第42話 キミを否定するわけがない
【main view 広井サトル】
「切れちゃいましたわ……」
悔しそうな表情でスマホを見つめながらポツリと呟く花宮さん。
席子も唇を嚙みながら身体を震わせていた。
「結局……電話は裏目になっちゃったね……」
俺達はミキティを学校に復帰させるためにどうすべきか話し合っていた。
仮に本当に心の声が読まれるのであれば、まずは遠隔で話してみてはどうかいう結論に至ったのだけど……
結局事態は全然好転しなかった。
いや、まだだ。
まだできることはある。
諦めてたまるか。
好きな人が苦しんでいるんだぞ。
死力を尽くせ。彼女の為に動け。
それが出来ないのであればお前になど存在価値はない。
この恋を——諦めてたまるか!
「俺……さ。氷室さんが——ミキティが好きなんだ」
「「……??」」
何をいまさら? みたいな表情で首を傾げる席子と花宮さん。
「俺さ、昔、みっともない失恋をしたことあってさ。それ以来、恋をすることを恐れていた」
幼馴染の峰田瑠美への恋慕。そして失恋。
身勝手な告白をした俺の初恋はみっともない形で終焉を迎えた。
中学の出来事は俺に大きなトラウマを植え付けていた。
でもミキティとの出会いが俺のトラウマを一瞬で吹き飛ばしてくれた。
彼女と出会ってすぐに恋に落ちた。一目惚れだった。
ミキティと過ごすうちにもっと好きになっていた。
彼女の存在は常に眩しかった。控えめな笑顔も愛らしい性格も全てが理想を凌駕していた。
「彼女は……俺の光だ」
そうだ。
なぜ忘れていた。
ミキティと過ごした輝かしい日々を。
彼女は俺の心の変態性を知っていながら俺と仲良くしてくれた。
普通なら遠ざけるに決まっている俺に近づいてきてくれたんだ。
俺の女神は心まで女神だった。
たまに眩しすぎて直視できなくなる。
でも目を瞑っている暇はない。
彼女が俺のトラウマを払拭させてくれたように——
今度は絶対に俺が助けるんだ!
「ミキティに会ってくる。直接会って彼女を救ってくる」
「ま、待ちなさい! 今未希ちゃんに会うのは止めておいた方がいいよ。あの子は今傷つくことをとても恐れている! 気遣いながら会話しても心の声が漏れたら未希ちゃんが傷ついてしまうかもしれない!」
確かに席子の言う通りだ。
どんなに綺麗な言葉で繕っても心の声が罵倒してしまえばミキティを傷つけることになる。
だけど——
「大丈夫だ」
「えっ?」
そう大丈夫。
なぜかって?
「俺は心の中でもミキティを悪く思ったことはただの一度もないから」
自信を持って言える。
俺があの子に向ける言葉には一寸の悪意もないということを。




