第15話:庭園の出会い
5/26に発表されたAI利用の規定によりこの作品のAI利用状況に関する補足を書き直しました。
6/9以降に実施されるAIの利用に関する項目は改めて設定させていただきます。
【AI利用状況に関する補足】
本作のストーリー、世界観、キャラクター設定、詳細なプロット、セリフの指定はすべて作者自身の手で作成しております。
AIは、作者が書き上げた詳細なプロットを小説の本文として清書・整形するためだけに使用しています。AIに物語の展開やアイデアを自動生成させる使い方はしておりません。
あれから数日が経過したが、エルスメリアに接触する手段は一向に浮かばなかった。
学園の広大な敷地内、遠巻きに眺める三人の弟子たちの姿は、かつて聖域で出会った頃とは似ても似つかないものだった。
彼女たちはおそらくエルスメリアの先が長くないことを聞いているのだろう。
常に、周囲を切り裂くような鋭い殺気と、他者の介入を許さない拒絶の壁を纏っている。
そのあまりに痛々しい姿を見るたび、グランの胸には鋭い棘が刺さるような痛みが走った。
(……これ以上、あいつらにあんな顔をさせておくわけにはいかねえな。あとの生活がどうなろうと、正体を明かして話を通すしかないか)
退学RTAなどと浮かれていた自分はもういない。
そんな重苦しい決意を胸に、グランはふらりと足を向けた。
たどり着いたのは、貴族専用学舎が見える北側に位置する、生徒たちもあまり立ち寄らない静かな外れだ。
だが、その先に広がっていたのは、前世の記憶や、あの過酷な聖域ですらお目にかかれないほど、美しく、そして丹念に手入れされた庭園だった。
「……これは凄えな。学園の中に、こんな場所があったのか」
色とりどりの花々が陽光を浴びて宝石のように輝き、風が吹くたびに甘く、どこか懐かしい香りが鼻腔をくすぐる。
グランはしばし足を止め、毒気を抜かれたようにその光景に見惚れていた。
「お気に召しましたか?」
不意に背後から涼やかな声がし、グランは軽く肩を揺らして振り返った。
そこに立っていたのは、清楚な制服に、どこか凛とした空気を感じさせる女学生だった。
名はレイン。
彼女はエルスメリアの家系であるヴァーミリオン侯爵家に仕えるメイドであり、病床にある主人の学園生活を公私ともに支えるため、特例で共に通学しているのだという。
「ここは、お嬢様が一番大切にされていた場所なんです。……でも、今はこうしてお庭を歩くことも、お花に触れることも叶いませんから」
レインは悲しげに微笑みながら、一輪の青い花を愛おしそうに指先でなぞった。
彼女は毎日、放課後になるとこの庭園を訪れ、その日最も美しく咲いている花を、主人――エルスメリアの待つ病室へと届けているのだという。
グランは彼女と並んでゆっくりと歩きながら、その献身的な話に耳を傾けていた。
彼女の言葉の端々からは、主人に対する深い忠誠心と、それ以上に家族のような深い愛が滲み出ていた。
「これもお嬢様のお気に入りなのですが……残念です」
レインが足を止めた先には、今にも枯れ落ちそうな一輪の白百合があった。
単なる寿命というよりは、土の養分を吸い上げる力が尽き果て、もう回復する見込みがないほど残酷な枯れ方だった。
「……この子はもう、ダメかもしれませんね。……お嬢様に、見せてあげたかったのに。今日は特に、お体が辛そうだったから」
レインの瞳に浮かんだのは、主人の願いを叶えてやれない無念さと、迫りくる「別れ」への恐怖だった。
それを見た瞬間、グランは理屈よりも先に体が動いていた。
かつて自分が運命を捻じ曲げ、その結果として彼女が苦しんでいるのだとしたら。
この目の前の絶望を放置することなど、彼にはできなかった。
「……ちょっと貸してくれないか? まだ、あきらめるには早すぎる。」
グランがその萎れた茎にそっと指を触れる。
瞬間、彼の指先から蒼白銀色の粒子が溢れ出し、花の輪郭をなぞるように包み込んだ。
茶色く変色し、崩れかけていた花弁は瞬時に瑞々しい白銀へと戻り、まるで時間が巻き戻ったかのように凛と咲き誇った。
「え……? あ、あの、今のは……」
レインは驚愕のあまり、手に持っていた剪定バサミを地面に落とした。
現代の回復魔法はあくまで生命体の治癒力を高めるものであり、植物の命の根幹を「蘇生」させることなど理論上不可能だ。
それは神の領域、あるいは失われた古代魔術の類。
だが、聖域で理を超越したグランにとっては、それは枯れた喉を潤すような、ごく自然な行いだった。
「これ、持っていってあげて。その花にこのお嬢様が命の恩人だって言えば、もっと張り切って咲くよ」
驚きで硬直するレインを置いて、グランは照れ隠しに帽子を深く被り、手を振りながらその場を去った。
その日の夜、王都の一角に構えるヴァーミリオン侯爵邸。
静まり返った豪華な病室の窓辺には、疲れ果てた表情で横たわる少女、エルスメリアの姿があった。
月の光を浴びる彼女の肌は透き通るほど白く、呼吸さえも消えてしまいそうなほどに儚い。
「お嬢様、見てください。今日、学園の庭園で素晴らしい方に出会いました。その方が、この子を助けてくださったんです」
レインが静かに差し出したのは、昼間、グランが回復させた白百合だった。
部屋に飾られたどの最高級の花よりも強く、そして神聖な魔力を放ち続けるその一輪を見て、エルスメリアの虚ろだった瞳に、驚きと共にわずかな生気が宿った。
「……綺麗。……ねえ、レイン。このお花、なんだかすごく、不思議。……とっても懐かしくて、温かい匂いがするの……」
弱々しく伸ばされた指先が、瑞々しい花弁に触れる。
その瞬間、花から伝わる純粋な生命エネルギーが彼女の体を駆け抜け、蒼白だった頬に、わずか一瞬だけ、奇跡のように朱が差した。
「お嬢様……! お顔の色が……!」
レインは涙を堪えながら、その奇跡を目の当たりにした。
その後、彼女は廊下で厳しい表情を浮かべて待っていた現当主、ヴァーミリオン侯爵に事の顛末をすべて報告した。
「植物に作用する回復魔法だと……? そんな馬鹿なことが……ありえん」
当代屈指の魔導師でもある侯爵は、部屋から漏れ出る白百合の、あまりに純粋で強大な魔力波動を感じ取り、武者震いに似た戦慄を覚えた。
これは単なる高等技術ではない。
魔法の概念そのものを根底から塗り替えるような、圧倒的な「格」の違いだ。
「レイン、その少年の特徴を詳しく。……もし、その魔法が娘の、あの摩耗しきった『魔力核』にさえ届くのであれば……これは一縷の望みどころではない。神が遣わした唯一の希望だ」
娘を救うため、ありとあらゆる権力と財産を使い果たし、絶望の淵に立たされていた父の眼に、かつてないほど鋭い光が戻る。
しかし、それは慈悲深い光だけではなかった。
「明日の学園が終わったら、その者に会いに行きなさい。事情は話さず、何としてでもここへ連れてくるのだ。……おそらく、それほどの力を持ちながら騒がれていないということは、力を極力隠しているのだろう」
侯爵は冷徹なまでの決意を口にする。
「拒絶すれば、その力を世間に公表すると脅しても構わん。手段は問わない。必ず、私の前に引きずり出してくるのだ」
グランが「正体を明かそう」と腹を括った、その数時間前。彼が無意識に放った情けが、運命の歯車を猛烈な勢いで回転させ始めていた。
もはや隠居などと言っている場合ではない。グランの物語は、一人のメイドと一輪の花を介して、激動の本流へと引きずり戻されていくのであった。
AIに関する詳細が発表されました。
私の場合は清書のみの利用ですがこれが直接利用にあたるとのことです。
無用なトラブルを避けるためにも、6/9に実装されるAI項目に関しては必ず設定いたしますので、よろしくお願いします。数少ない読者様いつも見に来て頂いてありがとうございます。とても感謝しています。




