茶番のような断罪劇に巻き込まれる・7
ジョシュアから聞きたいことは3年前の儀式の他に、エリザベスの代わりにサラを婚姻相手にして皆で……の真意だ。
血の忠誠に関しても聞きたいが、たぶん言葉だけで中身は知らないだろう。
それでも確かめておかないとまずいけれどね。
「サラ嬢は私と婚姻して、ジョシュア、アーサー、ルイスと共に……などと言っていたが……。どうしてそんなことを?」
その話になると、ジョシュアだけでなくアーサーとルイスも私へ意識を向けた。
「きみたちもどうして? 話してごらん」
私は二人に発言の許可を与える。
ダラリとした姿勢のままだが、アーサーは嬉しげに話し出した。
「ジョシュアから聞いたんだ。
サラは聖女だから、他の女より『聖魔法』を使える子供を生む可能性が高いって。聖女召喚の儀式だって上手くいったんだ。王女であったティルダ様が言っているなら間違いないだろ?
もちろん、そんなことに関係なく俺はサラが好きだけどな。
サラは貴族の女たちと違って嘘を言わない。自分にも回りにも素直で、気持ちを隠さない。惚れないほうがおかしいさ」
「僕だって、そうですよ」
アーサーに負けじとルイスも話し出す。
「僕もサラが大好きなんです。
姉さんは僕にハーネット公爵家の人間として相応しくあれって言うけれど、それを言う資格はない。
幼い頃から僕のことを妾の子供のくせに、本妻の子供である自分と同じ時期に生まれた礼儀のなっていない存在だって。
僕の母様は父様を誑かした売女だ。妾なら妾らしく本妻が嫡男を生んでから妊娠するのが貴族の仕来たりだって、何度も何度も言って……。
でもサラは違う。
僕が悪いんじゃない。僕の母様が魅力的だから、父様は妻がいても愛してしまったんだよって言ってくれる。
そんなことを言ってくれたのはサラだけだ」
「わたしだってサラに何度も励まされた」
アーサー、ルイスに被せるようにジョシュアも頬を染めて話す。
「母上のご期待は嬉しいが、苦しいこともある。それを彼女は分かってくれる。小さな体でわたしを抱きしめてくれたのだ」
えーと……。
急に恋愛色の強いお花畑が展開されてきたぞ。
3人はサラのここが素晴らしいのだと、次々私にアピールしてくるが耳を通り抜けるだけだ。
ジョシュアもアーサーもルイスも、サラに慰められたり励まされたりして好きになったのか……。
普通、だな。
どうにも前世の記憶のせいか、妙な思い込みが出てしまう。
裏があるんじゃないかって。
裏?
あ、これって前世のせいだけじゃないな。
今世の複雑な生い立ちのせいもあるわ。
でも、何でそこで私を巻き込んで皆で……になるのか?
3人とサラで仲良くすればいいのに。
そこは理解できない。
それからエリザベス。
心穏やかで控え目、努力を怠らない立派な公爵令嬢……とばかり思っていたが、先ほどの私の子供を授けてほしい発言といい……。
彼女のトラウマなのか?
貴族らしい貴族って言えばいいのだろうけれど、微妙な気持ちだ。
同じ年に正妻が長女エリザベスを、妾が長男ルイスを生んだハーネット公爵家。間違いなく邸内は日々、もめていただろう。結局、正妻は嫡男を生めなかったから、妾たちが生んだ数いる息子から跡継ぎを選ぶことにしたんだよね。年長はルイスだけど、他に何人も息子いるし。ハーネット公爵って愛人たくさんいるから……。
日本での常識なら公爵の節操の無さと、アフターケアの悪さが原因の家庭問題なんだけど。
この国では普通というか、貴族の嗜みってことになるんだよ……。
まずい、まずい。
思考が脱線した。
とりあえず純粋に3人ともサラが好きで、サラも3人が好きってことね。
「きみたちのサラへの想いは分かった。では最初の質問に戻る。なぜエリザベス嬢の代わりにサラ嬢を私の婚姻相手にしようとしたのだ? きみたちとサラ嬢、4人で仲良くすればいい」
すると今まで蹲っていたサラが顔を上げた。
「えー? だって、レンフィールド様もあたしが好きなんでしょ? 仲間外れにしたら可哀想じゃないですかぁ」
は?
意味が分からない。
「私はサラ嬢を恋愛対象として見ていない」
だって中身はアラフィフ女だからね。
異性愛者だし、100歩、いや、1000歩譲っても女の子と恋愛はない。
可愛いな、綺麗だね、とは思っても。
でも男の子もね……。
前世で子供は生まなかったけれど、オタク人生が長かったから青少年保護法とかに敏感だったんだよ。
だからせめて20歳以上の、できれば精神年齢高めの男性が好みです。
今の私は17歳の青年だから男性が好みなんて、少なくともこの国にいる限り言えないけれど……。
「サラ嬢はどうしてそう思ったのかな?」
「え? え? だって、レンフィールド様ってエリザベス様のことを好きじゃないですよね。見ていれば分かりますよぉ。優しいけど素っ気ないの。あたし、日本でそういう人を見たことあるから分かります」
そう言ってサラは微笑む。




