姉妹来店
話が抜けていたので104話に割り込み投稿しました。読み直していただきたいです。
すいませんでした。
「いらっしゃいませ。エルさん」
本日最初の来店者は知り合いだった。
「おう、来たぞ」
しかしエルさんは一人ではなかった。
「……人多いですね」
隣の女性は店内を見渡してそうエルに言った。
「いらっしゃいませ」
見たことのない人だ。男女比がやや男側に傾いている程度なので女性は珍しくないが、エルが女連れだというのは非常に珍しい。
この間召喚されたとか言うおかしな人だろうか?
私語も交わさずに席に案内しながらそう考えた。
「…………!?」
「驚くことないだろ? 客としてきたんだ」
「……失礼ですね」
そう言いながら殺気を飛ばしてきたのはティアさん。リエルさんと来店してきたのだ。
「あ……いらっしゃいませ、テーブル席はー……開いてないですが」
「問題ない。」
「お姉さまが言うなら」
そう言いながら殺気を放つのを止めようとしない。僕、君たちに対して何もしてないと思うんだけど。
目だけで周りを見ても誰一人寒気を感じた人がいない辺りどうやって殺気放っているのかは知らないけど、凄いコントロールだと思う。
と言うか、殺気のコントロールって何だよ。コントロールって強弱だけじゃないの? 位置の調整とか出来るのか……。
「こちらにどうぞ」
席に案内する。
「そだ、アサギ。休日狩り行かないか?」
…………。
「へ?」
「狩りだよ、かーりー!」
「お姉さまのお願いを断るつもりですか」
ちょっとティアさん顔近い顔!!
ずいずいと詰め寄るティアさんの額を手で押し返す。
「良いですけど何でですか?」
「あー、良いじゃないか? 狩り」
「お姉さまに口答えするなんて赦しません」
ちょ、ティアさん顔近い顔近い!!
リエルさん何とかして!!
「ティア……やけにアサギに絡むな……」
リエルさんを見ても何やら僕らを見て呟いている。
だからこの子止めて!! リエルさん!!
目だけで訴えかけてもリエルさんはなんの反応もしやしない。
ちょ、ティアさん? 何で僕の襟首掴んでリエルさんから見えない手の指をそろえて突きだそうとしている。
多分リエルさんからは溜めるように構えられた肘とか普通に見えてるだろうが、動かない。微笑ましい光景を見るかのように穏やかな彼女は動かない。
「おいおいおいおい何店内でやらかそうとしてんだよ」
店長!!
「ったく、離れろ」
厨房からやってきたカイが僕たちの肩を掴み、引き離した。
「リエル……」
「え、あ……すいません。ティアが珍しい位他人をかまうので」
「下手したら面倒なことになるから見張ってろよ? 特にコイツの前なら」
カイは僕を指差してそんな事言う。ほんと、そうして欲しいよ。ティアさん怖い。
「お姉さまに指図しないで───」
ここでも反発するんですねあなたは。
「うるせえ、ここは俺の店でお前は客。騒ぐなら表、面倒事起こすなら出禁にしてやるからな?」
「ぐう……」
リエルさんに迷惑がかかることを理解したティアさんが引き下がる。ぐうの音も出ないとはこの事か。
いや、ぐうって言っちゃってるけどね?
※ ※ ※ ※ ※
「ねえエルさんエルさん」
「何だよ、突然なれなれしい」
「悪いのは私なのに詫びなんてことをわざわざしてくれる優しいエルさんに質問です」
「どうした。本当に……つっても自称占い好きが召喚されて予見能力手に入れるなんて、なんというか。あんなのお前が悪い訳じゃない」
話の内容は、この間占ってくれと言ったときまで遡るんだが、面倒なので遡らない。
要するに、占いのスランプみたいになってるところに、逆鱗触れに言った。それだけだ。
怒りに怒ったこの勇者と対話し続けて原因を聞き………まあ哀れというか、可哀想と言うか。占いは最早趣味というより人生みたいな感じだったみたいで、突然それを潰された彼女に同情してしまったわけで。
「と言うか、私に対する監視役みたいなものですよね、エルさんて」
「……まあ間違ってないが、あんまお前見ててもへんなことしでかしそうにないのであんま警戒してない」
「それいいんですか? いや、見張られる気分悪いんでそれでいいならいいんだけど」
「さあ? ただ妙な動きしたら処分な? ……本当変な役目を押しつけられたわ」
詫びの意志を込めてこの店に来たわけだ。
───わざわざ入り口近くにアサギがいるタイミングを見計らって。
前みたいに変なことされたら適わん。
この勇者も黒髪というこの世界では珍しい髪をしているからか、よく見てたし、注目されやすくなる魔法を使わなくても済んだ。
「………ねえエルさん」
「何だよ」
この勇者、別の客をチラチラ見てやがる。マナーが悪いぞ。
視線の先には丁度アサギに女の子が詰め寄っていた。あ、襟首掴んだ。
「面白いことになりそうですよ」
「はぁ?」
「ここに連れてきてくれてありがとうございます」
「何だよ突然丁寧になりやがって」
裏があるのが見え見えでむしろ怖くない。
何があるのかは分からないけども、監視の目を強めなくてはならないのは俺としても面倒なんだがな。
鼻歌交じりで丁度来たパスタを受け取るとこの勇者は超笑顔でそれを頬張った。
「汚いぞ、食い方」
「ふぉめんなひゃい」
「食ったまましゃべんなっつの!」




