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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第39話:招かれざる訪問者?

 夏休みが始まってから十日。凪の里は、かつてないほどの熱気に包まれていた。


「……遅い! 四人同時に来いと言ったはずだぞ!」


 グランの叱咤が飛び、演習場には魔力の衝突音が絶え間なく響く。


 四聖華の面々は、泥と汗にまみれながらも、その瞳にはかつてないほどの闘志を宿していた。


 だが、そんなストイックな修行の時間は、唐突に訪れた「警報」によって中断されることとなる。


『マスター、緊急警報。第1層および第2層を突破する絶大な魔力反応を検知。……反応は8つ。極めて強大です』


 アンサートーカーの無機質な報告に、グランは眉をひそめて手を止めた。


「8つ……? 聖域の第1層第2層を突破してくるなんて、一体何者だ」


『生体魔力パターン照合完了。……ヴァレンタイン侯爵、ヴァレンシア侯爵、ヴァスティール侯爵、ヴァーミリオン侯爵。および、各夫人たちです』


「……はぁ!? 四侯爵が勢揃いだと!? なんで場所がバレてんだよ!」


 グランが驚愕する中、第3層の転移門が激しく発光し、そこから圧倒的な覇気を纏った大人たちが姿を現した。


「ルヴィリス! このような場所に無断で……、一体何を考えているのだ!」


 先頭に立つヴァレンタイン侯爵の怒声が、静かな里に響き渡る。


 その背後には、各家の当主と、美しくも冷徹な眼差しを向ける夫人たちが並んでいた。


 どうやら各侯爵家が娘たちの行動に疑問を抱き、各所に調べをした結果、アリバイ工作がバレてしまっていたらしい。


 さらにヴァーミリオン家のメイドであるレインが、娘たちの不可解な行動を四侯爵に問い詰められ、泣きながら白状してしまったのだ。


「お、お父様!? なぜここが……!」


 ルヴィリスが動揺して後ずさりすると、侯爵たちはグランを鋭い視線で射抜いた。


「貴様か。我が娘をたぶらかし、このような怪しげな場所に連れ込んだ不届き者は!」


 当主たちは有無を言わさず娘たちの腕を引き、強引に連れ戻そうとする。


 その光景を見て、グランは静かに一歩前に出た。


「待ってください。彼女たちは自らの意志で、強くなるためにここへ来ました。どうか、そんなに乱暴にしないでいただけますか」


「平民の分際で我々に意見するか! 娘を返してもらおう!」


 ヴァスティール侯爵が剣を抜こうとした瞬間、それまで震えていたディアドラが彼の前に立ち塞がった。


「お父様、おやめください! グラン殿は、十歳のあの日、私たちを救ってくれた命の恩人です!」


「そうですわ! 私たちが今ここにいるのは、グラン君のおかげなんです!」


 エルスメリアも続き、ソフィアもハルバードを構えて親たちを睨みつける。


「もし、無理やり連れ戻すというのなら……私は二度と実家の敷居は跨ぎませんわ。一生、ここでグランと暮らします!」


 ルヴィリスの決死の「逆ギレ」とも取れる宣言に、侯爵たちは絶句した。


 あの素直だった娘たちが、たった一人の少年のために、家督を捨てかねない勢いで反抗している。


 ヴァレンタイン侯爵が娘の決死の覚悟に面食らい戸惑っていると、横からヴァーミリオン侯爵がグランに話しかけた。


「グラン殿、私は君と事を荒立たせるつもりはない。娘を治してもらった恩がある。だが、それだけでは説明足りぬ事柄が多すぎる。君のことはあの日詮索しないと約束したが、……限界がある。どうか話をしてくれないか」


 ヴァーミリオン侯爵の真摯な態度に、グランはアンサートーカーと短く打ち合わせを行い、ある程度の情報を開示することを決めた。


「わかりました。……俺は、女神の遣いとしての役割を担っています。人間社会に溶け込み、いずれ世界を破滅へと導く災厄が訪れる。俺はそれに備え、自らを聖域にて鍛えていました。その時に彼女たちを成り行きで助けたのです」


(世界を破滅へと導く災厄=女神の物語に対する無茶ぶり)


 転生者の事実は伏せつつも、語られる「世界の危機」という言葉に、侯爵たちは顔を見合わせた。


「女神の遣いだと? 荒唐無稽な話だが……この『聖域』という場所の特異性を考えれば、否定もできん」


「だが、実力が伴わぬ者の言葉は信じられん。魔導大会で優勝したというが、我々から見れば所詮は子供の遊びだ。力を示せ、少年」


 その言葉を聞き、どうすればいいか悩んだが、ここに来るまでの過程を自分一人でやってみせたら納得するんじゃないかと考えた。


「では、俺が第1層から第2層を、単独で突破する姿を見てください」


 グランは広場の中央に巨大な魔法ヴィジョンを展開した。


「本当に今の映像か疑われるでしょうから、まずはこれを見てください」


 ヴィジョンに映し出されたのは、王都のヴァスティール家の修練場で、留守を預かる騎士たちが訓練している光景だった。


「なっ……これは、我が家の修練場ではないか! なぜこのような魔法が……!」


 映像が本物であることを証明すると、グランは転移魔法で第1層の入り口へと跳んだ。


「見ていてください。これが、俺の実力です」



 そこからの光景は、侯爵たちにとって生涯忘れられない衝撃となった。


 久しぶりに大暴れしてやろうと思い、自身のオリジナル魔法をふんだんに披露した。


 大きなトレントには炎属性を纏わせたプレッシャー・カノンで焼き尽くし、小型の魔物や中型の魔物は、魔力の刃で一閃していった。


 第2層へ降りると、あえて魔物の群れを呼び寄せ、百頭近い群れを集め、それをあの時と同じようにマルチロックからのロックオンレーザーで一掃した。


 そして、四聖華が総力戦で挑んだ第2層のボス、あの「聖域の熊」の前にグランが立つ。


「ガアアアアッ!」


 吠える熊に対し、グランは両腕に魔力を纏い、一気に近づいた。


「『魔導無双剣』」


 超高速の両腕の突きが熊の巨体を貫き、グランが両腕を広げると熊は縦に真っ二つへと引き裂かれた。


 ヴィジョンの前で、侯爵たちは言葉を失い、夫人たちは扇子を落として呆然としていた。


「……あ、ありえん。これほどの力、人間の一生で辿り着ける領域ではない……」


 第3層に戻ってきたグランに、四聖華たちは「やっぱりグラン様は世界一ですわ!」と歓喜して抱きついた。


 侯爵家当主たちは顔を見合わせ、重苦しい沈黙の後、ヴァーミリオン侯爵が代表して口を開いた。


「……皆の者、認めざるを得ないと思うが。グラン殿。娘たちの合宿を許可しよう。……だが、条件がある」


「条件、ですか?」


 ヴァーミリオン侯爵はグランの強さを目の当たりにし、自身も王国上位の魔導師であるため、久しぶりに血が騒ぎだしていた。


「私も保護者として、ここで修行させてもらう。……これほどの力を持つ者が語る『災厄』だ。我ら侯爵家も無関係ではいられまい」


 その言葉に、四聖華たちの顔色が真っ青になった。


「お、お父様!? 何を言っていますの! 私たちはグラン君と二人きりで、いえ、五人きりでラブラブな時間を過ごすために……!」


 エルスメリアは親がいればグランを誘惑するチャンスが激減すると感じ、猛烈に反対した。


「却下だ。いくらグラン殿が居るとはいえ、娘をこのような場所に放置できん。学園が始まるまでは、一緒にここで研鑽を積ませてもらう」


 娘たちは猛反対したが、ヴァレンタイン侯爵は冷静にそれを制した。


「だめだ、お前たちはまだまだ子供だ。それにお前らには、色々とまだ『早い』。今回は修行に集中してもらう」


「ぐぬぬ……!」

「お父様の意地悪!」


 娘たちが地団駄を踏む中、グランはアンサートーカーに指示を出した。


「アンサートーカー、ダンジョンコアを用いて居住区の再拡張を。各侯爵家専用の個室、および夫人たちのための自動人形エステサロン付き大浴場を追加だ」


『了解しました、マスター。空間リソースを15%追加投入し、宿泊施設を「城郭仕様」へと変更します』


 グランが手をかざすと、見る間に別館が組み上がり、豪華な個室が並ぶ屋敷が完成した。


「ほう……気が利くではないか。これなら、しばらく滞在しても不便はなさそうだな」


 当主たちは満足げに頷き、夫人たちも「エステサロン」という言葉に興味を惹かれたようで、機嫌を直して別館へと入っていった。


「……はぁ。静かな夏休みになると思ったんだけどな。これじゃあ、学園より騒がしいよ」


 グランは一人、夕暮れの凪の里を見上げて深い溜息をついた。


 しかし、その口元には、少しだけ楽しげな笑みが浮かんでいた。


 こうして、聖域での「地獄の夏休み合宿」は、親世代を巻き込んだ前代未聞の規模へと発展していくのだった。


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