第200話:本命の話と褒美
本編200話に到達しました。
本当にありがとうございます。
感動的な歓送会が終わり、今日はいよいよ終業式だった。
王国学園のSクラスのメンバーたちも、今日で留学が終わりだと思うと感慨深くなり、少し悲しい気持ちになっていた。
そして終業式も終わり、教室で帝国学園の学園長が最後の挨拶をする。
「王国の諸君、君たちには大変世話になった。個人的にはこのままいてほしいのだがな。ただ君たちは王国学園の生徒だ。そこは無理強いできん。王国に帰ってもここで学んだことを生かして、王国学園最強として君臨し続けてほしい。私からは以上だ」
そう言って、学園長は言葉を締めた。
その後、寮に戻ったグランは自室の片づけと掃除をし始める。
すると、アンサートーカーが問いかけてきた。
『学園長が私物だけ撤去したら何もしなくていいと言っていましたが』
グランは手を動かしながら答える。
「短くても住んでいた場所を離れるんだ。こういう時は感謝も込めて掃除をするんだよ」
そして掃除をし終わり、お腹がすいたので皇都で何か食べようと思い外に出た。
皇都を歩いていると、不意に声を掛けられる。
声のほうを振り向くと、帝国学園の男子生徒たちだった。
「やあ、こんなところで何をしているんだ?」
グランは足を止めて答える。
「お腹がすいたからご飯でも食べようと思って」
すると、彼らは笑顔で提案してくる。
「俺たちも今から食べるんだ。せっかくだし一緒に行かないか?」
「ああ、いいよ。どこに行くか決めていなかったし」
グランが頷くと、一人が先導するように言った。
「じゃあ、あそこにしよう。結構がっつり食べられるし、値段も安いんだ」
そういって、グランは男子生徒たちと一緒に皇都を歩き出した。
そして店の前に到着すると、そこは活気のある大衆食堂のような店だった。
「ここは種類も多くてボリュームもある。味もうまいんだ」
彼らはそう言って、グランと一緒に店内へと入っていく。
席に着くと、すぐに店員が来て注文を取る。
グランはみんなが頼むやつと同じにしようと思い、待っていると彼らはみんな日替わり定食を頼んでいた。
グランは中身を何も確認せず、自分もそれに続く。
「じゃあ、自分も」
すると店員は景気よく叫んだ。
「日替わり六丁!」
厨房内の料理人たちも威勢よく返す。
「あいよ!」
注文を終え、グランは定食が来るまで帝国の生徒たちと雑談を交わした。
すると、一人が少し遠慮がちな様子でグランに聞いてきた。
「前から聞きたかったんだけどさ、グランの本命の女性っていったい誰なんだ?」
グランは飲んでいた水を吹き出しそうになったが、すぐにいないと答える。
それを聞いた帝国の生徒たちは、びっくりした様子で身を乗り出してきた。
「俺たちはさ、というか帝国の生徒の間では初めは、第二皇女のセルフィリア殿下と恋仲ということになっているんだ。でもグランを見ていると、王国の王女様や侯爵家令嬢たちともすごく仲良くしているだろ?」
「そうそう、それがすごく不思議なんだよ。それで、誰が本命なのか賭け事まで発展しかけたんだ」
「でも、さすがに皇族や他国の王族、高位貴族を賭けの対象にするのはやばいということで終わったんだが、それでもずっと謎のままだしな」
「もうすぐ帰るんだ。誰が本命なのか教えてくれよ」
彼らは、思春期相応の話題に花を咲かせ始めた。
グランはとても困った。
自分には、本命の相手などまだいないからだ。
そう思って、グランは正直に胸の内を答える。
「いや、自分で言うのもなんだけど、あれだけの女性たちに囲まれて、しかもみんな貴族だろ?王国ではそこも関係するからまだ選べないんだ」
そう言うと、帝国の生徒たちも王国の事情をある程度理解しているのか、納得のいったような顔をした。
「たしかに、あそこから誰か選べと言われても難しいよな」
「帝国の民ならセルフィリア様だろうけど、あの方の隣に立つのってすさまじいプレッシャーだしな」
「かといって、他の侯爵令嬢様や王女様もかなりの実力者だし、見目麗しくそれに頭もいい。高嶺の花どころじゃないもんな」
「まあ、帰る前に聞けたからよかったわ」
「そういえばリーゼロッテ様にも言い寄られたんだろ?」
グランはそれを聞いて歓送会のことを思い出し、冷や汗をかく。
「あの方も浮いた話が全然なかったよな」
「そうだよな。歓送会でグランに踊ってくれとお願いした時は、本当にびっくりしたけど」
男生徒の一人は少しにやけながら話す。
「そうそう、今まで社交の場でもエスコートはつけず、ダンスも誘われたら付き合いで一曲踊るくらいで、あとはずっと壁の花になっていたしな」
「かといって、あの実力も相まって同年代の男は少し近寄りがたいし、言い寄ったやつも、強さの話をされてなんも言えず玉砕したしな」
「それに一度、自分には想い人がいるって言ったらしいぞ」
「そうなのか。じゃあそれがグランってわけか。すげえよな」
グランはとても居心地が悪くなった。
リーゼロッテに関しては、本当に突然の出来事だったからだ。
「グランもそのまま帝国にいたらさぞモテただろうな。あの歓送会の時の歌もあって、さらに人気になったぞ」
「そういえば、メリル嬢とはあの後何もなかったのか?」
グランはメリルのことを聞かれると話す。
「メリル様とはあの後、特に何もなかったんだ」
「急に前に出てデュエットし始めだろ。あれも結構な噂になってるぞ」
そう言われると、アンサートーカーはおちょくってきた。
『メリル様で十三人目ですね。どんどん増えていきますね』
(もう帝国から出るからこれ以上増えることはない!そもそも、シルヴィアも皇后も、リーゼロッテもメリルもノーカンだろ!)
『いや、もしかしたら今日か明日に思いを伝えられるかもしれませんよ』
(お前が言ったらそうなるかもしれないだろ!やめろ!)
グランは頭を抱えそうになった。
そして日替わりの定食が届き、みんなで食べ始める。
肉と野菜の料理で、とてもおいしかった。
グランは食べ終わってみんなと外に出ると、みんなが声をかける。
「一学期は本当に世話になった。元気でな!」
グランにそう挨拶し、そこで別れた。
皇都を歩いていると、今度は帝国の女子生徒たちと出くわした。
グランが挨拶をして通り過ぎようとすると、一人の女子生徒が尋ねてきた。
「あの、もし時間がよろしければ、少しお茶でもどうでしょうか?」
アンサートーカーがおちょくってくる。
『これって前世で言う逆ナンですね!マスター、相棒として私は鼻が高いです!』
グランはそれを聞き流す。
「まあ、特に用事もないしいいよ」
そう伝えると、女子生徒たちはいっせいに喜んだ。
そして皇都でも格式のある純喫茶に入ると、個室へと連れていかれる。
グランが気づいた時には、皆が獲物を見るような目で席に座るように促してきた。
出入り口から一番遠い席だった。
アンサートーカーはさらに煽ってくる。
『罠にかかった獲物のようですね。録画の準備でもしておきましょうか』
(お前いい加減にしろ!)
グランはコーヒーとケーキを頼み、皆と雑談をしていると一人の女子生徒が尋ねてきた。
「グラン様、率直に申し上げて、あなた様の意中の方はどなたなのですか?」
先ほどの男子生徒とほぼ一緒のことを聞いてきた。
グランは驚いて聞き返す。
「それさっきも男子生徒から聞かれたんだけど、みんなってそんなに俺の事興味あるの?」
そう聞くと、女子生徒たちは目をキラキラさせながら話す。
「グラン様、あなた様は今帝国の学園で一番の人気を誇りますよ。それこそ男女問わずです」
「しかし、王国学園の留学生たちともとても懇意にしています。それこそ男女の仲だと言われても違和感がないくらいに見えます」
「帝国学園の生徒たちは皆、初めはセルフィリア様の婚約者だと思われていました。しかし、この留学中に実は違うのではという話になり、では誰が意中の人なのかという話になったのです」
「そして歓送会の時のメリル嬢、そして生徒会長のリーゼロッテ様に至っては、グラズ平原の夜景を二人きりで歩き逢瀬を楽しんだという話もあります」
「とてもロマンチックな話です。歓送会の時もリーゼロッテ様直々にグラン様に踊ってくださいとお願いいたしたのでしょう?もう帝国学園はグラン様の意中の相手は誰なのかと話が持ちきりですよ」
グランは頭を抱えた。
これまでのことを考えると、青春真っただ中の男女にとって恋愛話なんて一番楽しい話題であり、皆が興味津々になるのも当たり前だった。
グランは正直に話す。
「確かにみんなとは仲がいいよ。でも誰か一人を選べと言われても王国は身分もあるから中々決められないんだ」
もっともらしい理由を言うと、男子生徒の時とは違い女子生徒たちはさらに盛り上がった。
「身分差の恋……まるであの小説みたいな話ね!」
皆でそう言って大盛り上がりする。
グランは途端に居心地が悪くなってきた。
その後は、グランの好きなものや趣向などをいろいろ尋ねられた。
店から出ると、女子生徒たちはグランにいい思い出になりましたと笑顔で話し別れていった。
男子生徒の時とは違い少し疲れていたが、それでもグランは最後に、いい気晴らしになったと思い、帝国の寮に戻る。
そしてしばらく掃除の終わった自室で時間をつぶしていると、アンサートーカーから話しかけられた。
『そういえばシルヴィア様のご褒美はどうなさるおつもりです?』
グランは完全に忘れていた。
「このまま有耶無耶にしようと思ってる」
『それはやめておいたほうがいいですよ。いつものおちょくり関係なしでの助言です』
「お前、おちょくりという自覚あったのかよ」
『それは今は置いときましょう。明後日に帰るのですから、明日アジトに行ってせめて日時でも決めておいたほうがいいですよ』
「なぜなんだ?」
『このまま有耶無耶にしてると、恐らく幻零を使って王国に会いに来ますよ。まあ私はそのほうが修羅場になって面白いのですが、その行為がマスターに逆らったと魔法契約で判定されて、知らないうちに粉微塵になっていれば大事件となりますね』
グランはそれを聞いてさすがにそれは困ると思い、すぐにゲートを開きアジトに向かった。
アジトの入り口を警備していた幻零にシルヴィアはいるかと尋ねると、ちょうど執務室にいるとのことで会いに行く。
執務室の前には警備の二人が立っていた。
「シルヴィアはいるか?」
「はい、いらっしゃいます」
グランが二人に尋ねると二人は返事をし、シルヴィアに声をかける。
すると部屋から何やら騒がしい音が聞こえ、しばらく経つと静かになり、すぐに通せと命令する声が聞こえた。
二人は言われるがままに扉を開き、中へ入るように促す。
グランが中に入ると、シルヴィアはグランを招き入れソファに座らせた。
そしてシルヴィアはグランの隣に座り、尋ねてきた。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
グランが褒美の話をしに来たと言うと、シルヴィアは目に見えて喜んだ。
「明後日に帰るから明日出よう」
グランがそう言うと、シルヴィアは嬉しそうに答える。
「では明日はここでお待ちしております」
グランは男女の逢瀬というが具体的に何をしたいんだと尋ねた。
するとシルヴィアは顔を赤くさせながら、帝国にある観光地に行き、一泊したいと言い出した。
「いや明後日帰るから、一泊は無理だぞ」
グランがそう言うと、シルヴィアは途端に肩を落とし、悲しそうな顔をする。
アンサートーカーが言う。
『マスター、少しくらい遅れても大丈夫ですよ』
(バカ!王国には朝早くから向かうんだ!一泊したら間に合わないだろ!)
『では今から行って一泊すればいいのでは?』
グランは、まあ今日明日は何も予定は入ってないからそれでもいいかと思った。
「シルヴィアは今日と明日は何か予定あるのか?」
「特にございません。私も幻零も今は待機中ですので」
「じゃあ今から行こうか」
そう言うと、シルヴィアは目を輝かせる。
「主様、少しだけお時間をくださいませんか。この格好では外には出られませんので」
グランはシルヴィアの格好を見るが、別におかしいところはない。
ただ、本人がそういうならそうしようと思った。
「じゃあここで待ってるから準備が出来たら言ってくれ」
グランがそう言うと、シルヴィアはかしこまりましたと答える。
そしてグランのあげた転移スクロールでゲートを開け、皇宮の自室へと向かっていった。
前書きの通り、本編200話に到達しました。
ここまで続けられたのは、読者様たちのおかげです。
本当にありがとうございました。
学園編ハーレム編はもう少し続きます。
読者様には、この物語を引き続きお楽しみいただけますよう頑張りますので、よろしくお願いいたします。




