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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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第43話 部屋の中のエンカウント

 

 今日は一日中部屋から出なかった。

 精神が不安定過ぎてあまり動きたくなかった。

 明日はどうしようかな。一応勉強だけはしておこうかな。

 ていうか今日はこれからどうしよう……


「…………」


 テレビを見る気もゲームをする気も起きず、ただぼーっと虚空を見つめていた。

 脳裏に思い浮かべるのは3人のクラスメイトの姿。


 広井君……

 急に告白されてどう思ったかな……

 驚かせちゃったよね。

 たくさんアプローチはしていたけど、広井君のことだから私の気持ちなんて気づいていなかったんだろうなぁ。


 席子ちゃん……

 気に病むことなんてないって言ってくれた。

 大切なのはその人の言葉だって言ってくれた。

 アレ嬉しかったよ。

 そんなこと言ってくれた人、今までいなかったから。

 思わず反論はしちゃったけど、ありがとうって言いたかった。



 花宮さん……

 なんであの人、私の電話番号知っていたんだろう。



 私の頭の中にはこの3ヶ月の記憶がスライド映像のように流れ込んでいた。


 高校生活初日に私に惚れた広井君。

 私も一目惚れされた事実を知って、こっちも恥ずかしくなっちゃっていたけど嬉しかったんだよ?

 広井君が本心で私のことを褒めてくれることが分かったから。

 彼の気持ちを大事にしていかなきゃって思っていた。

 思っていたんだけど……結局こんな終わり方になってしまってごめんなさい。


 ギャルに絡まれたと勘違いして金銭的解決で乗り切ろうとしたこともあった。

 席子ちゃん。

 あの子、見た目ほど全然ギャルじゃなかったなぁ。

 明るくて、みんなと仲良くなれて、私にとって太陽みたいな人だった。

 たぶん、あの子は私の理想だったのだろう。

 こうなりたいという憧れの形だった。

 『誰とでも仲良くなる』。

 どれだけ強ければそんなことができるのだろう。

 本当にすごい子だったなぁ。席子ちゃん。

 私とも仲良くしてくれて、ありがとう。


 他にもたくさん思い出がある。


 広井君と連絡先交換したかったのに失敗したり

 チャットアプリのグループ作りで失敗したり

 委員長になりたての頃、緊張で号令に失敗したり

 カラオケで採点勝負を挑んだけど上手く歌えず失敗したり

 広井君にゲームで勝負を挑んだけど相手にならず失敗したり

 得意な勉強で勝負を挑んだけどこれも相手にならず失敗したり

 体育の授業で球技が下手過ぎて花宮さんに叱られて失敗したり


 思えば私の高校生活は失敗と敗北の繰り返しだった。

 敗北はもちろん悔しい。誰だって負けるのは嫌だ。

 でも——


「この3ヶ月……楽しかった……なぁ……」


 敗北は私にとって嫌なだけな記憶ではなかった。

 むしろかけがえのない良い思い出として今も私の中に大切に仕舞い込まれている。

 何度も負け続けることで『今度こそは勝ってやる!』という明日への活力を生み出してくれていた。

 新しい力がみなぎってくるから私は負けが嫌いではなくなっていた。


「——俺も楽しかったよ。キミが居てくれるおかげで毎日が輝いていた」


「ありがとう。そう言って頂けて私も救われ——えっ?」


「…………」


「…………」


 虚空を見つめていた視線は徐々に焦点が合っていく。

 ぼやけたような視界が少しずつクリアになっていく。

 涙を拭いて、まっすぐ前を見つめてみると——


「——これからもいっぱい楽しもう。俺と一緒に。ずっと」


 私の想い人がいつものように優しい表情で私の顔を見つめてくれていた。



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