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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
103/190

お部屋を見に2



 仕事が始まるとエリシアさんは眠そうにしていたのが嘘のようにテキパキ仕事していた。


 しかしそれは仕事中のみの話だったようだ。




「………ふらふらじゃない、大丈夫?」


「だ、大…丈夫」


 どうみても大丈夫じゃない。定期的に目を閉じては「はっ!?」とか。完全に意識飛んでますよね。


「別に明日でもいいんじゃない?」


「駄目、今日……っ」


 ほらまた寝てた。


「こういうのは…早くするに限るの」


「いや、別に明日でいいんじゃ」


「行くよ」


 僕はエリシアさんの部屋にあった自分の物を持つ。しかし大した荷物ではない。と言うか無くてもいいんじゃないかなってくらい。


 と言うが、ナイフとバックは持っておきたい。あれは。


「行くから、案内宜しく」


「はいはいよ」


 エリシアさんが急かすので、仕方なく僕は彼女を案内しながら帰宅し始めた。




 夜道というのは、どうしてだろう。原因不明な怖さがあるよね。


 馴れてしまえば、消えるのだろうか。


「エリシアさーん? 着いてきてます?」


「………大丈夫大丈夫。ちゃんと居るよ」


 そんな怖がらなくても、とでも言いたいのだろうか。本当に怖いのはその辺で爆睡してしまうエリシアさんを置き去りにしかねないところだけれど。


「寝ないでよ?」


「最低でもアサギくんち着いてからにするよ」


「え。」


 それも困る。


「で、そろそろ?」


「まだ少ししか歩いてないし、まだ着かないよ」



 しばらく歩くと漸く見えてきた。


 あれが僕の………。


「なんか、なんというか………雰囲気あるね」


 その家のまわりには何故か霧が出ていた。


 その家は、確かに借りるときは凄い安かった記憶がある。それに紹介してくれた人がものすごく微妙な顔をしていたのも印象に残っている。


 眠かったので蔑ろにしていたが……。


「確かにこれは……全部合点が行ったような……」


 安い理由が。


「ひっ!? 今、白い何かが見えたような気がする……」


「多分霧」


 もう一度確認しても、ここは今日の朝僕が出て来た家。借りた部屋のある家。


 昨日は気付かなかったし霧もなかったけど、どうやら問題物件だったらしい。


「……多分」


 僕にもしっかりとその白い何かが見えたから、あまり強く否定できなかった。




「中は……綺麗だね」


 そりゃ、眠かったとは言え、蜘蛛の巣が張ってるとかだったら違和感を持つ。


 エリシアさんは、ほえーっと呟きながら内装を見ていく。


 部屋は対して広くない。特に何かあるわけでなく、もはや物置と言っても通じてしまうだろう。ただし、一つ押し入れがあるのみだ。


「この押し入れ何?」


 そうなれば押し入れに意識が向くのは当然のことだ。


「何だろうね……まだ開けてないけど」


 ………開けるの怖いなぁ。


 和風な横開きの扉。何だかドラ○もんでも入っていそうなくらいの。


 正直外観が雰囲気出過ぎていたので、ホラー的想像が頭をよぎる。


 大体こういう所は何か出てくるからなあ。


「「…………」」


 ゴクリと唾を飲む音が重なる。


 僕が押し入れに手を伸ばす。エリシアさんはいつの間にか握っていた刀の柄を握り締めている。


「って、刀どこにあったの…!?」


「ちょっ、びっくりしたぁ……脅かさないでくださいよ、この刀(こ)はずっと持ってましたからね?」


 そう言うが、全く気づけなかった。


「……と言うか暗いですよね」


「確かに……灯りの明るさ足りてないよね」


「じゃあ今度換えの灯り一緒に買いに行きますか?」


「有り難いけど、そんなことにいちいち付き合わせて良いの?」


「良いんですよ、そんな事でも。頼りにしてください」


「ありがと────」


 パキッ───バタ─ドンッ!!


 灯りが砕ける音、後ろの押し入れが思い切り開く音。


 因みに僕は押し入れに背を向けていてエリシアさんは僕の方を見るように立っていた。


 灯りに干渉していないし、僕よりエリシアさんの方が押し入れまでは遠い。


 エリシアさんは目を見開き僕を見ていた。刀を掴む手に力が入りすぎて震えて寧ろ持ててない。


 悲鳴を上げようとしたのだろうが、恐怖で唇が震えているだけでなんの声も上げられていない。


 僕はギギギギとか効果音がしそうなほどの油を差していない機械みたいな動きで振り向く───と。


「──────」


 息がかかる距離に、白い女性の顔があった。


「あぐっ!?」


 頭突きした。

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