表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/173

第87話:夏合宿の試練

 夏休みに入り、グランは一人で『聖域』の最下層へと戻ってきていた。


 今回の合宿参加の条件は、ソロや少人数パーティーでの試練突破である。


 しかし、通常のダンジョン構造のままだと、道中で他のメンバーと合流してしまったり、魔物の湧き待ちが発生したりと、まともな試練にならない可能性があった。


 それを防ぐため、各々が公平な試練を行えるように、前世のオンラインゲームを参考にした『次元隔離システム』を実装するため、グランはわざわざ最下層まで足を運んだのだ。


 グランは心の中で、アンサートーカーに構築が可能かを尋ねる。


『十分可能です。聖域内の魔素の量も申し分なく、システムの維持にも全く問題はありません』


 アンサートーカーの心強い保証を得て、グランは早速ダンジョンの改修と隔離システムの構築を始めた。


「よし。そして、中間地点のセーフエリアである『凪の里』は、この次元隔離が自動的に解除されるように設定しておこう。そうしないと、ずっと合流できなくなっちまうからな。そして今後のために第3層から第4層に行く場合はまた次元隔離システムを展開する。要はここでパーティーの組みなおしもできるようにするんだ。」


 グランが設定を組み込んでいると、アンサートーカーが純粋な疑問を投げかけてきた。


『それなら、次元隔離ではなく、スタート地点をランダムに飛ばすほうがいいのでは?』


「お前、分かっていないな。四聖華や王女たちは、絶対に『誰が一番最初に突破するか』無駄な競争を始めるに決まってるだろ。道中で一緒になったら余計に白熱するし、それをランダムにしてみろ、不利を受けたって言って大騒ぎにするだろ」


 グランが深いため息をつきながら答えると、アンサートーカーから冷ややかな音声が返ってきた。


『なるほど、乙女心をよく分かっているじゃないですか。さすがは稀代のプレイボーイですね』


「うるせえよ」


 アンサートーカーの容赦ないおちょくりに、グランは顔をしかめて悪態をついた。


「まあいい。3日後には聖域近くの街でみんなと一度合流することになっている。それまでは『凪の里』で建物を増築でもしながら、久しぶりに一人でゆっくり過ごさせてもらうさ」


 グランは次元隔離システムの完成を確認すると、束の間の休息を楽しむべく、自身の作り上げた拠点である『凪の里』へと転移していくのだった。




 一方、『蒼白銀の翼』のメンバーたちは各自、夏休みの聖域合宿に向けて保護者から参加の許可を取っていた。


 ルヴィリスはヴァレンタイン侯爵家での晩餐の際、両親に「今年も夏休みは聖域で『蒼白銀の翼』の合宿をします」と伝えた。


「やはり、今年も行くのだな」


「聖域の温泉とエステ、また行きたいわね」


 ヴァレンタイン侯爵が頷くと、侯爵夫人も嬉しそうに微笑んだ。


「お父様とお母様は、どうなさいますか?」


「もちろん行くぞ」


 ルヴィリスが尋ねると、侯爵は即答し、さらに真剣な顔つきで娘に発破をかけた。


「ルヴィ、今年こそグランを落とすんだぞ」


「ええ、その通りよ。今回の合宿で、既成事実を作るくらいのことはしなさい」


「お、おい! それはさすがにまだ早いぞ!」


 夫人の過激な後押しに侯爵が慌ててストップをかけるが、夫人は冷ややかな視線を夫に向けた。


「あなた、私に手を出した時はルヴィと同じくらいの歳だったでしょ?」


「うっ……そ、それは……」


 痛いところを突かれた侯爵がしどろもどろになって口ごもる。


 ルヴィリスはその両親のやり取りを見て呆れて頭を抱えたが、内心では(もし、本当にそういう雰囲気になったら……)と、グランとの甘い展開に淡い期待を寄せるのだった。



 場面が変わってヴァーミリオン邸。


 エルスメリアは書斎にいるヴァーミリオン侯爵に夏合宿の許可を取ろうと、コンコンとドアをノックした。


 入室の許可をもらい中へ入ると、侯爵と夫人が揃って肩を並べながら仲睦まじく本を読んでいた。


 まったりとした夫婦の時間を邪魔してしまったことに少し申し訳なさを感じていると、侯爵夫人がニコリと笑いかけてきた。


「エル、夏休みは聖域に行くのでしょう?」


「あっ……はい。その通りです」


 エルスメリアが肯定すると、夫人は隣の夫をつついて得意げに言った。


「ほら、あなた。私が言った通りでしょ? 準備しておいてよかったわよね。エル、もちろん私たちも一緒に行くわよ」


「そうだな。今年はそれが楽しみで、すでに領地の予定を調整してあるんだ」


 侯爵も行く気満々で答えるのを見て、エルスメリアは(グラン君を誘惑する機会が減ってしまうわ……)と内心少し落胆した。


 しかし、(でも、親公認なら強引に迫っても何とかなるかもしれないわね)とすぐに持ち前のプラス思考で希望を見出し、「3日後に聖域で一番近い街に一旦集合となります」と報告するのだった。



 そしてヴァスティール家。


 ディアドラも侯爵夫妻に夏合宿の許可をもらうため話を切り出したが、こちらの両親もまた同行する気満々であった。


「もちろん我々も行くぞ。本当はうちの騎士団も何人か鍛錬のために連れて行きたかったが……おそらく他の侯爵たちも来るだろうからな。軍事的な誤解を避けるためにも、連れて行くわけにはいかんな」


「ふふっ、聖域の温泉とエステ、本当に楽しみね~」


 ヴァスティール侯爵が残念そうに呟く横で、侯爵夫人は優雅に微笑んでいる。


 ディアドラは親がついて来ることに複雑な気持ちを抱きつつも、グランとの甘いひと時を過ごせるように気合を入れるのだった。




 そしてヴァレンシア侯爵邸。


 対照的に、ソフィアは親には合宿のことを黙ってこっそり行こうと企てていたが、あっさりとバレてしまっていた。


「隠しても無駄よ、ソフィア。私たちも聖域に行きますからね」


 ヴァレンシア侯爵夫妻に見透かされ、ソフィアは「……分かりました」としぶしぶ両親が来ることを了承させられる羽目になった。



 また、ベアトリクスの実家や平民組の親たちは、グランに対して多大な信頼と恩義を感じているため、「グラン君との合宿なら安心だ!」「しっかり鍛えてもらってこい!」と二つ返事で許可が下りていた。




 一方、平民であるトレースは、自身の父に夏休みの予定を報告するべく商家の執務室を訪れていた。


 トレースの父は、息子が学園の頂点である『蒼白銀の翼』に入部できたことを大層喜んでおり、高位貴族との強固な人脈ができると内心息巻いていた。


「お父さん。もし僕が『人脈作り』なんていう下心で活動していると判断されたら、遠慮なく退会させられますからね」


 トレースが釘を刺すと、父は少し残念そうに肩を落とした。


「そして、夏休みの予定ですが……『蒼白銀の翼』のメンバー全員で合宿することになりました」


「ほう! それはすごいな。そろそろお前に店の経営などを教え込もうかと思っていたが……王女殿下や高位貴族の方々との合宿なら、嫌でも人脈はできるだろう。よし、行ってきなさい!」


 父は結局下心を捨てきれていない様子だったが、トレースは苦笑いしながらも無事に合宿の許可を得るのだった。




 そして、クローディアもまた、アシュクロフト伯爵夫妻に夏合宿の許可をもらうために応接室へと足を運んでいた。


 しかし、彼女が思っていたのと違い合宿の話を切り出すと、伯爵夫妻はあからさまに嫌悪感を示して猛反対した。


「蒼白銀の翼など、所詮学生レベルの話だ。平民が代表を務める修練会に入っただけでも恥だというのに、その平民たちと共に夏休みを過ごすなどあり得ない! お前は魔法の落ちこぼれというだけでなく、貴族としての矜持も節操もなくなったのか!」


 両親からの冷たい侮蔑の言葉に、クローディアは唇を噛み締めた。


(グラン先輩や高位貴族の先輩方には申し訳ないけれど……ここは彼らの名前を使わせていただくしかないわね)


「……この合宿には、王女殿下や帝国の皇女殿下、そして四侯爵令嬢の皆様も参加されます」


 クローディアが静かにそう告げると、伯爵夫妻は驚き、少しの間考え込んだ。


「……なるほど。そういうことなら、行く意味もあるか。いいだろう、合宿の参加を許可する。ただし、王族や高位貴族の方々から何か『有用な情報』を掴んだら、我々に報告しなさい」


 打算に満ちた両親の言葉を聞き、クローディアは内心で激しく彼らを軽蔑したが、表情には出さず「……はい、ありがとうございます」とだけ答えて部屋を後にした。


 そして自室に戻る廊下の途中で、運悪く彼女の兄と姉に出くわしてしまった。


「おい、クローディア。平民が代表をしているようなお遊びの修練会に入るなど、アシュクロフト家の名に泥を塗りやがって。これ以上、俺たちの足を引っ張るなよ」


「まあ、魔法がまともに使えないあなたには、平民とのおままごとはお似合いかもしれないわね。せいぜい泥んこになって頑張りなさいな」


 兄からは家門の恥だと罵られ、姉からは鼻で笑うような嫌味を言われた。


 クローディアは胸の奥で煮えくり返るような悔しさを抱いたが、決して言い返すことはしなかった。


 なぜなら彼女は、家族から蔑まれているこの瞬間も、グランから教わった『魔力操作の極意』を体内で必死に循環させ続けていたからだ。


(見ていなさい。グラン先輩の鍛錬で必ず力をつけて……私を支えてくれる優しい人たちを、理不尽から守れるようになってみせる……!)


 家族の冷ややかな視線を背に受けながら、クローディアは静かな闘志を燃やし続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ