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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第32話:学年別魔導大会決勝戦決着

 高位貴族専用の観客席で戦況を見守っていた四聖華の三人は、一斉に同じことを思っていた。


(先を越された……!)


 各自、グラン・グラニアスこそが自分たちの救世主「凪の君」であると確信していた。


 大会終了後にそれぞれがこっそり抜け駆けしようと、虎視眈々と機会を狙っていたのだ。


 それがまさか、あの物静かなソフィアが、魔導大会決勝戦というこの大舞台で仕掛けるとは思いもよらなかった。


 まさかの伏兵である。


 ルヴィリス、エルスメリア、ディアドラの三人は、出遅れたことに心の中で血涙を流し、親友のなりふり構わぬ先制攻撃に地団駄を踏んでいた。


 舞台上では、ソフィアがうっとりとした表情でグランの手を引いていた。


「さあ、早く二人きりになりましょう……」


「いや、ちょっと待ってくださいヴァレンシア様、まだ大会の真っ最中なんですが……」


 グランを強引に引っ張って会場を後にしようとするが、貴族主義の息がかかった審判が立ちはだかる。


「棄権など認めん! 無効だ! すぐに持ち場に戻り、試合を開始しろ!」


 ソフィアは審判をゴミを見るような目で見つめ、完全に無視して歩みを進めようとする。


 激昂した審判は、顔を真っ赤にしてグランを指差した。


「貴様、グラン・グラニアス! 妙な術を使ってヴァレンシア嬢を操っているな! 強制的に失格を宣言する!」


 あからさまな言いがかりに会場がざわついた直後、激しい冷気が演習場を駆け抜けた。


「……うるさい。私の凪の君を侮辱する者は、誰であろうと許さない」


 ソフィアが手をかざすと、審判の足元から一瞬で氷柱が突き上がり、男を首まで氷漬けにして封印した。


「どうせ貴族主義の息がかかった操り人形。そんな者たちの茶番に付き合うつもりはない」


 あまりの事態に、学園長が場を収めるために割って入った。


「観客の諸君! 一旦小休止とする! 1時間ほど会議を行い、改めて方針を発表するゆえ、待たれよ!」






 ――学園長室。


 学園長を対面にテーブルを挟んで、ソファにはソフィアがグランの腕をしっかりと抱き込み、体を預けるようにして座っていた。


「ソフィ! 貴族の令嬢として、あまりにはしたないと思わないの!?」


 後を追いかけてきたルヴィリスが真っ赤になって抗議するが、ソフィアはどこ吹く風である。


「……ルヴィやみんなだって、大会が終わったら抜け駆けして、凪の君とお近づきになるつもりだったでしょう?」


 その指摘に、図星をつかれたルヴィリスが言葉を詰まらせると、エルスメリアやディアドラも加わり、部屋の中はわいわいと騒がしい喧嘩状態に陥った。




「ええい、静かにせんか! 話が全く進まん!」


 学園長の一喝でようやく静まり返ると、彼はとりあえずグランに意見を求めた。


「グランよ。お主は、ソフィア君と試合をする気はあるのかね?」


 グランは隣で自分に密着しているソフィアに視線を向けた。


「……ヴァレンシア様、俺と戦う気はありますか?」


「ソフィって呼んで。私もグラン様って呼ぶ……戦うといっても手加減しているグラン様に勝っても意味がないわ、それに、グラン様が勝ってもどうせ貴族主義の連中が難癖をつけてくるだけ」


 ソフィアはグランを見つめ、熱っぽい吐息をつく。


「そんな無駄な時間より、早く二人で聖域に行って既成事実を積み重ねる方が、よっぽど有意義……」


『マスター。これほどまでに愛されているとは。相棒(アンサートーカー)として誇らしい限りですね』


(お前、完全におちょくってるだろ!大体、愛が重すぎるんだよ! ……あとずっといい匂いがして集中できない……)


「学園長はどうしたいのです?」


 グランの問いに、学園長は深く溜息をついて答えた。


「正直に言えば、今までの魔導大会で過去最高に盛り上がっている。当たり前だ。王国史上最強と言われる世代の決勝だ。これが行われなければ観客の暴動は免れんし、何より王族や他国の来賓も見に来ている。試合はしてほしい」


「まあ、そうですよね……」


 グランは再度、ソフィアと正面から向き合った。


「ヴァレンシア様、いや……ソフィ。俺は、今の君がどれだけ強くなったのか見てみたい。あの日からたゆまぬ努力で頑張った成果を、見せてくれないか?」


 その言葉に、ソフィアの瞳が大きく見開かれた。


「……グラン様の言うことなら、何でも聞きます。そこまで言っていただけるなら、謹んでお受けします」



 そこへ、貴族主義派のリーダー格の理事の男が、護衛を連れて会議室へ乱入してきた。


「学園長! やはりあの平民は禁術でヴァレンシア嬢を操っている! 今すぐ拘束しろ!」


 あまりにしつこい難癖に、エルスメリアが冷ややかに魔眼を開いた。


「私の魔眼『鑑定』で見ても、ソフィに術がかかっている形跡は一切ありませんわ」


「そなたの魔眼ではこの平民は見破れなかったはずだ! 然るべき場所に連れて行き――」


「……それ以上、私を含む四聖華を侮辱し、醜態を晒すなら、私の魔眼で見たあなたの『すべての情報』を公にしましょうか?」


 エルスメリアの静かな脅しに、リーダーの男は顔を青くして、しぶしぶ退散していった。


「さて。くだらない審判は私が氷漬けにしましたからね。⋯⋯こうなれば公明正大の学園長が審判をすれば、すべてが丸く収まりますね」


 ソフィアの提案に、学園長も苦笑いしながら了承した。




 ――1時間後、演習場にアナウンスが響き渡る。


「大変お待たせいたしました! 予定通り、決勝戦を開催いたします! また、本試合に限り、学園長が自ら審判を務めることとなりました!」


 会場からは、これまでにないほどの地鳴りのような歓声が上がった。


 王族席では、アーサー王が満足げに頷いていた。


「今日は我が王国にとって、特別な日になりそうだな」


 闘技場の中央、グランとソフィアが入場し、向かい合う。


 そして、運命の決勝戦を告げるゴングが鳴り響いた。




 ソフィアの手元には、先ほどの入場では見えなかった身の丈ほどのハルバードがあった。


「……ソフィ、さっきまでその武器、持ってなかったよな?」


「もともと試合をするつもりは全くありませんでしたから。でも、グラン様に見ていただけると言うなら話は別です」


 ソフィアがにこりと微笑み、圧倒的な密度の氷の魔力をハルバードに纏わせる。


「私の思い、すべて受け止めてください!『氷華裂断』!」


 ソフィアが高く飛翔し、落下速度と魔力を乗せてハルバードを全力で振り下ろした。


 グランは絶対防御魔法「イージス」を展開しハルバードを防ぐが、ソフィアが武器に纏わせた魔力が衝撃で広がり、グランの周辺一帯がまるで氷の花が咲いたように出現し一瞬で凍りついた。


『マスター。想定外のダメージです。現在の調整ステータスでは、あと三発ほどで魔力が枯渇し、イージスを維持できなくなります』


(……最初から本気だな。イージスで受けるのはまずいか)


 グランは防御を切り替え、回避を主体にする決断を下す。


「私の本気を、手加減してる状態でも防ぐなんて、さすがは凪の君……。あなたの背中はまだまだ遠いのですね」


 ソフィアは切なげに微笑み、攻撃を継続しながら尋ねる。


「聖域に行くには、私はまだ足りないのでしょうか?」


「今の実力なら、第1層なら問題なく突破できる。あの日の狼相手でも余裕さ。だが、第2層の厄介なところは第1層で出た小・中型魔獣が群れで襲ってくる。はじめは対処できると思うが、あそこは血の匂いや魔力の乱れを感じて集まってくる習性がある。もたもたしていると、あっという間に囲まれてしまう。そこを突破できても、階層ボスで躓くかもしれない」


 グランは回避しながら率直に、しかし前向きな評価を告げる。


「ただ、それは一人の場合だ。君たち四聖華は、ちょうどパーティーのバランスがいい。四人なら、凪の里まで来れるはずだ」


「夏休みの腕試しで、一度、四聖華で聖域に足を運ぶつもりです。」


「俺がヒーラーとして同行しようか?」


「とても嬉しいご提案ですが……まずは聖域に自分たちの力でたどり着くことに、意味がありますから」


 グランが同行を提案したが、ソフィアは凛とした表情で断り、自らの足で歩む決意を見せた。


 グランはその心意気を認め、誇らしげに微笑んだ。


 その間もソフィアの猛攻は続く。


 あの重そうなハルバードを縦横無尽に振り回し、近づく隙すら与えてくれない


 ただ、やはり大振りのためか回避はまだしやすいが、時折混ぜてくる氷弾の魔法が厄介で、タイミングをずらされることで回避がギリギリになる時があった。



「次の攻撃で、本気で決めに行きます」


 ソフィアが手を口元に寄せ、手のひらに集めた高密度の魔力にそっと息を吹きかけた。


 刹那、舞台上に魔力が広がり、地面が凍りつき、完全な氷の世界へと変貌し、周囲の水分がすべて凍てつく。


 グランは咄嗟に飛び上がり、氷漬けにされるのを回避するが、氷のリンクとなった舞台に足をついた瞬間、バランスを崩してしまう。


 その隙を見逃さず、ソフィアが前世のフィギュアスケーターのような優雅さで加速しながら迫る。


 回転を加え飛び上がったハルバードの刃が、横回転の遠心力とともに、グランを薙ぎ払おうと肉薄した。


 すんでのところで回避するが、ソフィアは氷の上を縦横無尽に滑走し、スピードを落とさぬまま流れるような連携を仕掛けてくる。


(アンサートーカー、俺も魔力でスケートシューズを再現した方がいいか?)


『推奨しません。どちらかと言えば、アイゼンのように滑る舞台で足元を安定させ、回避を優先にして対応すべきです』


 グランは魔力の刃を足の裏に展開し、即席のアイゼンを作り上げて足元を安定させた。


 踏み込みの安定を取り戻した瞬間、ソフィアが最後の猛攻を仕掛けようと高く飛び上がった。


「本当に強くなった。ソフィ、君は誇っていい。俺のとっておきを見せてあげる」


 その言葉を聞き、ソフィアは魔眼を発動しグランを見る。


 憧れた蒼白銀の魔力がグランの足に集中する。


「魔導翔烈脚!」


 グランの足に凝縮された蒼白銀の魔力を纏った凄まじい蹴りが放たれる。

 魔眼で蹴り技が来るのを把握していたソフィアはハルバードと氷の盾で防いだ。


 しかし強烈な衝撃でソフィアがガードごと空中に打ち上げられる。


 その刹那、グランは右拳に魔力を纏い、魔導大会で初めて出す概念技、発動すればその結果になるという、アカシックレコードの運命に匹敵するまさにチート技をぶつける。



「空破」



 空中にいる対象に「受けたら致命傷になる」概念技を打ち込んだ。(もちろん威力は抑えている)


 アカシックレコードすら書き換えかねないそのチート級の技が、ソフィアを吹き飛ばす。


 ソフィアは衝撃により気絶し、ソフィアの魔力で維持していた氷の世界は溶け、ライフゲージがゼロになった。


「……そこまで! 勝者、グラン・グラニアス!」


 学園長の宣言が響き渡り、王国史上最強世代が集った大会は、一人の「異物」の優勝で幕を閉じた。

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