茶番のような断罪劇に巻き込まれる・8
「エリザベス様を本当は好きじゃないけどぉ、政略結婚の相手だから気を使ってるんですよね~」
サラは得意顔になって続ける。
「それに~、あたしが3年前に来た時……。レンフィールド様が一番最初に分かってくれました。あたしが日本からやって来たって」
「サラ、それは誤解だ。わたしだってきみが異世界から来てくれたと信じている」
「俺もだ」
「僕も」
ジョシュアたちが必死だ。
サラは嬉しそうである。
「もちろん分かってるよぉ。でもあの時って、ジョシュアたちと話す前にいきなり現れた兵隊の人に連れていかれちゃったじゃない。怖いオジサンたちばっかりで心細かったの……」
そう言えば、そうだったな。
ジョシュアたちが勝手に召喚魔法を使ったと知って、宰相たちが捕獲命令を出したんだよ。
それで私も呼び出しを受けて……。
子供のような身長に見合わぬ胸の大きさを持つ娘が現れたって報告を聞いて、ロリコン趣味や巨乳好きらしい連中がソワソワしていたな。
「そこにレンフィールド様が来てくれて、あたしの話をちゃんと聞いてくれたの。あたしは日本で中学生をしていて、スマホの恋愛ゲームが大好きで、でもお小遣いが足らないからあまり課金できなくて……」
そうそう。
中学校の制服に学校指定のバッグを背負っていたから、中身を物色……いや、チェックしたんだ。その中にあった生徒手帳を見たら内田沙羅と書いてあった。私が爆発事故に巻き込まれた翌年にサラは中学に入学していたから、あちらとこの世界は時間軸が違うんだなって思ったんだよ。
「最後までプレイできなくて悲しい……。本当に好きなゲームで、人気あるから続編予定もあって……」
うん、私も遊んでた。
アラフィフなのに課金して恋愛ゲーム。
いやぁ、大好きな絵師さんだったから全てのスチルを見たくて……。トゥルーエンドは課金しないと見れない仕様だったんだよね。
「色んな話を聞いてくれて、ちゃんとあたしが異世界から来たんだって言ってくれた」
だって、ねぇ。
疑いようもない。
一応、お偉いさんたちにも納得できるように『聖魔法』を使いましたけどね。
鑑定道具の使用も進言して、それでサラは異世界から召喚された者だって証明された。ついでに『聖魔法』の固有スキルが判明して……。サラの身柄を預かるのは法王家なのか、それともオーリー侯爵家なのかで、もめることになったんだ。
それにしても自分たちから名乗りを上げておいて、養育費ならぬ教育費に毎年、白金貨200枚を要求するなんて。3年間で合計600枚だよ。
え? しつこい?
そりゃあ、そうだよ。
部下の尻拭いは主の務め……ってことでね。
半分の300枚は私のお金だもん。
正確に言うと、次期法王として身の回りを調えるための費用。
本来なら新たな側近候補や専属の近衛騎士たちを集めるはずだったのに……。
計画がパァだよ!
でも、今となってはちょうど良かった。
こいつらだけなら置き去りにして国を出て行くのに、全く罪悪感ないからね。
「だから、私がきみを好きだと思ったのですか?」
「もう隠さなくて良いんですよぉ」
「隠してない。はっきり言う。きみに恋愛感情はない」
疲れる。
何で、誰もが自分を好きになると思うんだ?
「えー。もしかして、エリザベス様と正式に婚約破棄しないと言えないんですかぁ? やっぱり~今の状態で本当の気持ちを言ったら慰謝料を取られちゃうのかな?」
私がお前らに慰謝料を請求したいよ。
「サラ、大丈夫だ。レンフィールド様は金持ちだから、エリザベスからの慰謝料なんて余裕で払える」
「そうなの? アーサー」
「当たり前だろ。レンフィールド様は次期法王だぜ」
「アーサーの言うとおりですよ、サラ。貴女は心配しなくていいのです。僕に言わせれば、姉さんはレンフィールド様の婚約者でいられた幸運に感謝すべきなのです。あの人はサラと違って他人を思いやる気持ちがありません。ここら辺で現実を教えたほうがいいのです」
エリザベスとの婚約解消は私からの申し出だから、慰謝料を払うが……。
お前らのせいで上乗せされるのは冗談じゃないからな。
「いい加減、質問に答えろ」
あまりのイラつきに、この部屋に掛かっている『聖魔法』の強制力を強める。
4人は黙った。
「代表してジョシュア、きみが答えるんだ。どうして私を巻き込んだ?」
しどろもどろなジョシュアの話によれば、3人はサラが好きでサラは3人が好き。
この国は一夫一婦制だから重婚はできない。
そこでサラと私を結婚させれば、側近となった3人も一緒にいることができる。法王宮は限られた者しか入れないからバレる確率も低い。
それにサラは『聖魔法』の遣い手を生む可能性が高い。と、ティルダから聞かされている。
多忙な私に代わって慰めるのも臣下の務め……ということらしい。
ちなみに私が次期法王として相応しくない発言は、愛しいサラを蔑ろにされて思わず口にしてしまったそうだ。本気でサラを推そうと考えていたわけではないらしい。
突っ込みどころ満載ですよ。
自分たちがサラを好きだからって、私も好きだと思い込んでいたし。
法王宮を不倫部屋に考えているのも信じられない。
サラに『聖魔法』のスキルがあるから生まれる子供も可能性があるなんて、そんな根拠を示すものは何1つないんだけど……。元·王女のティルダの言うことなら間違いないって、何でも信じてしまうのは止めてほしい。
一番ムカついたのは多忙な私に代わって……のところ。
主の私が多忙なら手足となる側近はもっと働いてるだろうが!
「では、ジョシュア。血の忠誠という言葉を誰から何と聞かされた?」
「は、母上に……。法王家の人間は臣下から血の忠誠を誓われ、敬われるって……。近衛が法王家の剣となる時に式典をするじゃないですか。あれじゃないかって聞いてます……」
全然違うんだけど、この件に関してはこのまま勘違いさせておこう。
唯一の頼りであるジョシュアに嘘を言うはずもないから、ティルダも同じように思っているんだろうし。
「そうか。それで、きみが大広間で私に言ったことを覚えているか? きみは血の忠誠を誓わなくても色々知っている。そう言って嗤った。具体例を私に教えてくれ」
「そ、それは……不敬にあたるから、直接言ってはダメだと母上に……」
今まで以上の不敬って、何だ?
「ジョシュア、答えろ」
「は、はい。は、母上が教えてくれたんです。レンフィールド様は法王様の……お、お手付きだから、きっとまともに女性を愛せないって……。サラを好きでも行為ができにくいから、わたしが法王家に連なる者として助力してあげなさいって……」
「───っ!!」
ふざけんなーっ!!
バリバリバリッと、落雷のような音と振動がして、凄まじいうねりが縦横無尽に駆け巡る。
4人は声も出せずに頭を抱えて蹲る。
「無礼が過ぎるぞ」
驚くほど冷たい声が出る。
よりによって、そう思っていたのか。
あの時の嗤いはアレスティラ様と私が……そういう関係だと思って……。
感情に引きずられて魔力が暴走しそうになるのを「私はアラフィフ、私はアラフィフ。今世の分も足したらアラカンどころかアラセブ入り。でも老害にはならないぞ。こんなガキどもやティルダのことなど気にするな」と、自分に言い聞かせ落ち着かせる。
大丈夫。
感情のトラブルシューティングは得意なほうだ。
老害になどなってたまるか!
心はいつでも20歳。
一呼吸し、魔力も落ち着いたのを確認すると部屋を出た。
彼らは放っておこう。
聞きたいことは終わった。
アレスティラ様に会いに行かなくては……。
パーティーでの騒ぎは耳に入っているだろう。
もう少しだけ、プロローグが続きます。
他の人視点の話が入る予定です。
たぶん、その人視点のほうがBLらしいかも…。




