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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第29話:白閃の剣姫

 王国四侯爵、ヴァスティール家。

 古くから「剣の至宝」と謳われるその名門に生まれた者は、例外なく剣を握る運命にある。

 末の長女ディアドラ・ヴァスティールもまた、その例外ではなかった。


 彼女には、才能溢れる年の離れた二人の兄がいた。

 ディアドラにとって剣を振るう兄たちは憧れであり、目標だった。

 唯一の妹として溺愛された彼女は、兄たちが競うように授けてくれる技術をスポンジが水を吸うように吸収していった。

 やがて、その才能が兄たちを凌駕する片鱗を見せ始めた時、彼女は申し訳なさに胸を痛めたが、兄たちは笑って彼女の背を叩いた。

「お前なら、いつか歴代最強の『剣聖』になれる」

 その言葉を支えに、彼女は自分に課せられた期待を漠然と、しかし真摯に受け止めていた。


 だが、そんな彼女の「強さへの認識」を根底から覆す出来事が起こる。

 十歳の時、聖域で出会った一人の少年「凪の君」。

 それまで「最強」だと信じていた兄たちの剣ですら児戯に等しく思えるほど、次元の違う圧倒的な力。

 そして、気が弱く大人しい性格だったソフィアが、勇気を振り絞り、なりふり構わず彼に教えを乞う姿。

 ディアドラは、自分の甘さと世界の広さを痛感し、打ちのめされた。


(私は、まだ何も成し得ていない)


 聖域から帰還後、彼女は変わった。

「凪の君」に教わった魔力操作を基礎とし、それまでの名門の型に捉われない、一線を画す過酷な剣の修業へと身を投じた。

 それを見た理解のある兄たちも、鬼気迫る妹に対し、今までの甘やかしをやめ、一介の剣士として訓練の相手をした。

 そして「四聖華」と呼ばれる仲間たちと共に、国を守る剣になるのだと、未来に希望を抱いていた。




 転機が訪れたのは、十三歳の時。

 極限まで魔力操作を突き詰めていた最中、彼女の瞳に異変が起きた。

 言い伝えにのみ存在する伝説の魔眼――『未来視』の覚醒だった。


 当初は単なる魔力の高まりだと思っていた。

 だが、興味本位で膨大な魔力を注ぎ込んだその瞳は、「三年の月日」を超え、残酷な真実を映し出した。


 ――ルヴィリスとソフィア、そして自分。

 三人が、エルスメリアの名が刻まれた墓標の前で、絶望に暮れ、涙を流している光景。


 その夜、彼女は一睡もできなかった。

 知らなければよかった絶望に震え、それ以来、彼女は自分の遠い未来を覗くことを止めた。

 絶望の未来を忘れるため、狂ったように鍛錬に没頭したが、運命は非情だった。

 一年前、エルスメリアが魔力核欠乏症で倒れ、休学を余儀なくされたという報せが入る。

 忘れようとしたあの光景が、呪いのように鮮明に蘇る。


 自分の視た未来は、正解だったのだ。


 ただ、この魔眼は皮肉にも、戦闘中に発動する数秒先の未来視は、対人戦において彼女をほぼ無敵の存在へと押し上げてしまった。

 もちろん、四聖華や強者相手には「未来が見えていても避けられない」理外の攻撃があることや、どうしても広範囲攻撃に対してはまだまだ対処が甘い。

 未だこの眼を完全には使いこなせていない。

 訪れる絶望に心を蝕まれた彼女は、学園ではなりふり構わず殺気を飛ばすようになっていた。


 だが、奇跡は起きた。

 エルスメリアの病が完治したのだ。

 未来視で見えた絶望ですら、変わったのだ。


 現に、エルが完治した後に「かつて見たあの日」と同じ月日を再び未来視すると、そこには墓標などなかった。

 代わりに映し出されたのは、四人で優雅にティーパーティーを楽しんでいる、穏やかで幸福な姿だった。


(……未来は、変えられる。ならば、この眼を完全に御し、訪れる悲劇に抗えるようになりたい)


 かつて呪ったその力を使いこなし、訪れる悲劇を防ぐため、彼女はさらなる研鑽を積んだ。

 あの日見た、友が死ぬ未来。それを斬り伏せ、大切な日常を守り抜くための剣を。

 ディアドラは今、その決意を胸に、目の前の「強者」へと正対していた。




 試合開始のゴングが鳴り響くと同時に、演習場の空気は一瞬で氷点下まで凍り付いた。


(アンサートーカー、未来視への対処法を)

『了解。マスター、相手の視認している未来は「数秒先」の景色です。出力制限下では、物理的に回避不能なタイミングを狙い撃ちされる危険性が極めて高いと判断します』


「いわゆる、先読みか……。前世ならギャンブルで大儲けだな」

 グランがくだらないことを小さく呟き、構える。

 対するディアドラは、凛とした佇まいで白銀の剣を抜いた。


「無駄よ。……今、あなたが左足を半歩引き、私の初動を待とうとする『未来』が見えたわ」


 ディアドラの言葉通り、グランが動くより先に彼女の剣が奔る。


 神速。


 避けるので精一杯の連撃が、グランの頬をかすめる。


「……今のは予測攻撃じゃない、本当に見えているのか」

「ええ。あなたの『現在』が、私にとっては『過去』なのよ。……次は、右。逃がさないわ」


 グランは紙一重で首筋を逸らし、あえて剣筋に合わせるように手を伸ばした。

 狙うは『ソードブレイク』。

 初めからオリジナル魔法を解禁し、剣を掴み折る。

 その瞬間に勝負を決める算段だ。

 だが、ディアドラの瞳が青白く輝く。


「見えていると言ったはずよ!その手で私の剣を掴もうとする未来を!」


 彼女は空中で剣の軌道をミリ単位でずらした。

 フェイント。

 空を切ったグランの腕を、白銀の刃が浅く切り裂く。

 鮮血が舞い、観客席から悲鳴に近いどよめきが上がった。


「っ……未来が見えるだけじゃなく、それに対応できる技術も伴っているのか……」

 腕の傷を抑え、次の行動の準備をする。


「驚いたわ。腕を切り落とすつもりだったのに……なかなかやるわね」


(アンサートーカー、オリジナル魔法の出力を上げる)

『了解。現ステータスの状態で最適になるよう調整します』


 瞬間的に肉薄し、魔力を纏った神速の拳を放つ。ボッ!と音が遅れて響く。


「なっ……!?」


 ディアドラは未来視でその軌道を見ていた。

 だが、見えていても身体が追いつかない。

 辛うじて剣の腹で受け流したが、金属音が悲鳴を上げ、衝撃だけで彼女の腕の骨が軋む。


「……未来が見えていても、避けられなきゃ意味がないだろう?」

『カッコつけてますが、出力的にあと6発しか打てません』


「……っ、調子に乗らないで! 見えている場所に、行かせなければいいだけよ! ――『白閃乱舞』!」


 希少な光属性による高速移動魔法。演習場全域に白い閃光が走り、残像すら置き去りにする高速機動。


「前後左右……どこから来るか分かっていても、この速度と手数なら……!」


 すれ違いざまに、あらゆる角度からグランを切り刻む。

 なんとか致命傷を避け続けるグランに、アンサートーカーの無機質な声が響く。

『マスター、ライフゲージが低下しています。これ以上の長期戦は不利です。……一撃必殺の準備を』


(それしかないな、あれを使う)


 グランが腰を深く落とし、正拳の構えを取る。


「無駄よ! その構え、カウンターを狙っている未来が見えたわ! そこを外して、あなたの背後を――!」

 ディアドラが勝利を確信し、回避行動から背後への一撃へと転じようとした、その瞬間。



「魔導――瞬天撃」


 それは、ディアドラの神速の高速移動斬撃にさらに「カウンター」の加速を乗せた、理外の一撃。

 ディアドラの瞳に映る未来から、突如として「グランの拳」が消失した。


「……消えた!? 未来が……書き換えられた!?」


「……未来というのは、何が起こるかわからないから怖いし楽しいのさ……」


 未来を視る魔眼すらも、「現在」の圧倒的な加速の前には無力だった。

 回避行動に移るより早く、青白銀の魔力を纏った拳がディアドラの鳩尾を正確に捉える。


「あ……がはっ……」


 白銀の剣姫が、その場に崩れ落ちる。

 未来を予見する者が、誰よりも早く「己の敗北」という逃れられない未来を突きつけられた瞬間だった。


「……勝者、グラン・グラニアス!!」


 一拍置いて、割れんばかりの歓声が演習場を揺らした。


 だが、倒れたディアドラを見下ろすグランの胸中には、勝利の昂ぶりなど微塵もなかった。


(……これでまた一歩、平穏から遠ざかったか……)


 肩をすくめ、背を向けようとしたその時。


 グランの背筋に、悍ましいほどの魔力が走った。

未来視はPS2のゲームでジョ〇ョ第5部のキング・〇リムゾンみたいな感じで想像すればわかりやすいです。

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