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似たようなキャンプ場を数カ所経由して、五日目には最後の野営地に向かった。
そこを拠点として、目的地の岩山に向かう事になる。
その道中の馬車の中で、これからの竜討伐についてキラ達が話をしていた。
「前回は二頭しか狩れなかった。今度こそ俺たちのチームで五頭、遣っ付けようぜ」
スタントンがベンゼルに向かって息巻いている。
「まあな、出来るかもな。君は光をマスターしたみたいだし」
「ああ、今までは土の槍を使っていたけどなかなか刺さらなかったんだ。堅いからな地竜は」
キラは気になったことを女子に聞いていた。
「君たちは三回しか、野営していないのに随分手慣れていたね」
「何言ってるのよキラは。私達はもう何回も経験しているのよ。」
「ルシア、キラ君はまだ二ヶ月しか学園にいないのよ。知っているはず無いわ。キラ君、私達は初年度から、野営をしているの。初めは最初の野営地で一泊する課外授業が年三回あるの。3年目からは二番目の野営地まで来るのよ。最終学年になって、地竜の岩山まで来られるようになる。だから野営は馴れているのよ。初めは何にも出来なくて、大変だったわ」
そうだったのか。随分馴れていたのは、何度もやったことがあったからなんだ。
キラだって毎日父と一緒に山の中を走り回っていたが、野営の内容が違いすぎて手間取ってしまった。
ベンゼルやデストロルのテント設営を手伝ってもみたが、立派なテントの設営は、見たこともない方法だった。父と一緒に野山で野宿したときは、洞窟に入ったり、近くに洞窟がないときは穴を掘ってそこに隠れるように交代で眠ったものだった。
それに、火起こしに魔法を使うなど考えられなかったし、水の調達も苦労した。でも、今は魔法が使える。
魔具や魔法はとてつもなく便利だった。
これは、きちんとお膳立てされたキャンプだ。そこでの決まり事さえ分れば遠足と変わりなかった。
「もう直ぐ地竜の岩山に着くわ」
岩山の手前にはまたキャンプ施設があった。そこには兵舎もあった。
百人ほどの兵士が常駐して、魔物が増えすぎないように管理をしているという。
キラ達は野営の準備を終わらせ、一泊して次の日からはここを拠点に地竜の討伐を五日掛けて行うのだ。
問題が無ければ、もう少しいることも出来るという。移動も含めて大体二週間の予定だが、早く終わってしまうこともあるらしい。
「ここの地竜は、学校指定だから冒険者は入ってこられないんだ。冒険者に荒らされてしまえば、学生達のレベル上げに支障が出てしまうからね」
ここには魔法大学や高等魔法学校の生徒も来ているそうだ。
魔物を倒すほど魔力が上がっていくのだそうだ。
普段、地竜は里に下りてきて悪さはしない。魔獣にしては大人しい部類で、生徒に力を付けさせるには格好の魔獣なのだろう。
しかも、このあたりの畑を荒らす獣や、危険な魔物を餌にしているため、人間にとっては益獣でもある。
だが、増えすぎれば餌がなくなって、里に下りてきてしまう。
兵士や生徒が定期的に間引いているので、その心配はないと、教師が太鼓判を押した。
地竜の餌は、小さい動物や小型の魔獣だ。この辺には地竜の他にも魔獣や魔物がたくさんいる。その為キャンプ場には結界が張られていた。
キラは高く伸びた鉄柱を見上げた。鉄柱の先には大きな魔石が取り付けられていて、目をこらすと、魔石の表面に何か文様が刻まれているのが見えた
「結界の魔法石……なのかな」
結界の中にいれば安全だ。何かあれば皆でここに立てこもれば良い。
教師から、注意事項が言い渡されて、明日のために早めに就寝することになった。
翌朝、テントの中でスタントンが興奮して叫んだ。
「さあ、遂に竜を倒せるぞ!」
「うるさいな、スタン。静かにしろ。まだ周りは寝ている」
ベンゼルに言われて、シュンとするスタントン。
デストロルがまだぐっすり寝ている。
キラはもう起きていたが、じっとしていた。早く起き出せば、周りに迷惑が掛かると思っていたからだ。
「スタントン。僕は起きている。外へ行こうか?」
デストロルを起こさないように、三人が静かにテントの外へ出ると、他のテントからもちらほら起き出してくる子供がいる。
朝食の準備のために薪を運んだりしていると、女子達が起き出してきた。
「まだ寝ている人がいるの?」
「デストロルがまだ寝ている。そろそろ起こすか」
ベンゼルに起こされて、デストロルがテントから出てきた。まだ寝ぼけてぼーっとしている。
野営が続いて疲れが出てきたようだ。普段から大人しいデストロルだが、益々存在感が薄い。
考えてみれば大貴族の子供だ。何時もはメイドに起こされるまでベッドで寝ているのだろう。おっとりしていて大人しい子供なのだ。
朝食が終わり後片付けを終わらせて、やっと岩山へ出発だ。
ここから岩山までは歩きで一時間の道のりだった。距離はさほどではないが、足下にはゴツゴツした岩が多く、歩きづらい登り道だった。茂みから偶に、角を生やしたウサギが跳びだしてくる。
これは魔獣に変化したウサギだ。
小さいわりに攻撃的で、鋭い牙まで備えている。
生徒達は、始めは大慌てだったが、その内に慣れてきた。
やがて、飛び上がった瞬間を狙って魔法を撃ち込めば、簡単に仕留められると分かった。
そうして倒していく。キラの魔法鞄の中にもウサギが三羽収まった。
「ここいらにはロックエイプはいないと思うが、もし見付けたら追いかけないで、私たち、教師に知らせろ。分ったな、絶対追いかけてはダメだぞ」
ロックエイプは知恵が回る。子供をおびき出し、仲間を呼び取り囲んで巣に連れ込むそうだ。一体一体は弱い魔物だが、数が揃えば手強い相手だ。
教師二人が最後尾にいて、女子が真ん中、右側にキラ、左にベンゼル、前衛はスタントンとデストロルという並びだ。
この教師たちは魔法は使えないが剣士だ。本来なら前衛に陣取るのだろうが、今は授業だから子供に任せているようだ。
皆、魔法で、離れた処にいる魔獣を簡単に倒している。
普段学校で使う魔法よりも威力が上がっているのは、魔法ステッキのお陰だ。
女子も、普段なら、水を出す程度なのに、水を氷の槍に変化させて、小さな魔獣を仕留めていた。
倒した魔獣を獲りに行くときは教師に声を掛けて行かなければならならない。
女子が倒した魔獣は、キラや、ベンゼルが代わりにとりに行く。
岩山の中腹あたりから茂みもなくなり、大きなトカゲが岩にへばりついている。これが地竜だという。
――これが地竜?
キラにはただの大きなトカゲにしか見えない。
「さあみんな、どんどん倒しながら上まで行くぞ!」
スタントンが、張り切って岩にへばりついている四メートル位の地竜をめざとく見つけて、光の矢で射止めようとするが、逃げられてしまった。
「馬鹿だな、大声を出すなよ! 逃げられてしまったじゃないか」
ベンゼルに叱られて、しょんぼりしている。
地竜は意外にすばしっこい。するすると穴の中に入ってしまうのだ。
この地竜は小型の種類だそうだ。大型種は二十メートル以上にもなる。だが、大型種の大地竜は深い地の底にある鍾乳洞や洞窟に巣を作ってその中にじっと潜んでいて地上には滅多に姿を現さない。
「寝てばかりいそうだな。大地竜はなにを食って生きているんだ?」
「おそらく、魔素の濃い場所でなければ生きられないんじゃないかしら。魔素をたくさん含んだ苔や水を飲んで生きているそうよ」
「苔だって! そんなんで大きくなるのか?」
「……知らないわよ。疑問に思うんならスタントンが地面に潜って調べてくれば!」
話を聞いていた教師たちは、二人を微笑ましそうに見ていたが、ここで口を挟んできた。
「ルシアーヌはよく勉強しているな。感心したぞ」
「そうだな。大型になればなるほど、魔物は魔の森の傍から離れない。悪さをするのはほとんどが小型の種類の魔物だ。魔素が大いに関係しているという研究結果が出ている」
そんな教師の話を聞きながら、キラは足元に注意して道を進んでいく。
――確かにそうだな。僕の住んでいた村でも、魔物が村に現れたけど、小型ばかりだった。
父と森や山に入れば事情は変わる。イノシシや鹿、蛇などが魔獣化して大きくなっていた。獣なら滅多に襲いかかってこない種類でも、魔獣になれば襲いかかってくる。
岩山をしばらく進むとやや下り坂に差し掛かった。
そこは、岩が、両側に壁のように立っている場所だった。
「これ以上は奥へは進めないからな。今日はここで、一旦終る」
教師の言葉にスタントンは項垂れた。
ここに小型の地竜が沢山いるはずだと教師たちは言うが、穴の中に潜っているのか見た限りではどこにもいない。
だけど、キラには父親との狩りの経験があった。臆病な獣は周囲に紛れて潜んでいることが多い。だから、試しに近くの岩壁に向かって小石を投げてみた。
すると、今まで岩だと思っていたところがもこもこと動いた。すかさず光の矢を放つ。光の矢は一瞬で竜を仕留めた。
竜が、ズーンという地響きと共に落下してきた。
土煙が舞い、ぴくりとも動かなくなった竜に用心しながら近づいていく。
竜の胸にポッカリと穴が開いて、そこから緑色の体液が流れ出していた。
まず一匹やっつけた。
スタントンがキラの真似をして、小石を投げるとそこも動き出す。よく注意して見れば、周りは地竜だらけだった。壁にはビッシリと竜がへばり付いていたのだ。
それからは、皆で、魔法を打ちまくる。
氷の槍や光の矢、土の槍などが飛び交った。
穴に慌てて隠れてしまう竜がほとんどだったが、中には、足場を魔法で打ち抜かれて岩から滑り落ちてくる竜もいた。
周りの切り立った岩から、倒された地竜が一頭、また一頭と落ちてきた。
「凄いぞ!今日一日で目標達成だ!」
本当にこんなに居たのかと思うほど討伐できた。
「随分増えているな。このままでは里に下りてきそうで危険だ。倒せるだけ倒してしまおう」
教師も参加して、まだ死んでいない地竜にとどめを刺して行く。
怪我を負った竜は、口を大きく開けて威嚇してくるが、さすがに教師たちは手慣れていた。
竜の尻尾の反撃を素早く躱して、淡々と竜を突き刺していく。
キラは六頭倒した。皆も似たような成果だろう。チームで三十六体倒したことになる。
もう皆の魔法鞄は一杯で、入らなくなってしまった。
女子たちは、魔力が尽きたのか肩で息をしてぐったりとしている。
「先生、鞄に入りきらないのはどうしたらいいですか?」
教師も困ったようだ。予備の鞄まで使い切ってしまった。
「いったん戻ろう。野営地の兵舎に予備があるはずだ」




