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異世界転生~女神に無理矢理転生させられたので、やりたい放題します!~  作者: GSZN
第2章 学園ファンタジー編

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第149話:邂逅

 時は戻り、現在の時間軸。


 聖域の第三層『凪の里』へと降り立った蒼白銀の翼のメンバーたちは、そこに昨日の親善試合で死闘を繰り広げたはずの『帝国の代表生徒七人』がいることに驚愕し、一瞬で戦闘態勢を取り最大限の警戒を向けた。


 だが、七人の少女たちは一行の先頭にいるグランを見つけるや否や、テトテトと小動物のような足取りで嬉しそうに駆け寄ってくる。


 そして彼女たちは、グランの後ろにいる蒼白銀の翼のメンバーたちの存在に気づいた瞬間、ビクッと体を震わせ、そのまま一斉にグランを盾に隠れてしまった。


 だが、いくらグランの体が大きくとも、さすがに女の子が七人も一斉に背後に隠れようとすれば、物理的にまったく隠れきれていない。


 グランからはみ出した七人の頭や体が、おずおずとこちらの様子を窺うようにひょっこりと覗いている。


 さっきまでの緊張感が完全に吹き飛び、蒼白銀の翼のメンバーたちは目の前のあまりにシュールな光景にただただ混乱するしかなかった。


 その奇妙な沈黙を破り、最初に声を上げたのはやはりルヴィリスだった。


「グ、グラン……とりあえず説明して!」


 ルヴィリスが引きつった頬で叫ぶと、グランはどこか暢気な口調で首を傾げる。


「何を説明しようか?」


「まず、なんでここに帝国の生徒たちがいるのかからに決まってるでしょ!」


「ああ、なるほど。わかった」


 素直に頷いたグランはすぐさま魔法を展開し、里の広場へと全員分の椅子とテーブルを用意して、仲間たちへ座るよう促した。


 蒼白銀の翼のメンバーたちは戸惑いつつもそれぞれの椅子へと腰を下ろすが、帝国の生徒七人は頑なにグランのそばから離れようとしない。


 彼女たちはまるで怯えた野生動物のように、グランの体を盾にしてその背後にすっぽりと収まり、警戒の視線を仲間たちへと送り続けるのだった。


 グランは真剣な眼差しで仲間たちを見渡すと、静かに語り出した。


「まず、彼女たちが何者かという詳しい説明はひとまず置いておこう。それを話すには、まだみんなが事前に知っておかなければならない重要な前提知識と歴史がある。……そしてそれを説明するとなると、俺の『本当の正体』を言わなければならない」


 その言葉を聞いた蒼白銀の翼のメンバーたちは、グランが纏う空気が一変したことを肌で感じ取り、ごくりと緊張の唾を飲み込んだ。


 グランの背後にいた帝国の七人も、そのただならぬ空気を感じ取ったのか、ビクッと体を震わせる。


 それに気づいたグランは、背後の生徒たちへ優しく声をかけた。


「怖がらなくていい、大丈夫だ」


 すると、それを見ていたオリヴィアやセルフィリア、そして四聖華たちが一斉にむぅと唇を尖らせた。


「ちょっと!なんでその子たちにはそんなに優しく声をかけるのよ!」


 ルヴィリスたちが嫉妬を込めて叫ぶと、グランは苦笑いして肩をすくめる。


「怯えてるんだから仕方ないだろ。……まあいい、まずは最初の質問に答えよう。まずこの子たちがここにいるのは、昨夜俺が連れてきたからだ。なぜ連れてきたのかといえば――彼女たちを『保護』したからだ」


 その単語を聞いたオリヴィアが、少し引っかかったように眉を寄せる。


「保護、ですか?それはまるで……彼女たちがどこかに捕らえられていたような言い方ですね」


「ああ、まさにその通りだ」


「て、帝国学園がこの子たちを捕らえていたの?」


 セルフィリアが恐る恐る尋ねると、グランは即座に首を横に振った。


「それは違う。帝国の学園長は今回の件に一切無関係だ」


「どうしてそれがわかるの?」


 セルフィリアの問いに対し、グランは昨日の夜に起きた出来事のすべてを淡々と話し始めた。


「昨日みんなと解散した後、一足先に帝国へ戻っていった学園代表の馬車を密かに追いかけたんだ。そこで調べを進めるうちに、この七人が帝国学園に新設された『特待クラス』の生徒だということがわかった。」


 グランは、いったん言葉を切り、そしてまた話を続ける。


「そして、その特待クラスを皇帝に進言して強引に作らせた黒幕こそが……帝国のヴェルシュタット公爵だった。公爵はずっと昔から非道な改造兵士の研究を続けており、学園という場所を隠れ蓑にして彼女たちを実験材料にしていたんだ。今回の親善試合も、ただその改造兵士の実戦データを収集するためだけに出場させていた」


 グランは昨日のことを思い出したのか、わずかに声が低くなる。


「だから俺は、奴らが帝国へ帰る途中の夜の森で野営しているところを単独で襲撃した。そこに保管されていた研究資料や魔道具、実験装置はすべて俺が奪い取った。……現場にいた研究員は、一人残らず皆殺しにした。そして黒幕である公爵の四肢を切断し、終幕のとどめを刺そうとした時――第一皇女の隠密部隊が接近してきた。処刑を見られるリスクや俺がそこにいた事実を知られるよりも、この子たちの保護が先決だと判断して、凪の里へ皆を連れて転移した。……これが昨夜の顛末だ」


 グランはまるで日常の出来事でも報告するかのように、あまりにさらっとすべてを説明した。


 だが、その口から飛び出した「研究員を皆殺しにした」「公爵の四肢を切断した」という凄惨な事実を知り、蒼白銀の翼のメンバーたちは息を呑む。


 グランという男が、敵対する存在に対してはいかに容赦のない怪物であるかを改めて思い知り――そして彼が本当に『人殺し』をしたのだという事実に、全員が強い不安を覚えた。


 仲間たちの間に漂ったその重い空気を察知し、グランは自嘲気味に口を開く。


「そうだ、俺は人を殺した。……だから、俺に対して憧れとか尊敬とか、そういう綺麗な感情はもう捨ててくれて構わない。一度汚した手は、これから先どれだけ洗ってもずっと汚れたままだからな」


 グランのそのあまりに冷たく突き放すような言葉に、蒼白銀の翼の全員がただただ押し黙るしかなかった。


 重い沈黙が続く中、ソフィアが静かに言葉を発した。


「グラン様……研究員を皆殺しにしたと仰っていました。それは、どうしても必ず殺さなければならなかったのですか?」


 グランはその問いを至極真っ当なものだと受け止め、真摯に答える。


「ソフィ、殺す必要があったのかと問われれば……世間一般的には『そこまでする必要はない』と思うだろう。だが、俺の考え方は違う。研究員を法の名のもとに裁いたとしても、生きていれば彼らの頭の中にある研究資料や知識はどんな形であれ必ず残る。それこそ研究員が記憶していれば、いずれ技術を復旧させ、引き継ぐ者が未来に現れるかもしれない。」


 グランは一旦言葉を切り、一息つくとまた話しだす。


「それに資料などを残していれば欲深いものがこの研究を利用することもできる。......この非道な研究技術は、存在そのものを根こそぎ抹消しなければならないものなんだ。話は戻るが、なぜ俺がそこまで徹底したのかを知るには、事前に知っておくべき世界の知識と歴史がある」


 グランは仲間たちを見渡し、一つの選択肢を提示する。


「どうする?先にその前提知識と歴史を知るほうがいいか?」


 その問いかけに、エルスメリアがただちに発言した。


「さっきの言い方だと……その歴史を知ることは、グラン君の『本当の正体』を知るということになるけれど、それも含まれるの?」


「ああ、そうだ」


「なら、それを知るほうが話は圧倒的に早いということだな」


 ディアドラが確認するように言うと、グランも静かに頷く。


 ベアトリクスやマルクたちも互いに顔を見合わせて覚悟を決め、ルヴィリスが一歩前に出て告げた。


「もうここまで来たら、すべてを聞かないと絶対に納得できないわ。グラン、あなたのすべてを話して!」


「……わかった。なら、みんなに今から来てもらう場所は、俺の『始まりの場所』だ」


 そう告げると同時に、グランは虚空を切り裂き、聖域・第四層へと繋がるゲートを開いた。


「今から、聖域第七層に向けて踏破しながら行く。みんなには俺が今から特殊な魔法をかけるから、俺の後ろについてきてくれ」


 その言葉を聞いた瞬間、蒼白銀の翼のメンバーたちは驚愕に息を呑んだ。


 聖域第四層は、かつての夏合宿にて侯爵家の四人が命がけで踏破した場所。


 第五層は美しいリゾート地であり、第六層はリンク・ウェポンに埋め込まれた宝石がドロップする超高難度領域だと聞いていた。


 だが、『第七層』に関しては誰もが存在すら聞いたことがなく、まったく想像のつかない未知の領域に全員が強い不安を覚える。


 その張り詰めた空気に耐えかね、一年生のトレースが震える声を上げた。


「せ、先輩……!第七層に出現する魔物の強さは、いったいどれくらいなのですか?」


「第四層のボスを単独で瞬殺できるくらいの実力がないと、第七層では足を踏み入れた瞬間に一瞬で殺される」


 グランがあまりに平然と答えたため、メンバー全員の背筋にどっと冷や汗が伝う。


「そ、そんな場所に私たちが同行すれば……一瞬で命を落としてしまうのでは?」


 クローディアが顔面を蒼白にして尋ねると、グランは優しく微笑んだ。


「だからこそ、俺が今から魔法をかける。この魔法はいわば『観光案内用の特殊魔法』だ。聖域の魔物からの物理的・魔術的な攻撃をすべて無効化する。こちらの攻撃も届かないしドロップ品も拾えないが、本当に安全に『見るだけ』ができる。……ただ一つだけ聞いておくが、いつか自分の実力で第七層まで自力到達したいというプライドがあるなら、無理に連れて行かない。前提知識はここでの口頭による説明にするが、どうする?」


 グランの問いかけに、場がわずかな間だけ押し黙る。


 その静寂を破り、最初に声を上げたのはセルフィリアだった。


「私はついていくわ。帝国の皇族として……あのヴェルシュタット公爵が犯した罪と、それがあなたをどれほど激怒させたのかを、この目で正しく知らなければならない。責任を取ると言った以上、私はあなたのすべてを知る義務があるわ!」


 セルフィリアの覚悟を聞きグランがうなずくと、それと同時に四聖華たちも声を上げる。


「私たち四聖華はあなたに命を救われた。なら、あなたが何者なのか知る必要がある」


 その気高き覚悟を聞き、マルクたち平民出身のメンバーたちも顔を上げて続いた。


「セルフィリア様の言う通りだ!もうここまで来たんだ、俺たちもお前が背負ってるものにどこまでもついていくぞ!」


「当然よ。あなたに助けられて生きながらえた私も、王国の王女としての私も、本当のあなたを知らなければならない」


 オリヴィアが力強く頷き、ベアトリクスや一年生たちも次々と覚悟の決まった表情で同意を示す。


「……みんな、ありがとう。なら魔法をかけよう、『アストラルシフト』」


 グランが静かにその名を詠唱すると、蒼白銀の翼のメンバーたちの全身が神秘的な光に包まれ、やがてその輝きがすっと体内に溶けていった。


 グランが自身の背後にいる帝国の七人も含め、全員を見渡して解説する。


「今、お前たちの肉体は次元をわずかにずらし、『アストラル界』へと突っ込んでいる状態だ。現実に干渉して見ることはできるが、あちらの物質には何も触れられないし、向こうからも絶対に触れられない。いわゆる完全無敵の干渉不可状態だな。これなら聖域の魔物からどれだけ超絶的な攻撃を食らってもダメージはゼロだ。……ただ、物理判定が消えてるからドロップ判定も完全にゼロだがな」


 そのあまりに理外を超えた神話級の魔法理論を聞き、蒼白銀の翼のメンバーたちは深い畏怖の念を抱く。


 そして、そんな世界のルールそのものをいとも簡単に書き換えてみせるグランという男の凄まじさを、全員が肌で再確認するのだった。


「そして、今こうしてアストラル界に入った状態の全員になら……普段は絶対に知覚できない、俺のすぐ傍にある『実体』が見えているはずだ」


 グランが自身のすぐ横の空間へと視線を向ける。


 言われるがままに蒼白銀の翼のメンバーたちが目を凝らすと、そこには――グランの肩口のあたりを優雅にプカプカと滞留している、透き通った美しい蒼色のスライムの姿があった。


「まず紹介しよう。……俺の始まりからずっと連れ添っている、唯一無二の相棒『アンサートーカー』だ」


 グランの紹介と同時、その不思議な蒼いスライムがぷるんと体を揺らし、流暢な人語を発した。


『皆様、初めまして。……改めましてご紹介にあずかりました、アストラルスライムのアンサートーカーです。普段はマスターの全般サポート、兼ツッコミ役として誠心誠意活動しております』


「おい、その最後のツッコミ役っていう情報は完全に余計だろうが」


『事実を述べたまでです。普段から隙あらばボケたり面倒を避けて逃げ出そうとするマスターとの関係を、皆様へ正確に共有しただけですが何か問題でも?』


「お前なぁ……せっかくのシリアスな空気を初手でぶち壊すな」


『どの口が言っているのでしょうか。親善試合の大将戦を盛大にぶち壊した張本人が』


「この野郎......」


 あまりに容赦のないスライムのカウンターに、グランが渋い顔で押し黙る。


 さっきまで「人殺し」「世界の歴史」といった重すぎる空気に絶望しかけていた蒼白銀の翼のメンバーたちは、最強であるはずのグランがいとも簡単に言い込められているその気の抜けたやり取りを見て、思わずふっと肩の力を抜いて笑みを零すのだった。

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