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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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最終話 勝利は掴み取るモノである

 

「お、おはよ。ひ、広井君」


 彼と恋人になった翌日。

 私は学校に復帰し、先に登校していた広井君に照れ混じりで挨拶をする。

 うわぁ。うわぁ。か、彼氏だ。私の彼氏だ。今日も格好いいよぉ。自分の顔が赤いことがわかる。


「お、おぉ。おはよう。氷室さん」


 広井君も照れ臭そうに挨拶を返してくれる。

 一瞬だけ目が合うと、互いにバッと視線を外してしまう。


「(ミキティ。今日は一段と可愛く見える。これが俺の彼女とかマジ? 俺、前世でどれだけ得を積んだの? 俺は今間違いなく人生の絶頂期だ。幸せ過ぎて夢じゃないのかって疑うくらいだ)」


 広井君も私と同じ気持ちなんだ。

 嬉しいな。

 私は彼に近づいて耳元でそっと囁く。


「……夢じゃないよ。私の彼氏さんっ」


「~~~~っ!?」


 面白いくらい彼の顔が真っ赤に染まった。

 私の彼氏、反応が可愛すぎる。

 もっともっとそういう顔見せてほしい。


「……ねっ。『氷室さん』じゃなくて、『未希』って呼びながら挨拶してほしいな」


「ぅえ!?」


「おはよう。サト君」


「…………」


 挨拶のやり直しを要求してみた。

 金魚みたいに口をパクパクさせているサト君。

 照れすぎて言葉も失ってしまっているようだ。可愛い。可愛い。可愛い。


「うりゃ!!」


「はうあ!?」


 不意に後頭部へ強い衝撃が奔る。

 振り返ると、呆れ顔の花宮さんと丸めた教科書を持っている席子ちゃんが立っていた。


「な、なにするのぉ、席子ちゃん~」


「それはこっちのセリフ! 復帰したと思ったら何を教室のど真ん中でイチャイチャしているの!」


「イチャイチャなんてしてないよ! お付き合いしている人に名前で呼ばせようとしているだけだよ」


「それをイチャついているっていうの! ていうか教室ですんなぁ!」


 スパァンと二度丸めた教科書で頭を叩かれる私。


「ま、まぁまぁ、莉々様どうか落ち着いて。あ、あの、未希さん復帰おめでとうございます。待っていましたわ」


「いたた……あ、ありがとう。優しいな花宮さん。どこかの席子ちゃんも見習ってもらいた——」


 3度目の良い音が教室内に木霊したのは言うまでもなかった。







「あの……改めてごめんなさい」


「その謝罪は私達を心配かけた件? それとも今朝教室のど真ん中でいちゃついていた件?」


「えと……前者だけど……」


 ていうか私そんなにイチャイチャしていたかなぁ? 

 これからもっともっとサト君にくっつこうと思っているくらいなんだけど。

 もしかして私って結構頭ピンクなの?


「あの……未希さん。きっと今までその力のこと一人で悩んできたのですよね。これからはいつでもワタクシ達に相談してくださいね」


 花宮さん優しすぎない? 登場初期の刺々しさどこにいったの?


「ありがとう。そんなこと言ってくれたの花宮さんが初めてだよ。嬉しい。ん、見習いな」


 肘でツンツンと席子ちゃんを突く。


「復帰してから私に対する遠慮の無さが増したね未希ちゃん。私はそんな優しいこと言わないからねー。甘えんな氷室未希」


「うわ~ん。サトくーん! 席子ちゃんが優しくしてくれないよぉ~!」


「お……をぉ!?」


 サト君に抱き着きながら涙を散らす私。

 うへへ。サト君ゴツゴツしている。筋肉質だなぁ。男の子って感じ。鍛えているのかな。もっとスリスリしちゃえ。


「どさくさに紛れてイチャイチャしだすな! やりたい放題かキミは!」


 そりゃあやりたい放題したくなるよ。だって付き合って二日目だよ。いっぱいいっぱい触りたくて仕方がない。


「(み、ミキティの頭がすぐそこに……! すげーいい香りだ。そういえば前にシャンプー変えたって言っていたっけ。も、もっと嗅いだりしてもいいかな……いや、さすがに自重すべきか……)」


「サト君。私のシャンプーの香りが気になるみたいだね。もっと嗅いじゃえ。うりうり~」


「ぬ、ぬぉぉぉぉっ! それは刺激が強すぎる……! ミキティ! ミキティィィ!!」


「えへへ。喜んでもらえて嬉しいな」


 サト君はシャンプーを変える度に気づいてくれそうだな。

 今度はもっと大人っぽいの買ってみよう。大人のかほりで色仕掛けだ。


「駄目だ。もう誰もこのバカップルを止められない」


「でも幸せそうですわ。二人を見ていると自分も幸せにならなくちゃって思いますわ」


 席子ちゃんと花宮さんはため息を漏らしながら、私達を微笑ましそうに眺めていた。


「(この幸せを絶対に守り切っていきたい。ミキティはこれからも俺が守る)」


「んーん。それはお互い様だよ。この幸せは二人で一緒に守っていこうね」


 広井君には本当にたくさんお世話になった。

 だからこれからは私の番なんだ。

 彼の為に尽くし、彼の為に生きていきたい。


「(ミキティのことが好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。俺のこともどんどん好きになってもらいたい。毎日好きっていってもらいた——)」


「サト君。ずっとずーっと大好きだからね」


「~~~~っ!?」


 先回りして彼の望む答えを口にする。

 そのたびに顔を真っ赤にして喜んでくれるサト君。

 彼が臨むこと。

 それはきっとこれからもテレパシーを通じて私に届いてくる。

 私はどんなことでも喜んで彼の望むことをしよう。


「お、俺の方がずっと好きだ。ミキティ」


「~~~~っ!!」


 ふ、不意打ちはずるい!

 し、しかも俺の方が好きって言った!?

 それは聞き捨てならないよ。


「私の方がキミのこと好きだもん。それは絶対なんだもん」


「俺の気持ちの方が上回っているに決まっているだろう。大体、俺がキミのことをどんなに好きか知っているくせに、よくそんな負け惜しみが言えるな、ミキティ」


「知っているから言えるんだよ。絶対に私の方が好きだもん」


「どう考えても俺の方がミキティを愛しているに決まっているだろう」


「むぅぅぅぅっ! じゃあ勝負だよ! 互いに好きな所を言い合って言葉が詰まった方が負けね!!」


「そんな勝負内容で本当にいいのか? 100%勝てる自信があるんだが」


「言ったなぁ! 今日こそキミを負けさせて泣かしてやるんだから!」


 不意に始まった互いの好きな所を言い合う合戦。

 こんな感じに幼稚な対決で競い合うのもまた私達らしい。


 きっと恋愛には『勝ち確定』など存在しないのだろう。

 どんなに有利な条件を持っていても、それに甘んじていて行動を起こさなければ勝利など降り注いでこない。

 恋愛は勇気をもって動いた人が勝てるのだ。


 私は今までキミに勝ったことがないけれど。

 そろそろ初勝利しても良い頃合いだよね。


「もう絶対に負けないよ! サト君!」


 さて、今回の勝負はどちらが勝ったのか。

 それは想像にお任せするとしよう。



 【勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている】


 —完—


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