第37話 おもしれー女達
「紛らわしい! 紛らわしすぎるよぉ花宮さん!」
花宮さんの行動はどう見ても広井君を恋する乙女ムーブだったじゃん!
「何を言うのです! 自分で言うのもアレですが、私が莉々様とお近づきになりたそうだったのは見てわかるでしょう!? 私の莉々様とあんなに仲良さげにしている貴方や広井さんが恨めしかったのですわ」
テストの張り出しの時、花宮さんの心の声を聴いた。
——「(氷室さんよりいい点数を取りたかったのに。そうしたらあの方も氷室さんとじゃなくワタクシと勉強した方が良いと思ってくれたはずなのに! そう思われたくて死に物狂いで勉強したのに……!)」
この言葉を聞いて、私は花宮さんが広井君を好きなのだと思い込んでしまったのだけど……
今思えば彼女が言う『あの方』というのが広井くんだなんて一切言っていない。
「(花宮さんは席子ちゃんと一緒に勉強したかったんだ)」
好きな人が自分以外の人と仲良くしている。
その事実は花宮さんを追い込んだ。
無自覚に私が彼女を苦しませてしまったんだ。
だったら私ができるせめてもの償いは——
「ね。花宮さん。私とお友達になってくれませんか?」
「きゅ、急になんですの!? 私が貴方と友達!? そんなの冗談じゃありませ——」
「私、席子ちゃんとよくお喋りするから私とも仲良くなれれば堂々と一緒に過ごすことができるよ」
「エターナルフレンドと呼んでください未希様」
私の手を取って頬を摺り寄せる花宮さん。
うわぁ。この人おもしれー女だ。今流行のおもしれー女だ。
一瞬にして花宮さんのイメージが変換されてしまった。
「そ、それにしても女の子を好きだなんて……いや、批判するつもりはないよ? でもちょっとビックリしちゃった」
「す、好きと言っても『親友になりたい』程度の気持ちでしたわ。でもあなたが『告白して恋人になりたい』とか言い出したから私焦ってしまったのです!!」
「あー」
——『こ、恋人!? そ、そこまで、そんなにも、あの方のことが好きだったのですの!?』
この言葉の真意はそういうことだったのか。
私が席子ちゃんに告白するって勘違いしちゃったんだ。
なんか悪いことをしてしまった気分だ。
「でも席子ちゃんってクラスメイト全員と仲良しさんじゃない? 花宮さんとも普通にお話ししている所見たことあるよ? すでに友達なんじゃ?」
「……全然そんなことありませんわ。貴方みたいにバカみたいな冗談を言い合える仲とは程遠いですわ。私、根が真面目すぎてつまらないから、友達ランキングの中でも私は最下位候補でしょうね」
「…………」
言いたいこと色々あるな?
まず私と席子ちゃんの会話ってそんなにバカっぽいの? そんな風に見られていたとは。
あとやたら自己評価低いけど、貴方おもしれー女だよ? もっと自信もって。
そして、何より強く思うのは——
「席子ちゃんは友達を順位付けしたりなんかしないよ。皆を大好きで、皆が一番だと思っていると思う。そういう人だってこと本当は花宮さんも知っているはずだよ?」
「……ぅぅ」
花宮さんがうつむいてしまった。
そんな彼女の肩に私は優しく触れる。
「でも逆に言えば八方美人過ぎるよね。もっと私達を優先しろーって思うのは私だって思っていることだから」
「み、未希さん。わかってくださるのですか。貴方良い人ですね。それにとても優しいです。ただの面白いだけの人だと誤解しておりました」
花宮さんの中で私の存在はお笑い芸人と同列なのだろうか。私そんなに面白いことやったことないと思うのだけど。むしろ私こそ根が真面目すぎてつまらない存在なのだと思っていたよ。
「これからは全力で応援するね。席子ちゃんの中で特別な存在になれるといいね」
「は、はい! そ、その、私も未希さんのこと応援させてください。広井さんと上手くいくことを心から願っております」
「ありがとう。えへへ。応援してもらえるのすごく嬉しい」
席子ちゃんの件も花宮さんの件も結局はどちらも私の杞憂だった。
この二人が広井君のことを好きなのかもだなんて悩んでいた自分がバカみたいだ。
でもよかった。これで本当に障害は全てなくなった。
あとは私が彼に思いを伝えるだけだ。




