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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第190話:潜入

 帝国のトップである皇族の秘密を知ったグラン。


 そしてSクラスの帝国学園留学も、残り二週間ほどで終わろうとしていた。


 帝国学園は魔導大会の振替休日で、あと二日ほど休みであった。


 この連休を使い、いよいよヴェルシュタット公爵領への潜入を開始することにした。


 決行の直前、グランはシルヴィアと密かに会い、打ち合わせを行う。


「主様、ヴェルシュタット公爵領にはすでに『幻零』が三人待機しております」


 シルヴィアが頼もしい報告をしてきた。


「そうか。気が利くな」


 グランが褒めると、シルヴィアは控えめに首を振る。


「いえ、私からの指示ではなく、幻零たちの自主的な活動のようです」


「そうか。なら、これが無事に終わったら特別に報奨を出そう」


「ありがとうございます」


 シルヴィアは恭しく頭を下げた。


 準備を終えたグランが空間魔法で『ゲート』を開く。


「ご武運を」


 シルヴィアが見送りの言葉を口にすると、グランは無言で片手を上げてそれに応えた。


 そしてゲートをくぐり抜け、ヴェルシュタット公爵領に確保してあるアジトへと転移した。





 アジトに転移すると、急に現れたグランを見て待機していた幻零の三人が驚くが、すぐに片膝をついて挨拶をした。


「お待ちしておりました」


 それは、かつて王国でグランを監視していたあの三人だった。


 グランは「ご苦労」と労いの言葉をかけ、三人に楽にするよう指示する。


「状況は?」


 グランが尋ねると、鑑定スキルを持つ女が口を開いた。


「屋敷は相変わらず警戒を怠っていません。そして警備のものの隠蔽魔法が優れているのか、鑑定をはじかれます。力ずくならなんとか行けそうですが、不安要素が残ったままです」


「そうなのか。あまり無茶をすると、バレた時シルヴィアの政治的な立場が悪化する恐れがある。それはやめておこう」


 グランがそう返すと、今度は男の幻零が尋ねる。


「では、どうなさるおつもりですか?」


「陽動するしかないと思うが、現場を見てきたお前たちの意見を聞きたい」


 すると、もう一人の女の幻零が進み出て答えた。


「難しいかと思います。あそこの警備は何があっても持ち場を離れないようです。しかも、なぜか気配察知の能力が高いのか、あまり近づけません」


「かなり厳重だな」


 グランが思案するように呟くと、女もそれに同意する。


「はい。余程見られたくないものがあるのだと思われます」


「なら、強行突破だな」


 そう結論付けたグランに、男が戸惑ったように尋ねた。


「先ほど、シルヴィア様の政治的な立場がとおっしゃっていましたが……」


 それを聞いて、グランはニヤリと笑う。


「すまん、言葉が足りなかった。お前たち三人は陽動に回ってくれ」


「ですが、それだと持ち場の警備は剝がれません」


 グランは作戦の全容を語り始める。


「屋敷には俺が一人で突入する。三人は屋敷の人間を全員釣り出すように派手に動いてくれ。それなら、あそこの警備しか残らない。残った警備を俺が同時に排除すれば済む。これなら誰がやったかはわからないままだろう」


 それを聞いた鑑定持ちの女が、納得したように力強く頷く。


「わかりました。できるだけ派手に騒ぎを起こしましょう」


「頼むぞ。それと、これを渡しておく」


 グランは三人に、自身が作ったエリクサーと、逃走用の転移スクロールを手渡した。


「これを使えば、魔道具をいちいち割らなくても、すぐにシルヴィアのところに戻れる。騒ぎを起こして屋敷の人間を引き出したら速やかに撤収しろ」


 三人は手渡されたアイテムを見て、思わず冷や汗をかいた。


(これほど貴重なエリクサーと転移スクロールを躊躇なく渡してくるとは……本当に底が知れないお方だ)


 そして幻零たちは作戦の仕込みのため、アジトを出る準備を始める。


「決行は夜になります。準備をして決行前に一度戻ります」


 グランはそれに頷き、真剣な表情で話す。


「無理はするな。自分の命を大切にしろ」


 その言葉を聞いた三人は驚き、鑑定持ちの女が口を開いた。


「私たちが死んでも蘇生魔法で生き返らせてくれたら十分です」


 グランはそれを聞くと、少し真剣なトーンで言葉を返す。


「蘇生魔法は確かに使えるが、あれはやりすぎると、お前たちの魂は輪廻から外れてしまい、最終的に消滅する」


 それを聞いた男が、恐る恐るグランに問いかける。


「それは、具体的にどうなるのです?」


「そもそも蘇生魔法は輪廻に戻った魂を、無理やり現世に戻すんだ。それにより魂にいくらか負荷がかかる。数回程度なら問題ないが、やりすぎるのはよくない」


 そしてグランはこの世界の理を説明し始める。


「生命の死後、魂は輪廻をめぐりそこで癒される。そして次の生を授かり現世に生れ落ちる。だが輪廻から外れれば、現世で傷ついた魂が癒されることがなくなり、生まれ変わることもできなくなる。魂が消滅すれば、それ以降は何物にもなれない。つまり完全に消え去るということだ。これはこの世界で決められたことだ」


『転生者は異世界の魂なので、この世界の輪廻から外れています。だから転生者は死後、生まれ変わることができないのです。ただ、マスターの魂は転生の時に超絶強化されているので死後も消滅せず、そのまま神界に戻ります』


 アンサートーカーが脳内で補足する。


「だから、生きて帰ってくるほうが断然いい。エリクサーももったいぶらずに使え」


 三人は真剣な表情で「かしこまりました」と答え、アジトを後にした。


 グランは夜に備え、体を休めるため、アジト内の寝室で仮眠をとった。





 夕方を過ぎ、夜になるとグランは目を覚ます。


 ちょうど幻零たちがアジトに戻ってきていた。


 グランの姿を確認すると、三人は礼をして報告を始める。


「各所に流言をまいています。内容は『公爵は病気ではなく行方不明だ。』と。そしてその内容を書いた紙をばらまいています。もちろん姿を変え、魔力痕も消していますので足がつくことはありません」


 続いて男が口を開いた。


「この公爵領は以前から度重なる増税で、領民の不満もたまっていたようです。公爵は税収などを国に偽造して報告したことで上納金を減らしており、浮いた金を恐らく研究に回していたのでしょう」


「なるほど。では最後の仕上げはどうするんだ?」


「実はこの街に反公爵派の実力者たちがおります。以前その者たちとコンタクトをとっていましたので、いつでも決起と称して暴動を起こさせるように準備していました」


「さすがだな。お前たちが味方でよかったよ」


 グランがそう言うと、三人は微妙な顔をした。


(((それはこちらのセリフです)))


「合図のほうはどうする?」


「まず誰もいない建物を爆破します。そのあとに暴動を促すよう、公爵の悪政や公爵家のありもしない噂をでっちあげた流言を、魔道具を使って拡散します。これなら誰が言ったのかわかりませんが、うっぷんのたまった領民の中から、反公爵派と共に決起してくれる者も出てくるでしょう」


「なら、それが始まったら俺も屋敷近辺に近づいておこう。そして屋敷の状況を確認してこのアジトを跡形もなく爆破する。お前たちはそれを確認したらすぐに退避しろ」


「かしこまりました。ではここにあるものは今からすべて回収します」


 そして幻零たちは礼をするとアジトにあるものをすべて回収後、アジトから出てそれぞれの持ち場へと散開していった。




 しばらく時間が経った後、グランもアジトを抜け出す。


 黒髪は目立つため変装を施し、領民を装って屋敷近辺に身を潜めた。


 すると遠くのほうから、大きな爆発音が響いてきた。


(始まったな)


『ええ、屋敷をスキャンします』


(頼む)


『スキャン完了。目的地を確認。厳重警備ですね。数は四人。みな相当の実力者です。いや、これは……』


(どうした?)


『マスター、大変です。四人は亜人です』


(なんだと!)


『どうやら研究を引き継いだ公爵家の嫡男は、かなり無茶をしているようですね』


(そんなに早く亜人化できるのか?)


『推測ですが、公爵の研究をどこかで知り、独自に続けていたのでしょう』


(これは……一筋縄ではいかなさそうだな)


『あの亜人たちはどうします?』


(首輪の制御はついているか?)


『ついています』


(なら殺さないでおこう。ただ、しばらくは目が覚めないよう、強力な睡眠魔法をかける)


『かしこまりました』


 公爵の領地があわただしくなり、各地で喧騒が起こる。


 どうやら反公爵派の決起が始まり、不満を持った領民たちも参加しだしたようだ。


 その影響なのか、かなりの人数が鎮圧のために屋敷から出たことを確認すると、グランは身を起こし、仕込んでいた遠隔魔法でアジトを爆破し、素早く屋敷の敷地内へと侵入した。


 屋敷の裏口に辿り着き、人の出入りを見極めてから中へと潜り込む。


 アンサートーカーのナビを頼りに、誰にも見つからず一直線に目的地へと向かう。


 そして長い廊下を抜け目的地に近づいたとき、警備の四人を確認した。


 姿かたちは人間だ。


 しかし、あの親善試合で特待生がつけていた首輪が、首元に見えた。


 グランはアンサートーカーに再度スキャンを命じる。


『全員犬人種ですね。耳と鼻が利くのでご注意を』


(なら遠距離からの攻撃だな)


 グランは少し離れ静かに魔力を練り上げる。


 擬似波動を纏い、気配を察知されないように慎重かつ丁寧にチャージを重ねる。


 そして波動に強力な睡眠魔法をふんだんに付与し、四人に向かって放った。


(圧縮炸裂!)


 ヒューンという鋭い音が響き渡ると、警備の亜人たちは一斉に音のする方へと振り向く。


 しかしそれに気づいた瞬間、波動は彼らの中心で炸裂し、辺り一面を強力な睡眠魔法で覆い尽くした。


 それを受けた四人は即座に崩れ落ち、深い眠りにつく。


 グランはしばらく様子を見て、全員が眠りについたことを確認してから近づいた。


『スキャン完了。首輪は少し機構が変わっていますが、ほとんど同じです。マスター、この首輪はどうします?』


「できれば破壊したいが、今はやめておこう。すべてが終わった後に考える」


 後ろ髪を引かれる思いを抱えながら、グランは厳重な警備が施されていた重厚な扉の前に立った。


(鍵はないのか?)


 アンサートーカーが再度スキャンを開始する。


『スキャン完了。少しお待ちを……解析中……掌握完了。開きます』


 重厚な扉がゆっくりと開くと、そこには地下へと続く階段が現れた。


(かなり深いな。慎重に進もう)


 アンサートーカーが広域スキャンを展開する。


『かなり下まで続きますが、広さはそこまでではありません。生命反応も確認しました。亜人も数人いるようです』


(残りの特待クラスの生徒たちならいいが……それ以外にもいるか?)


『はい。確認したところ六人が亜人です。そのほかは人間です。ただ……』


(どうした?)


『どうしても一人だけ、スキャンしても詳細が見られないものがいます』


 グランはそれを聞き、最大限の警戒態勢をとった。


 今まで、アンサートーカーのスキャンで見られなかったものは存在しなかった。


 相棒(アンサートーカー)はチート級の存在だ。


 それが通じないということは、自分と同じく、この世界の理から外れているものかもしれない。


(まさか……転生者か?)


『以前のアリスティア様の言葉通りなら、転生者はあり得ません。しかし正体はわかりません』


 アンサートーカーの答えは簡潔だった。


 グランは気を引き締め直し、慎重に階段を下りていった。

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