐもぐしながら脇に置くと、紙パックの乳酸菌飲料をゴクゴクと直飲みする。そして、ふぅーとひと息つくと、
「どうすんの。親父さんとの約束もあるんだろ?」
と、切り出した。
「どうするも何も、絶対手放さない」
「っかー!強火!じゃあ俺は頑張れとしか言えないな」
「サンキュ」
「…なんかもう遅い気もするけど、がっつきすぎはだめよ!大事にするのよ!泣かせちゃダメよ!」
「誰が降りてきたんだよ。分かってるわ。死ぬほど大事にするわ。てか何人も泣かせてる暁斗に言われたくないわ」
急にオネエ口調になった暁斗に、ツッコミながら返す。
「はぁー、時田さんかあ。ほとんど喋ったことないけど、瑛司をこんな風にしたなんて、俄然興味出てきたな」
瑛司は暁斗の言葉に、花音に本能的にグッときた上に、理性的にもノックアウトされたことを言いかけてやめた。何もわざわざ、余計に興味を持たせるようなことは言わなくていい。
「しないと思うけど、からかったりしないでくれよ。あと俺の彼女だから」
瑛司は念の為クギを刺す。
独占欲丸出しの瑛司に、暁斗は呆れ顔で、
「しないだろ。俺を何だと思ってんの」
と言う。
「何だかんだで絶対良い奴。じゃなきゃ話してない」
暁斗は瑛司のその言葉にニヤッとすると、
「あー、そういうとこ可愛いんだよなー、瑛司は」
と、瑛司の頭をワシャワシャしようとしたので、すかさずガードする。
「そういや、愛菜は瑛司?」
「いや、そんな感じはないな」
「だな。なんつーか、愛菜はあれで見てるとこが違うからな」
「美月の応援じゃないか?一人で突っ込むより、友達とってことだろ」
「そっかー、そんな感じだよなー。瑛司はむしろ巻き込まれてたってことか。なんか悪いな」
「別に、誰かが悪いとかじゃないだろ」
「カッコつけんなよ」
「いや、事実な」
「まあー、何も起きないとは思うけど、いざという時は何とかするわ」
そう言って、暁斗は頭をガシガシっとかいた。
「泣かせないように?」
また、暁斗の先程のセリフをとって言葉に載せる。
「お前ねー。泣かせたくて泣かせるんじゃないわけよ」
少し困ったように片眉を下げて暁斗が答える。
「モテる男は言うことが違うな」
「お前に言われたくないけどな」




