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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第163話:神聖鍛冶師アルメイダ

「なぜそれを……」


 ディアドラが尋ねると、アルメイダは笑いながら答える。


「親善試合で使っていただろう? 私もあの場所で試合を見ていたからね。去年の親善試合で王国の四聖華が見たこともない魔導兵装を使っていたと聞いてね。今年はぜひ見たいと思っていたんだが、王国で開催すると聞いてわざわざ来たんだよ。それに、毎年この王国建国祭で露店を出していたからちょうどいいと思ってね」


 親善試合を直接見られていたのなら仕方がないと、ディアドラは納得する。


 そして、アルメイダに事情を説明した。


「わたしではなく、兄上の剣を探しているのだ」


「貴女の名は?」


「ディアドラ・ヴァスティールだ」


 その名を聞いたアルメイダは、嬉しそうに微笑んだ。


「王国の次期剣聖、ディアドラ・ヴァスティールとはな。恐れ入ったよ。なら、兄はグリフィスとグレイのどちらかだな」


「兄たちの名前まで知っているのですか?」


 ディアドラが驚いて尋ねると、アルメイダは当然のように答える。


「名のある剣士は、みな名前を覚えているのさ」


 その知識の広さに、ディアドラとグランは感嘆する。


「それで、どっちの兄なんだい?」


「グリフィス兄様です」


「なるほど、ならこれがいい」


 アルメイダはそう言うと、露店に並んでいるものではなく奥の箱から一本の剣を取り出し、ディアドラへと渡した。


 ディアドラが鞘から剣を抜くと、目の色が一変する。


 その剣は、今まで見たどんな武器よりも凄まじい輝きを放っていた。


「これは……」


 驚愕するディアドラに向かって、アルメイダは説明を始める。


「グリフィスは力が強い。なら、並みの剣ではその力に耐えられずに折れてしまう。かといって耐久力ばかりを重視すれば自ずと重くなる。それでは彼のあの素晴らしい剣技の速度が落ちてしまうだろう? この剣に使われている素材なら、その両方の問題を解消できるはずだ」


「すぐに買います! いくらですか?」


 ディアドラが身を乗り出して尋ねると、アルメイダはニヤリと笑みを浮かべた。


「九千八百万Gだ」


 その金額を聞いた途端、ディアドラは完全に固まってしまう。


 グランはすかさず、脳内でアンサートーカーに確認を取った。


(あの剣は、それほどのものなのか?)


『スキャンしましたが、かなりのものです。それにグリフィス様にぴったりですね。値段も相応ですし、むしろ九千八百万Gで済んでいるのが安く感じるほどの逸品です』


(なるほどな)


 グランは相棒の評価に納得し、ディアドラへ小声で話しかけた。


「ディア、ちなみに予算はいくらなんだ?」


「……百万Gだ」


「とてもじゃないが買えないな」


「うむ……」


 ディアドラもうなずき、その剣をアルメイダへ丁寧に返却する。


「わたしの今の持ち合わせでは、とてもじゃないですが買えません。せっかく素晴らしい剣を見せていただいたのに、申し訳ございません」


「ちなみに、持ち合わせはいくらなんだい?」


「……百万Gです」


 ディアドラが恥ずかしそうに答えると、アルメイダは苦笑した。


「さすがにそれじゃあ、この剣は無理だな。それに、ここに並べている他の剣も、最低で三千万Gは必要だよ」


 その事実を知り、ディアドラは絶望した顔で深く落ち込む。


「私の考えが甘かったようだ。せっかく付き合ってもらったのに、申し訳ない」


「俺がお金を出すよ」


 見かねたグランが提案するが、ディアドラはすぐにそれを断った。


「グラン殿に借りてまで買うのは違う。それに、九千八百万Gもの大金をどうやって返せばいいのだ。途方もない金額だぞ」


 しかし、そこでディアドラは急に照れながら、とんでもないことを言う。


「……私を奴隷にしてくれるというなら話は変わるが……」


「バカなこと言うなよ」


 グランは突拍子もない提案を苦笑いで退けつつ、アルメイダへ向き直った。


「何とかならないですか?」


 すると、アルメイダはまさに待ってましたと言わんばかりの表情で、ある条件を提示してくるのだった。


「まあ、ここまで聞いてある程度は予想しているだろう。その魔導兵装の詳細を教えてくれれば、百万Gで売ろう」


 その提案に、グランとディアドラはびっくりする。


 いくらリンク・ウェポンが珍しいからといって、そこまで破格の割引をするとまでは思えなかったからだ。


 しかし、ディアドラはきっぱりと断る。


「これはある人からもらった大切なものです。申し訳ありませんが、誰にも見せることはできません」


 しかし、それを聞いたアルメイダは露店から出てディアドラの前に立つと、先ほどの豪快な態度と打って変わって土下座をして懇願してきた。


「頼む! 後生だ! この武器で足りないなら他のもつける! 頼む!」


 アルメイダは必死な様子でそう言って縋り付いてくる。


 あまりの変貌ぶりにディアドラは唖然とし、グランもびっくりして慌てて声をかけた。


「アルメイダさん、人がいないとはいえ目立ちます。少し落ち着いてください」


 その言葉を聞いてアルメイダはどうにか落ち着きを取り戻し、収納魔法から椅子を取り出して腰掛けた。


 グランたちも同様に用意された椅子に座る。


 そして、アルメイダは自身の想いを語り始めた。


「わたしは自分で言うのもなんだが、帝国最高峰と言われた鍛冶師だ。自分が作ったものが一番だという自負もあった」


 彼女は静かに、しかし真剣な眼差しで言葉を続ける。


「だから、去年その魔導兵装の話を聞いた時は半信半疑だったんだ。亜空間から武器を召喚し、武器が分離したり、見たこともない形状の盾などもあったというからな。聞いた話では、まるで物理法則を無視しているような代物だった」


 彼女は少し間を置いてから、言葉を続ける。


「だが興味は湧いたから自身の目で確かめようと思い、今年の親善試合をわざわざ変装してまで見に行ったのさ。そこで君たちが使っているものを直に見た時、私は人生で一番衝撃を受けたね。あの武器の強度や攻撃力の高さもそうだが、一番は『何を食ったらあんな発想が思い浮かぶんだ』とそう思わせるような規格外の武器だったことだ」


 そこで彼女の表情が、さらに真剣なものへと変わった。


「そして親善試合最後に、セルフィリア殿下が修復された漆黒の魔剣を、あの魔導兵装のように使っていただろう? しかも明らかに誰かが手を加えて、以前よりさらに頑丈で強いものになっていた。どう考えても、その魔導兵装を作った者が手を加えたのだとわかる」


 アルメイダはここで深く息を吐いた。


「セルフィリア殿下の漆黒の魔剣は、私がずっとメンテナンスをしていたからね。折られたと聞いたときはたまげたよ。きれいに真っ二つになっていたからな。さすがに私でも修復できないと思っていたものがきれいに直り、さらに手を加えて強くなっているんだ。その圧倒的な技術は喉から手が出るほど欲しい。何なら、その製作者に弟子入りしたいと思っているくらいさ」


 ディアドラはその言葉を聞くが、グランの顔を見てきっぱりと断った。


「アルメイダ様の気持ちはわかりますが、やはりこれは自分のために作ってくださったもの。その人の気持ちを踏みにじることになります。申し訳ございません」


 アルメイダもその返事を聞き落胆するが、本人もわかっているのだろう。


「すまない、それはそうだな。その技術はまさに一点ものだ。教えてもらおうとしているのが、そもそもの間違いだな。今の話はなかったことにしてくれ」


 ディアドラもすごく申し訳なさそうにしているが、これはグランが自分のためだけに作ったものであり、お金や物では到底代えられないと考えていた。


 しかしここで、グランは思わぬ発言をする。


「詳細は教えられませんが、見せるだけならいいですよ」


 その言葉に、ディアドラはびっくりした。


 そして彼女はグランの手を引き、少し離れて小声で話す。


「グラン殿! アルメイダ様に見せれば、リンク・ウェポンの詳細が知られる恐れがあるぞ!」


「詳細を知ったところで、使っている素材を見たら諦めると思うよ」


 グランがそう返すと、脳内でアンサートーカーが補足した。


『そもそも聖域の素材で作っていますので、再現はほぼ不可能です。それに素材を集めたとしても、鍛冶の他に高度な錬金術と装飾技術が必要です。ただの人間が一生をかけてもたどり着けない領域ですね。まあ、世界最高峰の鍛冶師と錬金術師と装飾職人を揃えれば形だけは何とかなるかもしれませんが、最後の魔石化した宝石をリンクさせるのにはマスターの魔力と魔法じゃないと絶対無理です』


 グランがそれをそのまま伝えると、ディアドラは深く納得する。


「なるほど……アッさんが言うなら間違いないのだな」


 アンサートーカーは忘れた頃にまた「アッさん」と呼ばれて、ズーンと落ち込んでいた。


「俺が見せようか?」


 グランが提案するが、ディアドラは首を振る。


「いや、私の買い物だから私が見せる」


 そうして二人はアルメイダのそばに戻り、ディアドラが告げた。


「詳細を教えることはできませんが、見せることは可能です」


 その途端にアルメイダは笑顔になり、目を血走らせて答えた。


「ぜひお願いする!」


 その凄まじい勢いにディアドラは少し引いてしまったが、早速自身のリンク・ウェポン『白閃』を展開し、ソードビットなども並べてみせた。


 アルメイダはリンク・ウェポン『白閃』を展開したディアドラの周囲を回りながら、その細部を食い入るように見つめている。


『鑑定を使っていますね。しかも高レベルです。製作者がバレますよ』


(製作者の名前がバレても、まさか俺だとは思わないだろ)


『制作者に対して正規の方法で面会を申し込んでも、王国の王家や四侯爵に阻まれて面会すらかなわないでしょうから、チャンスとしたら今しかないですね。どうするんですか、バレた時は?』


(まあ、非合法や力づくで来るなら、神聖鍛冶師が一人行方不明になるだけだ)


 アンサートーカーとそんな物騒な会話を脳内で交わしていると、アルメイダは目を見開き、驚愕の声を漏らした。


「素材自体が伝説級のものばかりだ。それに、鍛冶の技術だけでは絶対に不可能だ。錬金や装飾、そのどれもが最高峰レベルじゃないと無理だ。仮に素材が揃っていたとしても、帝国の最高技術者たちを結集させて、形だけは何とか一つ作れるかどうかのレベルだな。」


 そこでアルメイダは言葉を切り、そして思案しながら話す。


「だが、この魔石化した宝石は何だ? こんな魔法技術、今まで見たこともないぞ。それに空間収納を付与しているようだが、あの出し入れの速度は普通の収納魔法ではあり得ない。実際に目の当たりにして、何とかその技術の一端だけでも知りたかったが……」


 そこでアルメイダは言葉を切ると、ゆっくりとグランの方へ視線を向けた。


「この製作者の欄に『グラン・グラニアス』と出ているが……君はさっき、お嬢ちゃんから『グラン殿』と呼ばれていたな。まさか君が、そのグラン・グラニアスなのか?」


 その言葉を聞いたディアドラは、瞬時に警戒度を大きく跳ね上げる。


 しかしグランはディアドラを優しく手で制すると、一歩前へ出てアルメイダに語りかけた。


「俺の名はグラン・グラニアス。そのリンク・ウェポンを作った者だ」


 ディアドラは、グランが隠さずに正体を名乗ったことに驚く。


 帝国最高峰の鍛冶師が喉から手が出るほど欲しいと言った技術を持つ者が、今まさに目の前に立っているのだ。


 これから何が起こるか、ディアドラには全く見当もつかなかった。


 しかし、それを聞いたアルメイダは、深く納得したように頷きながら口を開く。


「鑑定を使って詳細を見ながら君の名前が出た時、私の中で全てが繋がったよ。去年の親善試合で、セルフィリア殿下の漆黒の魔剣を折った者こそが、その『グラン』という名だったからな」


 そう言って、アルメイダはゆっくりとグランへと近づいていく。


 グランは自分がセルフィリアの魔剣を折ったせいでぶん殴られるのではないかと思い警戒するが、アルメイダは突然グランの両手を強く握り締め、その場に跪いた。


「私を弟子にしてください!」


 あまりの展開にグランはしばらく固まってしまうが、どうにか正気を取り戻してアルメイダに告げる。


「帝国の神聖鍛冶師が王国の人間へ弟子入りしたとあっちゃ、とんでもない国際問題になるだろ」


「大丈夫です。しばらく旅に出ると適当に言っておけば何の問題もありません」


 急に丁寧な敬語で話しかけてきたアルメイダの必死な迫力に、グランは少したじろいでしまう。


 そして、グランは自身の考えをはっきりと伝えた。


「はっきり言おう。弟子入りしたところで、君がリンク・ウェポンを作ることは不可能だ。だから得るものは何もないし、時間の無駄になる。それに、帝国へ俺の技術が流れるのは勘弁してほしいんだ」


 そう突き放されても、アルメイダは顔を上げて力強く訴えてくる。


「帝国の利になるようなことは絶対にしないと約束します! 何でしたら、魔法契約で私を縛っても構いません! ……それに、この魔導兵装を見せてもらったことで、私では到底作ることが不可能だと十分に悟りました。ただ純粋に、あなたのもとで修行がしたいのです。お願いします!」


 アルメイダは全く引こうとする気配を見せない。


 しかし、ここでリンク・ウェポンを収納したディアドラが優しく口を挟んだ。


「グラン殿、アルメイダ様がここまでお願いしているのだから、少しは受け入れてあげてもいいのでは?」


「ディア、どうしてそう思ったんだ?」


 グランが不思議そうに尋ねると、ディアドラは真っ直ぐな目で答える。


「アルメイダ様は、一度口にした約束を破るような人ではない。それに剣士としての私の勘だが、今はただ純粋に優れた師に師事してもらいたいという気持ちだけなのだと思う」


 それを聞いたアルメイダは、深く頷いた。


「まさに、その通りです。職人としてあなたのもとで修業をしたい」


 グランはどうすべきか悩み、脳内でアンサートーカーへ相談を持ちかける。


(どう思う?)


『まあ、マスター次第ですね。雑用が一人増えたと思えばいいのでは?』


(神聖鍛冶師を雑用扱いとか、帝国の人たちが聞いたら卒倒するな……)


 グランは、恐らくここで断ったとしても、彼女はこのままずっと自分たちについてくるのだろうと悟った。


 そして覚悟を決め、アルメイダへ声をかける。


「わかった。弟子入りを受けよう。その代わり、いろいろと仕事はやってもらうぞ。それから魔法契約についてだが、アルメイダの人柄を信頼してあえて結ばないことにする。だから、俺を失望させるなよ」


 それを聞いたアルメイダは、その場で飛び上がるようにして喜んだ。


 すぐさま露店を収納魔法で片付け、彼女は先ほど見せた剣をディアドラへと差し出す。


「お金はいらない。これは私が無事に弟子入りを果たした記念だと思って、持って行ってくれ」


 ディアドラは渡された剣を一旦受け取るものの、申し訳なさそうに断りを入れる。


「さすがに、ただで頂くわけにはいきません」


「いやいや、むしろこちらが代金を払わなければいけないくらい、大きなお釣りをもらったんだよ。お兄さんのグリフィスにもよろしくと言っておいてくれ」


「ディア、ありがたく受け取っておこう」


「グラン殿がそう言うのであれば……」


 ディアドラは納得し、その素晴らしい剣を自身の収納魔法へと大切にしまった。


 そして、グランはアルメイダにこれからの予定を告げる。


「これから王都にある俺の工房へ向かう。ちょうど部屋がいくつか余っているから、当面はそこで寝泊まりしてくれ。ただ、行き道は目立たないように変装をしてほしいんだ」


「わかりました、師匠!」


 アルメイダは嬉しそうに返事をすると、すぐさま変装魔法を展開した。


「では、行きましょう」


 男の格好となり、声までもが完全に男のそれへと変わったアルメイダと共に、グランとディアドラは工房へと向かった。


 王都の工房に着いたグランは、アルメイダに向けていろいろと説明を始めた。


 ここは王族の名義になっているが実質的には自分の所有物であること、そして外部からは認識阻害魔法を使っているため、表向きはただの会員制サロンに見えていることを伝える。


 さらに、施設内にある鍛冶場や錬金場へと彼女を案内した。


 すると、変装を解いたアルメイダは物珍しそうに周囲を見渡す。


「基本は一般的な設備と同じだが、細部がいろいろと違っているんだ。使い方はおいおい教えるとして、まずは部屋に案内しよう」


 グランがそう言って空き部屋へと案内すると、アルメイダは深く頭を下げた。


「たかが弟子に、このような素晴らしい部屋まで用意してくださるとは感謝です」


「今はディアとデート中だから、俺たちはもう出ていくよ。それと、この王国建国祭の間はずっと予定が詰まっているから、次に会えるのは祭りが終わってからになる」


「私も王国建国祭の間は別の宿をとって露店を出しています。なので、それが終わったら改めてこちらへと訪ねてきますね」


 そう言って、グランたちはアルメイダとそこで別れることになった。


 工房を出た後、グランはディアドラと引き続き祭りを楽しんだ。


 そして、いざ帰りの時間になると、ディアドラはグランへしっかりと抱きついて言った。


「とても素晴らしい剣をもらった。すべてグラン殿のおかげだ」


「グリフィスさんにいいプレゼントができて本当によかったね」


「今度、ぜひ私からお礼がしたい」


「そこは特に気にしなくていいから」


「任せろ!絶対に満足してもらえるように頑張る!」


 ディアドラは自信満々に胸を張ると、最後にグランの唇にそっと口づけをした。


「今日は本当によかった!」


 彼女は満面の笑みでそう告げると、手を振って別れていく。


 グランは、突然できた神聖鍛冶師の弟子をこれからどう扱っていこうかと色々考えながら、学園の寮へと戻っていった。

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