↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
105/190

幽霊 2



『……でも凄い』


「何が?」


『私がこんなに安定しているなんて。ほら、私幽霊だから』


「……そうか…。」


 翌朝。店に行くまで小声で会話をする。


 エリシアさんはどうやら開かないと分かったら帰ったのか、見当たらなかった。まあ、幽霊って怖いもんね。


 いや、本当に怖かったから逃げたと言うことだと決めつけてるけど、正直本当にそうだとしたらちょっと悲しいかな。


「でも昼間でも動けるんだね、幽霊って」


『結局はMPを原動力に動く残留思念だからね。そう、私は幽霊』


「幽霊幽霊連呼してるけど分かってるからもう良いって」


『あー……ごめん、これは口癖みたいなものだから……我慢して?』


「それなら仕方ない……のかな」


 そうこう言っている内に、霜降り山亭に着いた。


『ん……? あれ、ここは……』


「お、アサギか」


「カイ、おはよう」


 丁度カイは店から出てくるところだった。


「つかお前、なんか憑いてるぞ……っと」


 そう言いながら僕の肩を付いている埃でも払うかのような軽さで払う。


「『ぐっ!?』」


 突然、全身が後方に引っ張られる感覚が僕を襲い、吐き気を催す。


「っ………はぁ……ぐぅ……何……したの…?」


「まさかの愚者よ!! やはり私を消滅させる気満々ではないか!!」


 背後からの大声に耳障りだな、と振り返る。


「って……何で出てるんだ」


「全くそいつぁ、生者(ひと)のMP喰らってまで現世に残留する魔物だよ。元が人だったとか関係ない、一度死んでいるんだからな……つかコイツ、懐かしいな。まだ生きていたのか」


 カイは幽霊に顔を近づける。対して幽霊は、僕とカイを交互に睨みつける。


「生きていたという表現はおかしい。だって、そう。私は幽霊だからだ」


 今までよりも声に敵意が乗っている事が分かる程の声音でそう言った。


「ステータスを見てみろ。MPが減っているはずだ」


 カイはそう言った。気持ち悪さが段々と収まっていくのを感じながらも、まだ気持ち悪い。


 ステータスを見ればそれの原因が分かるのかなとステータスを開く。


────MPがものすごいスピードで回復していた。


「減ってるだろ?」


────回復しているという事は回復するほどの空きがあったという事だ。


 ん? 上限を越えていたことがあったよねって? それは微々たる量で実際停止しているに等しかったじゃないか。


 あっという間に全快してしまったMP。それと同時に吐き気も収まる。


「まあ、減ってたけど大した量じゃないよ」


「……大した量じゃない……!?」


 おい何故お前が驚く。幽霊。


 僕の表情が僕の心情を表していたのか、幽霊は目を逸らしながら呟く。


「強制的に剥がされて、ざっと七千は持って行ってしまった」


 な、七千!?


 ……僕ってこんなMP回復早かったっけ!?


「七千……あれぇ……そんな量取られたら普通死ぬんだがなぁ?」


「それは平気、僕MPはそれよりも一桁大きいから」


 カイは、目を白黒させる。


 あれ、こんなにここは静かだっただろうか? と感じるほどの間を置いてカイは言った。


「は?」


 やっぱり非常識か。この量は。




「ま、それだけありゃ、幽霊の一匹二匹、憑いてようが関係ねえか。剥がしたくなったら言ってくれ。俺の世界がしっかりお前らを引き剥がす」


 言い切ったカイはいい笑顔だ。良いのかそれは……。


『全く、それはお ことわりだ』


 そしてカイはそのままの顔で


「と言うか髪なんか違和感あると思ったんだが、薄くなってねえか?」


「はあ?」


「いや、黒に近づいてるというか、元々の髪色に近づいてるというか。変な色が薄くなってるよなって」


 カイは自信ありげにそう言うが、再会からまだ三日程しか経過していない筈だ。


 それなのに何故そんな事が言えるのだろうか。


 答えは直後の言葉が補足した。


「あぁ、まあ、予想になるけどな? お前の髪は『黒』『青』『赤』の三色だったろ?」


「まあ、そうだよ」


「どうしてもその三色はお前の部活の先輩方三人が頭をよぎんだよ」


「……そうだよね…」


 茜屋智、垣原葵、鍋川雪幸。僕が所属していた文芸部の先輩方の髪は確かに『赤』『青』『黒』に近しい色をしていた。


 強烈と言えば強烈な人達だ。髪を見ると連想してしまうこともあった。


「そうだよねって……お前……あの人たち知ってる人がそれを見れば普通に考えるだろ」


「ちょっとそれが普通か分からないけど?」


「それだけ縁のある色してて発想が行かないわけないだろ? ……ってまあ今だとどれも少しばかり黒に近付いているから俺から見ても縁がある色かどうかは、はっきり言って分からんね」


 何処から出したか分からないが、カイは手鏡を渡してくる。改めて自分の髪を手で掬い観察してみればどうもこの世界に来たときよりも、黒く暗い色になっているような気がする。


「確かに、黒くなっているような」


「だろ?」


 本来の髪の色───黒に近付いている気がする。


 それこそ雪幸先ぱ………雪幸ほど綺麗でない髪色に。


────呼び捨てにして良いって言われたのってそう言えばずいぶん前か。部活動の活動の内容とかを書いていた頃が懐かしい。


 思えば色々あった……よな…。


「おい、その幽霊出さずに仕事しろよ?」


「……、分かってるよ。分かってる」


 回想していて呆けていて、返答が一瞬遅れてしまった。


 さて、これから仕事だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。