お部屋を見に1
思ったより簡単だった。
「ここが、今日から僕の部屋か」
新居を手に入れるのは。
朝ギルドに赴き。
「部屋、ですか。ここなんてどうでしょう」
昼は紹介された部屋を見て回り。
「こちらの部屋なんてどうでしょう」
「高い」
ここまでで夜になってしまい、結局決め手は安さ。
狭さはあの部屋と大差ない、職場からそれなりに離れた特にキッチンだとか風呂とかのない部屋に決まった。
「ま、どうせ、寝るだけの部屋だ」
金はどうしたって? そこいら彷徨いている魔物を狩った。それを今日ギルドに赴く前までに行ったのだ。そのせいで徹夜だ。眠くて仕方ない。
眠さのせいでいろいろ聞き逃していないか心配だ。借りる段階であんまり良い顔していなかった気がするし。
安いし少しボロさが目立つからと言うだけではないような気がするんだけど……。
「ま、気のせいかな」
それよりも眠い。
僕はもともとあった布団に体を埋めるとすぐに猛烈な眠気が訪れた。
「おはようございま──」
「おはよー……アサギくん」
「──すってエリシアさん大丈夫ですか!? 凄く眠そうですよ!?」
「だ、大丈夫……うん。大丈夫」
「どこをどうみても!! 駄目そうです!!」
隈が浮いてるし、目が充血している。後者はそうでもないかもしれないが、どうしても大丈夫には見えなかった。
そう言った僕に反論しようとして、何もないところでよろめいた。
「どうしたんですか!? 僕がいない一日で何があったんですか!?」
「アサギくん少し静かに……ね?」
エリシアさんがそう言って僕に声を抑えてとジェスチャーをする。
そう言われても。
「これ、ただの寝不足。問題ない。関係ない」
「……今日も仕事あるのに寝不足?」
エリシアさんがそういった状態になったのは見たことがなかった。恐らくは夜更かしでもしたのだろう。珍しい。
「別に良いでしょ、別に」
そして、エリシアさんは少しむっとした表情で呟く。
……どうして怒ってるのさエリシアさん。
「それよりもアサギくんは昨日。何してたの?」
うぐっ……。
「のんびり街を見て回ってたよ?」
「……それが仕事をわざわざ休んでする事?」
つい罪悪感を覚えて嘘を言ってしまったが、今言ったことはその通り休んでする事じゃない。一応嘘は言ってないが。
そもそも僕があの部屋を出ようとするのは別にエリシアさんのことが嫌いだからではなく、男女同室だと色々問題あるよなぁと考えた結果である。
そもそもそう言う考えにエリシアさんが至ってないからまだ追い出されることもなくあの部屋に居られるのである。気付いてないから、出て行くとなったら嫌われたと思われるかもしれない。
ほんのちょっと。そう思ったが多分男女同室に関しては言い出すタイミングが無かっただけかもしれない。来るように言ったのはエリシアさんだから、出て行けとも言い難いだろうし。
まあ、気付いているのはなさそうだ。
「ええと、さっきのは嘘ですよ」
「そうですか」
エリシアさんはどうも不機嫌そうだ。
「何で嘘なんて吐くんですか、私に」
「えっと……何ででしょうかね?」
あああ、失敗したなこれ。
僕は誤魔化すように咳払いをして話題を、何処行っていたかに戻す。
「昨日はちょっと部屋探しをして──」
「何でですか?」
「え?」
即答
「あの部屋は私の部屋であって、アサギくん。あなたの部屋なのに何で、ですか」
まるで何していたか知っていたみたいなぐらいな即答。
「やっぱり男女が同じ部屋に──」
「そんなに私と同じ部屋だと嫌なんですか?」
静かな声音だが、確かな不機嫌さを感じる。
「な、何でそんな怒ってる……の……?」
「怒ってませんよ何言ってるんですか大丈夫ですか私は大丈夫ですよ」
「……眠いだけ?」
「……そう思うだけですか」
「??」
いや分かんないや、どういう意味の質問なの?
「百歩……いや、千歩譲って出て行くのを良いとしましょう」
「あれなんでエリシアさんが許可しないと出ていけないみたいな感じになってるんですか」
「でも、私の部屋を出ていった先の部屋。見せてくださいそれで決めます」
「いや、あの」
「見せてください」
「え、えっと」
「絶対、見せてくださいね?」
「は、はい」
今日の夜、エリシアさんがうちに来るようです。
何でこうなった。
「楽しみです」
眠いからか、エリシアさんは感情の浮き沈みが激しいような気がする。
「そーですか」
ま、なるようになるよね。
「楽しみです」
「何故二回言ったんですか」




