第45話 大好きなキミへ
私の力は私に関係する”全て”の感情が容赦なく聞こえてきてしまうモノ。
そう、思っていた。
「(真面目で知的な印象を残す眼鏡姿が好きすぎる。格好つけて変にオシャレ要素を取り入れない所がまた良いんだよな。ミキティの大きくて可愛い瞳を邪魔しないシンプルなデザインの眼鏡最高すぎ。きっとコンタクトでも似合うんだろうけど、俺は断然ミキティwith眼鏡派だ)」
広井君が眼鏡好きなのは知っていたけど、そういう理由だったんだ。
知らなかった。
どうやら私の能力は心の中の言葉を全てを伝えてくれていたわけではないみたいだった。
「(は~、好きだ。こんなにも理想的な女性は絶対に二度ともう出会うことはないだろうな。ミキティの小柄なフォルムもマジでたまらん。本人は背が低いことを気にしていたけど普通に長所だから。背が低いってことがモテ要素だってことどうして気づかないかなぁ。まぁ、小さいことを気にしてたまに背伸びしようとする姿も俺を萌えさせてくれるのだけど)」
ち、チビが長所?
中学時代は私がちっちゃいことを罵倒してきたクラスメイトが居たけど、小柄な方がいいって思ってくれる男子もいるんだ。
う、嬉しいかも?
「(声も好きすぎるんだよなぁ。清涼感ある声しているから聞いていて心地良いんだ。その綺麗な声で名前を呼ばれるとマジでドキドキしてしまう。『広井くん』って呼ばれる度に心が躍っていることをこの子は今初めて知ったんだろうな)」
今初めて知ったよ!?
こ、声まで好きだったなんて初耳だった。
ていうか声を褒められたことなんて初めてだった。
嬉しすぎて頬が紅に染まってしまう。
「(好きになったキッカケは俺の好みドンピシャな見た目だったけど、キミの内面を知ってもっと好きになった)」
内面……って。
ビビりで根暗な私に魅力なんて……
「(内気で恥ずかしがり屋な姿が小動物みたいで可愛かった。最初に抱いた印象はそんな感じだった)」
保護欲みたいな感じ……かな?
それって子犬や猫に抱く好きと同種のものなのでは……?
「(恥ずかしがり屋のキミが俺に対してだけは無警戒に話しかけてくれたよな。クラスに打ち解けていない俺をカラオケに誘ってくれた。いつも当たり前のように俺とお昼を一緒に食べてくれた。俺の部屋に行きたいって言ってくれた。そんなの……好きになるに決まっているだろ!)」
広井君と友達になりたくて私はアプローチを頑張った。
その効果は友達以上の感情を彼に植え付けていたようだ。
まぁ、私もそれを狙ったところはあったけど……
「(君の顔が好きだ。キミの声が好きだ。俺にだけ見せてくれる笑顔が好きだ。内気なのに俺には懐いてくれる所がたまらなく好きだ)」
「あ……あ……」
桃色の感情が大波のようになって私を飲み込んでいく。
彼の気持ちは知っているつもりだった。
でも私が知っていたのはほんの一欠片だけだったみたいだ。
「ミキティ。言うのが遅くなってごめん——」
広井サトルくんはこんなにも——
「キミのことが好きだ。ずっと……ずっと俺と一緒に居てほしい」
こんなにも氷室未希のことが好きなのだということを——
「俺の淀みのない気持ち、伝わったよな?」
私は今日初めて知ったのだ。
「もぅ……! 私の負けだよ! もうもうもう……!!」
涙を拭いてくしゃくしゃな笑顔を浮かべる。
その顔はきっとお世辞にも可愛いとは言えないボロボロな笑顔だったと思う。
でもいいんだ。
私は知っている。
キミはそんな私の笑顔も好きになってくれるということを。。
「広井君!!」
ダッと広井君に詰め寄り、彼の背中に手を回す。
泣き顔を彼の胸に埋めた。
もう逃げない。
私の力を知っても尚、私を好きと言ってくれる人から逃げたくない。
離したくない。離さない。これは私のものだ。
「俺の勝ちのようだな」
「……うん」
「明日から学校に来るんだぞ」
「……うんっ」
「それと……今日からよろしくな。恋人として」
「うんっ!!」
私は今日も彼に敗北をした。
でもそれは私が勝ってはいけない勝負だった。
私が勝ってしまったらこの暖かな場所は手に入らなかったから。
私を負けさせてくれて……ありがとう。
「大好きです……サトくんっ……!」
飛びつくように彼の首に手を回し、顔を近づける。
二人の唇に暖かな感触が伝わった。




