表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/175

第48話:ルビーの輝き

 四侯爵が一つ、ヴァレンタイン家の令嬢が執り行う誕生日会。


 それは王国においても国家行事に匹敵する重要性を持ち、招待された生徒には学園から特別な公欠が認められていた。


 グランはルヴィリスから指定された集合場所で、彼女の家紋が刻まれた豪華な馬車に乗り込み、ヴァレンタイン侯爵領へと向かった。




 数日かけてヴァレンタイン領に到着し、馬車の窓から見える景色は、まさに「富の象徴」であった。


 王国随一の鉱山を複数保有するこの地は、産出される希少鉱石によって莫大な利益を上げている。


 街道は塵一つなく整備され、立ち並ぶ建物は豪華絢爛。


 何より驚くべきは、行き交う領民たちの表情だった。


 この地では侯爵の厳しい監視により、私腹を肥やす汚職役人が徹底的に排除されている。


 富は正しく領民へと還元され、経済は発展の極致にあった。


 領民たちが主君に寄せる敬愛の念は、馬車が通り過ぎる際に見せる深い一礼からも、ひしひしと伝わってきた。



 やがて馬車が止まったのは、山の中腹にそびえ立つ白亜の館――ヴァレンタイン家の本邸だった。


 扉が開くと、そこには主役であるルヴィリスと、彼女にそっくりな美貌を持つ侯爵夫人が出迎えていた。


 グランが馬車を降り、誘ってくれたことへの礼を尽くすと、ルヴィリスは頬を緩ませた。


「本当に来てくれて嬉しいですわ、グラン」


 二人の間に流れる温かな空気を察したのか、侯爵夫人が悪戯っぽく微笑み、「夫が中で待っていますわよ」と促して、一行を中へと案内した。


 屋敷の廊下を進む際、ルヴィリスは自然な動作でグランの腕を取った。


 その仲睦まじげな様子に、控えていたメイドたちは動揺を隠せない。


 しかし、彼女たちの間では今、身分差の恋を題材にした小説が大流行していた。


(……見て、現物だわ!)


(眼福すぎる……!)


 メイドたちは影でこっそりと手を合わせ、尊いものを見る目で二人を拝んでいた。




 その後、ヴァレンタイン侯爵との面会を果たしたグランは、客室を用意されていることを告げられる。


「娘が唯一、自分の手で渡した招待状を持っているのだ。……いろいろと、頼むぞ」


 侯爵の含みのある言い方に、グランは背中に冷や汗が流れるのを感じた。




 そして迎えた誕生日会当日。


 グランが準備を始めようとすると、脳内にアリスティアの声が響いた。


『ちょっと、グラン! まさか交流パーティーで着た服で出るつもりじゃないでしょうね?』


(……あれしか持ってねーよ)


『そう言うと思って、ルヴィリスとお揃いになるように用意したわ! 感謝しなさい!』


 転送されてきたのは、深淵のような黒を基調とし、鮮やかな赤を差し色に配した気品溢れる礼服だった。


 準備を促しにきたメイドは、扉を開けた瞬間にグランの凛々しさに頬を染め、会場へ案内する間、チラチラとグランを見ていた。


 すれ違う屋敷の執事や使用人たちからも感嘆の声が漏れる。


「……ルヴィリス様に、これほど相応しい方がおられたとは」




 華やかな音楽が流れる会場に入ると、着飾った貴族たちの視線がグランに突き刺さった。


 今回招待された、唯一の平民である彼を蔑む声が上がりかけるが、先に到着していたオリヴィア王女、エルスメリア、ソフィア、ディアドラの四聖華たち、さらには侯爵夫人が親しげにグランを囲んだことで、貴族たちは慌てて口を噤んだ。




 ファンファーレと共に、侯爵に伴われてルヴィリスが入場する。


 その神々しいまでの美しさに、来場者からは一斉に感嘆の吐息が漏れた。


 彼女は堂々たる挨拶を述べ、領民と国のために邁進することを誓い、拍手喝采の中で席に着く。



 続いて、貴族たちによる献上の儀が始まった。


 順番にプレゼントが渡されていく中、グランは執事から「平民ですので最後にご案内します」と告げられる。


 その間、公爵家の次男がルヴィリスに歩み寄り、「自分の婚約者に」と尊大に言い寄り始めた。


 彼は豪勢な財宝を並べ立て、「自分以外に君を満足させる男はいない」と豪語するが、ルヴィリスはそれを丁重にあしらう。


 一瞬、侯爵夫妻がグランの方を向き、何かを訴えかけるような視線を送ってきた。


 グランは苦笑しつつ、あえて気づかないふりをして自分の出番を待つ。


 そして最後に名前を呼ばれ、ついに執事に案内されて壇上へと進み出た。


「侯爵、夫人、本日はお招きいただき感謝いたします。……ルヴィ、本当に綺麗だ。誕生日おめでとう」


「ありがとうございます、グラン。……貴族の慣習なんて気にしなくていいのよ、貴方が来てくれただけで……」


「いや、持ってきたんだ。これを受け取ってくれ」


 グランが収納魔法から取り出したのは、巨大な縦長の箱だった。


 侯爵夫妻は、その箱の装丁に使われている素材が「聖域の魔物」の皮であることに即座に気づき、身を乗り出す。


 蓋が開けられると、そこには一本の弓、一振りの長剣、そして、何かをはめ込む穴の開いた、繊細なチョーカーが納められていた。


 周囲の貴族たちは「平民は常識を知らない」「誕生日に武器など不吉な」と囁き合うが、グランはそれを一蹴するように語り始めた。


「俺は高価な財宝を贈るより、戦士としての君を祝いたい。……君の得意な弓を演習場で見ていて思った。最近、君の力に既存の武器が耐えきれなくなっている。だから、聖域の素材を使い、俺の鍛冶と錬金の全てを注いで作った。そして、弓の間合いを詰められた時のために、この剣も用意した」


 四聖華の面々も興味津々で歩み寄る。


 グランは「二つの武器を手に取り、魔力を流してくれ」とルヴィリスに頼む。


 彼女が魔力を流すと同時に、グランは空中に蒼白銀の魔法陣を展開。


 武器とチョーカーに設けられた空洞へ、聖域産の極上ルビーを埋め込んでいく。


 魔法陣が眩い光を放ち、消失する。


 呆気に取られる一同を前に、グランは最後の仕上げとしてチョーカーを手に取った。


「ルヴィ、これを着けてくれ」


 グランが差し出すと、ルヴィリスは蕩けるような瞳で彼を見つめた。


「……着けてくださるかしら?」


 会場が騒然とする中、侯爵の「着けてやれ」というアイコンタクトを受け、グランは「失礼します」と彼女の細い首にチョーカーを回した。


 至近距離で重なる視線。ルヴィリスは甘い吐息を漏らし、陶酔したように礼を言う。


「最後に、魔力操作の要領で武器をしまうように念じてみてくれ」


 ルヴィリスが念じると、箱に置かれた弓と剣が一瞬で掻き消えた。


「次は、剣を出すイメージだ」


 指示通りにすると、右手に長剣が出現する。弓も同様に自在だ。


「これは収納魔法を組み込んだ特殊なチョーカーだ。君の魔力を込めたルビーが武器とリンクしている。これで武器を持ち歩く煩わしさから解放され、瞬時に間合いを切り替えられるはずだ。俺が作ったリンクウェポン・シリーズ。これに名前をつけるならルヴィの通り名を借りて、『リンクウェポン・紅蓮』……君だけの武器だ。どうかな?」


 ルヴィリスは具現化させた弓と剣を両手で愛おしそうに抱きしめ、瞳を潤ませた。


「……今までで一番、嬉しいですわ。私が侯爵令嬢だからと贈られる高価な品々よりも、私のことを本当に考えてくれたこの贈り物が……一生大切にします!」


 侯爵が「とんでもないものをくれたな。わしの分も作ってくれるか?」と冗談交じりに尋ねるが、グランは「これはルヴィ個人への贈り物ですので」と丁重に断る。


 夫人は「いつでもうちに来なさい」と特大の爆弾を落としていった。


 その場を離れたグランを待っていたのは、他の四聖華たちだった。


「エルスメリアは10月、ソフィアは12月、ディアドラは2月……。分かっていますわね、グラン様?」  


 三人の熱い視線に、グランは「もちろんだ」と約束をさせられるのだった。



 その後のダンスの時間。


 初めにルヴィリスはヴァレンタイン侯爵と踊っており、エルスメリアから「次に踊る相手が、今一番好意を寄せている異性だと知らしめることになる」と教えられる。


 公爵家次男が自信満々に手を出そうとしたが、ルヴィリスは彼を無視して真っ直ぐグランのもとへ歩み寄った。


「踊ってくださるかしら?」


 四聖華たちにも背中を押され、グランは彼女の手を取った。


 交流パーティーで鍛えられた成果か、完璧なリードで踊り始めると、ルヴィリスの嬉しさが爆発し、そのまま三曲続けて踊り通した。


 それは「この男に手を出すな」という無言の宣言だった。



 誕生日会が終わり、他の四聖華たちが王都へ帰るのを見送った後、グランは自室で息をついていた。


 そこへ、着替えを済ませたルヴィリスが改めて礼を言いに訪れる。


「あのルビー、ただの宝石じゃないわね?」


「ああ。あれは宝石を魔石に改造したものだ。武器を出していない間も、チョーカーを通じて魔力を蓄積できるようになっている。一種の魔力操作の応用訓練だ」


 熱心に聞き入り魔力操作を始めたルヴィリスだったが、極度の魔力消費と一日の疲れが重なり、その場で魔力切れを起こして意識を沈ませてしまう。


 彼女を部屋に送り届けようとメイドを呼ぶが、現れたのは侯爵夫人だった。


「……一緒に寝てあげなさい。主人は私が抑えます。手を出すか出さないかは、貴方が決めなさい」


「夫人、それは流石に……。侯爵に見つかったら火あぶりにされますよ」


「ヴァーミリオン侯爵夫人が言っていた通り、本当に誠実ね。私は構わないわ。娘をよろしく」


 結局、グランはルヴィリスをベッドへ運び、その隣に横たわった。


 寝ぼけたルヴィリスが、吸い寄せられるようにグランの体を抱き寄せ、幸せそうに寝息を立て始める。


『マスター。据え膳食わぬは、と言いますが……』


(リスクが高すぎるだろ。黙って寝かせてくれ……)


 アンサートーカーの茶化しを切り捨て、グランも深い眠りに落ちた。




 翌朝。


 目覚めたルヴィリスは、隣で眠るグランを見て真っ赤になったが、すぐに覚悟を決めたような笑みを浮かべた。


「手を出さないのは……貴方らしいわね。でも、これくらいはいいわよね」


 彼女は眠るグランの唇に、そっと自らのそれを重ねた。


 そして「絶対に貴方を落とす」と強く決心し、彼を起こす。



 侯爵夫妻を交えた和やかな朝食を終え、グランは帰りの馬車に乗り込んだ。


 グランはルヴィリスの様子が少し落ち着かないなと思ったのか「何かあったのか?」とアンサートーカーに問いかけると「お互いぐっすり気持ちよく寝ていましたよ」と嘘をついた。空気が読める相棒である。


 そんな一部始終を天界から覗き見ていた女神アリスティアは、「尊すぎて悶絶する……!」と身を捩りながら、特盛のポップコーンを口に運んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ