第105話:赤い薔薇
修練場の中央でグランとグレイが向かい合うと、グランはスッと手を挙げ、周囲に聞こえるように発言の許可を求めた。
ヴァレンタイン侯爵が頷いて許可を出すと、グランは冷たい声で問いかける。
「先ほど『どちらかが死ぬまで』とおっしゃいましたが、それはこのグレイ様が死ぬまでという意味でしょうか? それとも、指示を出したアルフレッド様が死ぬまでという意味でしょうか?」
その言葉を聞いた瞬間、事の重大さを理解しているヴァレンタイン侯爵夫妻と四聖華たち、そして王女は「本当にやばい」と顔を青ざめさせて焦り始めた。
グランのその問いは、彼が公爵家次男であるアルフレッドを殺すことに一切の躊躇がないと宣言しているも同義だったからだ。
グランはヴァレンタイン家を含む王国の四侯爵やオリヴィア王女に対しては、確かな信頼を置いてくれているが、それ以外の貴族に対してどこまで容赦するのかは完全に未知数である。
しかも今回は明確な敵意を向けられた決闘の場だ。
四聖華たちや王女は、いつぞやの王女の側近を一方的にボコボコにした凄惨な場面や、修練会の時にアルフレッドの身内であるヴィクトール・グレイシアを脅して完全に黙らせたグランの無茶を思い出し、冷や汗を流すのだった。
しかしセルフィリアは、なぜそんなに焦っているのか王女に小声で聞くと、グランが以前貴族に対して行った一部始終を話し、それを聞いたセルフィリアは「グランも意外と激しいところあるのね」と、苦笑いする。
グランのその発言に、観客である貴族たちは一斉に失笑をこぼした。
下賤な平民が、剣聖にも迫るほどの実力を持つ騎士に勝てるつもりでいるのかと嘲笑う。
中には彼があの蒼白銀の翼のトップであるという話を持ち出し、「あの修練会のトップなら少しはまともな勝負になるのか」と囁く者もいたが、「所詮は学生レベルの話だ」と一蹴されていた。
そんな中、自分が負けることを大前提として話を進めるグランに対し、グレイは静かな怒りを覚えていた。
「これは代理決闘というやつだ。依頼主であるアルフレッド様が死ぬことはない」
「わかりました。それなら、決闘の結果によってアルフレッド様にも呑んでもらう条件を決めてもいいでしょうか?」
グレイが「それは先ほどヴァレンタイン侯爵が提示しただろう」と返すものの、グランは首を横に振る。
「いえ、それはルーク様が負う責任です。アルフレッド様は何も責任を負っていませんよね。勝とうが負けようが、ご自身には何の損もないわけですから」
それを聞いたアルフレッドは「平民ごときが何を屁理屈をこねている!」と怒鳴るが、ここでヴァレンタイン侯爵夫人が口を開いた。
「確かにそうね。アルフレッド様、この度我が娘の誕生日会にてこれほどの騒ぎを起こしたのですから、外聞も含めて責任は取るべきです。もし取らないというのであれば、我がヴァレンタイン侯爵家は正式にグレイシア公爵家へ抗議をいたします。もちろん、王家も含めてです」
王家という言葉が出たためオリヴィア王女が発言する。
「此度の騒動はわたくしが責任をもって証言することをお約束します」
夫人の『王家を含めて』という言葉とオリヴィア王女の証人になるという言葉に、アルフレッドは少し怯むが、グレイが負けるはずはないと高を括って鼻で笑う。
「わかった。仮にその平民が勝てば、今後はルヴィリス嬢に一切近づかないと約束しよう」
「……それだけじゃ足りないんじゃないですか?」
グランの冷たい声に、アルフレッドは「平民が喋るな!」と再び激昂する。
しかし、グランはさらに強い口調で言葉を叩きつけた。
「俺もグレイ様も命を懸けて戦うんだ。それなのに、お前はルヴィリス様に近づかないだけか? 人のこと舐めるのもいい加減にしろ、クソガキが。自分の命も張れない甘ちゃんが、権力を振りかざして好き勝手するな!」
「なんて口の利き方だ!」と周囲の貴族たちが非難の声を上げるが、グランは圧倒的な殺気を放って彼らを黙らせた。
「黙れ! 権力を振りかざして平民をいたぶるような奴らは、今から始まる決闘を見て思い知れ! アルフレッド、俺の条件はこうだ。俺が勝てば、お前は俺に死ぬ寸前まで殴られること。それが条件だ」
その言葉にアルフレッドは激しく逆上し、「平民ごときが舐めるな!」と叫んでその条件を呑んだ。
一連のやり取りを聞いていた四聖華たちと王女と皇女、侯爵夫妻は揃って絶望的な顔で頭を抱える。
さすがのヴァレンタイン侯爵夫妻も、グランがここまで言うとは思っておらず「考え直せ」と説得しようとするが、グランは「侯爵夫妻に悪いようには致しませんから」と揺るがなかった。
グレイがアルフレッドへ視線を向けると、彼はすでに興奮が収まらない様子で命令を下す。
「必ず殺せ! それもただ殺すのではなく、手足を切り落として苦しませながら殺せ!」
その非情な命令を聞いた四聖華たち、特にディアドラは『兄上がダルマにされてしまう!』と震え上がり、「兄上!」と悲痛な声を張り上げた。
しかし、グレイは妹が自分を応援してくれているのだと勘違いし、手を挙げて『わかっている』とでも言うような頼もしい素振りを見せる。
ディアドラはもう何を言っても無理だと諦め、ただ心の中で二人の無事を必死に祈るのだった。
修練場の中央で、グランとグレイは静かに向かい合った。
観客の貴族たちは、この無礼な平民が凄惨な目に遭う瞬間を今か今かと待ちわびている。
反対にルヴィリス、侯爵夫妻、四聖華の三人、王女と皇女はどうか無事に終わってくれと必死に祈っていた。
いざ立ち会うという時、グレイは武器を持たないグランに不審げに確認する。
「武器はないのか?」
「俺の戦闘スタイルは無手ですから。……逆に聞きますが、俺について何かお聞きになっていますか?」
「去年の魔導大会の覇者だということくらいはな。そこそこやるようだが、所詮は平民部門のお遊びだろう?」
「いえ、貴族部門の覇者です」
「……なら、あそこにいる四聖華たちの誰に勝ったというんだ?」
「全員です」
その答えにグレイは信じられないという顔をしたが、ただのハッタリだろうと決めつけた。
そして、ヴァレンタイン侯爵が厳かに開始の合図を下す。
グレイは剣を構えてグランの出方を窺うが、その立ち姿に全く隙がないことに強い違和感を覚えた。
(貴族部門の覇者というのも、あながち嘘ではないのかもしれないな)
相手が少しはやるようだと判断したグレイは、一瞬で距離を詰め、神速の突きを繰り出した。
しかし、グランはそれを紙一重の動きで完全に躱してみせる。
「今の動きが見えていたのか……?」
驚いて問いかけるグレイに対し、グランは何も答えず静かに見据えるだけだった。
グレイは気を取り直し、今度は二連続の鋭い突きから袈裟斬りへと繋ぐ連撃を繰り出す。
だが、グランはそのすべてを最小限の動きで紙一重に躱し切ってしまった。
グレイはここで確信する。
自分の剣の軌道が、彼には完全に見切られているのだと。
そして同時に、自分がとんでもない化け物と死合いをしているのだと痛感させられた。
しかし、一度受けた決闘である以上、代理人として、貴族として、そして兄として逃げるわけにはいかない。
ふと視線を向けると、妹のディアドラが決闘の行方を見ようともせず、ただ目を閉じて祈り続けていた。
それはまるで、この勝敗が最初から決まっていると知っているかのような姿だった。
「グレイ様、あなたはディアドラの兄上です。個人的な思いとしては、あなたに対して攻撃をしたくありません。ここで棄権していただけませんか?」
グレイはその言葉に激昂し、「たかが数回躱しただけで自惚れるな!」と本気で斬りかかってきた。
目にも止まらぬ鋭い剣さばきに観客の貴族たちは歓声を上げるが、その刃はグランに全く当たらない。
グランは再度グレイに確認する。
「あなた様ほどの実力者なら、私との差は嫌でもお分かりになったはずです。どうかディアのために、負けを認めてくれませんか?」
「俺は貴族として、騎士として、剣士として、そして兄として、ここで退くわけにはいかないのだ!」
グランは最後通告のつもりだったが、それが無駄に終わったことを嘆き、グレイに向けて静かに言い放つ。
「チャンスは何度も申し上げました。……もう何も言いません」
その瞬間、グランの全身から圧倒的な蒼白銀の魔力が漏れ出し、静かに構えを取る。
「グラン!やめて!」
悲痛な声で叫ぶディアドラに「心配するな」とだけ告げると、グランは一気にグレイの懐へと肉薄した。
グレイはわずかに反応して剣を振り下ろすが、グランはその刃を『ソードブレイク』を片手で発動し軽々と掴み、そのままへし折ってしまう。
グレイが唖然としたのも束の間、気がついた時にはグランの拳が目の前まで迫っていた。
防御など間に合うはずもなく、拳を叩き込まれたグレイは修練場の端まで一直線に吹き飛ばされる。
その瞬間、修練場は水を打ったように静まり返り、観客の貴族たちはただ呆気にとられていた。
一方、四聖華と侯爵夫妻はこれで無事に終わったのだと心から安堵する。
ディアドラは、グランがちゃんと手加減をしてグレイを殴り飛ばしてくれたことに感謝し、すぐさま修練場へと走り出した。
「兄上!」
呼びかけてもグレイは完全に気絶しており、ディアドラは大声を放って「決闘は決着しました! これ以上戦う必要はありません!」と叫ぶ。
ヴァレンタイン侯爵もこの機を逃さず、「勝者、グラン!」と高らかに宣言した。
四聖華や王女、皇女たちは一斉にグランの元へ駆け寄り、特にルヴィリスは人目も憚らずグランに抱きついて大泣きし始める。
一方、アルフレッドの傍らにいたルークは『話が違う!』と内心でパニックに陥っていた。
アルフレッド本人も、まさかあのグレイが負けるとは思っておらず唖然としていたが、急に「今のは無効だ!」と喚き出す。
それを見た観客の貴族たちは皆それぞれに困惑するが、ヴァレンタイン侯爵は冷酷に告げた。
「見ての通り、決着はついた。ルーク、これよりお前の次期侯爵の座を白紙に戻す。そしてアルフレッド様、約束通り決闘の責任を取っていただきます」
グランがゆっくりとアルフレッドに近づいていく。
「だ、誰か!」
アルフレッドが叫ぶが、周囲の貴族たちはグランの恐ろしい強さにビビって全員が目を逸らした。
ヴァレンタイン家の衛兵たちも、グランとルヴィリスの深い関係を熟知しているため、当然のようにアルフレッドの命令を無視する。
そしてアルフレッドの目の前までやってきたグランは、「さあ、修練場の真ん中まで来てもらいましょうか」と冷たく言い放った。
グランは暴れて抵抗するアルフレッドの腕を容赦なく掴み、強引に修練場の中央へと引きずり出すのだった。
ヴァレンタイン侯爵は、グランが本当に公爵家次男であるアルフレッドに対して容赦なく力を振るうのであれば、王国貴族として止めねばならないと考え、密かに魔力を練っていた。
しかし、侯爵夫人は夫の腕をそっと取り、静かに首を振る。
「ここはグランに任せましょう」
侯爵は妻の言葉を信じ、魔力を収めて成り行きを見守ることにした。
修練場の中央へ引きずり出されてもなお、アルフレッドは喚き散らしていた。
「公爵家である私の命令が聞けないのか!」と周囲の貴族たちに叫ぶが、誰一人として助けに入ろうとする者はいない。
そこへグランが再び近づき、冷酷な声で事実を突きつけた。
「お前が偉いんじゃなくて、お前の親が偉いだけだ。勘違いするな。所詮、公爵家という肩書がなければお前はその程度の存在にすぎない。平民にすら舐められているような奴のために、命を懸けて守ってくれる者などいるわけがないだろう。誰も口にしないだけで、お前など命を懸ける価値もないと思われているだけだ。これが現実だ。……二度と俺たちに近づくな」
言い放つと同時、グランは少しだけ本気を出し、覇気を放った。
その凄まじい覇気に当てられ、観客の貴族たちの中には白目を剥いて失神する者や、恐怖で腰を抜かして立てなくなる者が続出する。
その場にいた四聖華や王女や皇女、侯爵夫妻でさえも、その底知れぬ圧迫感に本能的な恐怖を覚えたほどだった。
殺気を至近距離で浴びたアルフレッドは、恐怖のあまり失禁し、そのまま泡を吹いて気絶してしまった。
グランは冷ややかな視線をルークへと向ける。
「ルーク様。お連れ様がお帰りのようです。お見送りをお願いできますか?」
その言葉を受けたルークは、恐怖で腰を抜かしたまま地を這うようにアルフレッドへと近づいた。
そして、アルフレッドの汚れなど気にする余裕すらなく彼を担ぎ上げると、半狂乱になりながら逃げるように修練場を後にするのだった。
ヴァレンタイン侯爵がパンパンと手を二回ほど叩き、「さあ、余興は終わりだ。今日は我が娘の誕生日である。皆、会場へ戻ろう」と声を上げて場を取り仕切った。
少し落ち着きを取り戻した貴族たちも、その声に従って一斉にパーティー会場へと戻っていく。
ルヴィリス、エルスメリア、ソフィア、オリヴィア、セルフィリアは、気絶した兄を心配そうに見つめるディアドラに寄り添い、「どうしようか」と相談し合っていた。
すると、侯爵夫人が衛兵に「休める部屋を用意して、そこに彼を寝かせておきなさい」と指示を出し、娘たちに会場へ戻るよう促した。
皆が去った後、最後に残った侯爵夫妻はグランに近づき、息子であるルークが迷惑をかけたことを謝罪して「今回はこれで許してくれないか」と頭を下げた。
「侯爵様たちは何も悪くありません。俺こそ、ここまで騒ぎを大きくしてしまって申し訳ありませんでした」
グランが謝罪を返すと、侯爵は優しく首を横に振る。
「決闘を受けたことに関しては何も咎めるつもりはないし、むしろルヴィリスのために受けてくれたのだとわかっているから心配するな。当然不問とする。……しかし、これであの娘はお前に対して余計に夢中になるだろうな」
「圧倒的な実力差で相手にならないとわかっていても、愛する者のために命を懸けて戦う姿はとても良かったわよ。ルークの次期侯爵の話も白紙にしちゃったし、いっそルヴィリスと結婚してあなたがヴァレンタイン侯爵になってもいいのよ?」
「……それだけはどうか勘弁してください」
「ふふっ、あら、結構本気で言っているのよ? まあ、これ以上言ったらあなたを困らせるだけだからやめておくわね」
侯爵夫人は悪戯っぽく微笑み、グランを気遣って話を締めくくった。
会場に戻ったグランが「少し食事がしたい」と相談すると、専用の席が用意され、そこで四聖華たちと王女、皇女と一緒に食事をしながら雑談を始めた。
グランはディアドラに対して先ほどの件を謝罪したが、彼女は「兄上が悪いのです」と気に留めず、むしろ「手加減してくれて本当にありがとう」と深く感謝を伝えてきた。
その後、和やかな雰囲気のままダンスの時間へと移る。
当然のように、ルヴィリスは一番初めの相手としてグランを選び、三曲続けてダンスを楽しんだ。
それを見ていた貴族たちは、圧倒的な力で公爵家次男や剣の達人を退けたグランに対して、もう何も言うことができなかった。
そして、無事に滞りなく誕生日会は終了する。
グランが四聖華と王女と皇女を見送り、そして目を覚ましたグレイは命を取らなかったことに深く感謝し、「ディアドラのことを頼む」とグランに言い残した。
ディアドラは「もう、兄上!」と恥ずかしそうに抗議しながら、そのまま一緒に帰っていった。
自室に戻ったグランが着替えを終え、寝る準備をしていると、ふいにドアをノックする音が鳴る。
(まさか……)
嫌な予感を抱えながらドアを開けると、そこにはやはり寝間着姿のルヴィリスが立っていた。
『ふふっ。今日は燃え上がるような夜になりますね』
アンサートーカーが楽しげにおちょくってくるのを聞きながら、グランは「ここまで外堀を埋められているなら、襲われるのも時間の問題だ」と心の中で嘆く。
ルヴィリスは部屋に入るなり、自然な動作でグランのベッドに腰掛けた。
そして、今日の出来事や弟のルークの振る舞いについて深く謝罪をしてくる。
「俺のほうこそ、誕生日会をぶち壊してしまってすまなかった」
「ううん、あなたは何も悪くないわ、ルークに関しては侯爵家がちゃんと責任を取るから」
そこで思い出したように、グランは「そういえばプレゼントがあるんだ」と切り出した。
「ちょっと、プレゼントはもういらないって言ったでしょう?」
「そんな大したものじゃないから受け取ってくれ」
グランがそう言って収納魔法から取り出し手渡したのは、美しい赤い薔薇の花束だった。
「誕生日おめでとう、ルヴィ」
突然差し出された赤い薔薇にルヴィリスは驚いたが、すぐに喜びの感情が溢れ出し、グランに強く抱きついた。
「ちなみにそれ、聖域に咲いていた赤い薔薇で、永遠に枯れない花束なんだ」
その言葉を聞いた瞬間、ルヴィリスはピタリと固まった。
「……十分とんでもないものじゃないの」
呆れ返るルヴィリスだったが、ふと顔を赤らめて上目遣いになる。
「これって、永遠に枯れないってことは……私を永遠に愛してくれるってこと?」
「いや、単純に『赤』だからルヴィに似合うと思って渡しただけだぞ」
恥ずかしそうに尋ねるルヴィリスに対し、グランが一切の遠慮なく事実を口にする。
「もう……本当に乙女心がわかってないわね」
ジト目になって呆れつつも、ルヴィリスは花をもらったことに深く感激しており、そのままスルスルとグランのベッドへ潜り込んだ。
「去年は結局何もしなかったけれど、今年はどうなのかしらね?」
挑発的に微笑むルヴィリスに、グランは冷静に突っ込む。
「いや、去年俺が寝ている時にキスしただろ」
「なっ!? なんでバレてるの!?」
「なんか、四聖華全員がそうしたって聞いたからな」
その事実を知り、ルヴィリスは顔を真っ赤にして頭を抱え込んだ。
少し気まずい空気が流れた後、グランは意を決して真剣な声で口を開く。
「……今はまだ手を出すのは無理だし、誰か一人を決めるのも無理だ」
ルヴィリスは少し悲しそうな表情を浮かべ、「わかっているわ」と頷いた。
「今は、これしかできない」
グランはルヴィリスをそっと抱き寄せると、そのまま優しくキスをした。
突然のことにルヴィリスは驚いて体を強張らせたが、次第に体の力が抜け、その甘い口づけを受け入れる。
やがてゆっくりと唇を離すと、ルヴィリスは潤んだ瞳でグランを見つめた。
「今日はいろいろあったし、ルヴィも疲れただろう、もう寝ようか」
グランがそう言って腕を差し出すと、ルヴィリスは心底嬉しそうに微笑み、その腕に頭を乗せてしっかりと抱き着いてきた。
グランもルヴィリスの温もりを感じながらそのまま深い眠りにつくのだった。




