7-14. 【閑話】さまよう気持ち
グレーテルは、ぼんやりと手の中のシュネーバルを見つめる。
ファウストは気遣わしげに部屋を後にし、バスケットはそのまま置いていってくれた。
(私が、一人になりたいのを察してくれたんだよね)
優しいな、と思う。けれど同時に、残酷だとも思った。
(悪魔の禁忌、知りたくなかった……っ!)
知らなければ、夢を見ていられたのに。いつの日か、メフィストが自分のことを好きになってくれて、恋人になれるかもしれない――そんな幸せな夢を。
けれど、ファウストは、知らないままの方が哀れだと考えたのだろう。それは正しい判断だ。責めるべきことではない。物事を公平に判断できる機会を与えてくれただけだ。
(名前、呼んでくれるようになったのに)
なぜ、どうして。疑問符が次々と浮かんでは、胸の奥に沈んでいく。
(やっぱり、私が魔法が使えるって分かったから、存在を認めただけなのかな……)
悪魔の禁忌――それは、メフィストにはどうしようもないことだ。人間には人間の決まりごとがあるように、悪魔には悪魔の決まりごとがある。それだけだ。
誰のせいでもない。けれど、グレーテルの恋心は報われない。好きな相手の恋愛対象になれないのであれば、一生片想いでいる覚悟を持つか、諦めるしかない。
(情愛も、友愛も、親愛も禁忌なら……友人になることすらも、許されないなんて……)




