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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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第36話 それは勝負にすらなっていなかった

 

 花宮さんとは特別仲が良いわけではなかった。

 どちらかというと互いを苦手にしているまである。

 だからといって花宮さんのことを無視していいわけではない。

 ライバルだけど、同じ人を好きになった者同士だから。

 だから私は彼女ともっと話したいって思ったんだ。


「あ、あの、花宮さん」


「……えっ? 氷室さん!?」


 まさか私から声を掛けられると思っていなかったのだろう。

 花宮さんは大きく驚いたような表情で振り返ってきた。


「ちょっとお話したいことがあるの。ほ、放課後、教室に残ってくれないかな?」


「……それはクラス委員関係の用事で?」


「ち、違うよ。私個人が花宮さんとお話したいの」


「……私は別にお話することなんてありませんわ」


 私に対する憎悪のようなものが感じられる。

 こんなにも嫌われていたことにショックを憶えつつも、私はめげずに花宮さんと会話を続けた。


「……お互いに共通の好きな人に関して話がしたいんだ」


「……っ!?」


 2度目の驚愕の表情だ。

 私の真剣な空気が伝わったのか、花宮さんも真顔に戻り、そして小さく頷いてくれた。


「じゃあ、また放課後にね」


「……ええ」


 花宮さんと約束を取り付けて、ほっと一安心した私は自分の席へと逃げるように戻っていく。

 この時の私はそんな安心感からか、一つの心の声を聴き洩らしていた。


「(ミキティと……花宮さん? 珍しい組み合わせだな。共通の好きな人って言葉だけ聞こえた……)」


 これが後に大きな騒動を起こすことになろうとは、この時の私は知る由もなかった。







 あっという間に放課後になり、クラスメイトが次々と教室から出ていき、喧騒が収まっていく。

 私達以外誰もいなくなったことを確認すると、花宮さんは私の肩を叩き、対面に座った。


「氷室さん。お話ってなんですの?」


「う、うん……」


 花宮さんの堂々とした雰囲気に押され、委縮してしまう私。

 最近はマシになってきたとは言え、根本には未だビビりな私が存在しているようだった。

 それでも今日ばかりは頑張らないといけない。


「そ、率直に聞くけど、花宮さん好きな人……いるよね?」


「……っ!!」


 目を見開いて頬汗垂らす花宮さん。

 やばい。ズバリと切り込み過ぎたかも。


「……ど、どうして貴方にそんなこと言わないといけないのですの?」


「そ、それは……」


 花宮さんにしてみれば最もな話だ。

 どうして大して仲良くもない人に好きな人をばらさないといけないのか。

 納得させるためにまずは私から話さないといけないよね。


「わ、私も、す、好きな人、居て、ね。たぶんだけど、花宮さんも同じ人が好きなんじゃないかなって思ったの」


「……っっ!」


 花宮さんの顔に焦りと驚愕が入り混じる。

 狼狽している花宮さんには悪いけど、私は密かに決意していたことをここで初めて話すことにする。


「私、近いうちに……告白する」


「えっ!?」


 私の決意を聞き、花宮さんがついに大声を張り上げた。


「告白して……恋人になりたいの」


「こ、恋人!? そ、そこまで、そんなにも、あの方のことが好きだったのですの!?」


「……うん!」


 私は卑怯だと思う。

 だって私は広井君の心の声を知っている。

 彼の気持ちを知っている。

 この勝ち確定の状況を分かっていて告白をしようとしているのだから。

 それは彼を好きな人にとってフェアじゃない。はっきり言ってズルだ。

 だからせめて同じ人を好きになった人には事前に伝えておきたかったんだ。


「わ、私の方が——」


「えっ?」


「私の方が……あの方への想いは……強いですわ!」


 その真剣な瞳から彼女がどれだけ彼のことが好きなのか伝わってきた。

 でも気持ちだけなら私も負けるつもりはない。


「じゃあ、どっちが先に恋人になれるか勝負だね。負けても恨みっこなしということで」


「上等ですわ! わ、私も、想いを伝えて、先に両想いになってみせますから!」


 これでいいと思った。

 私が花宮さんのお尻を叩いてあげたことでようやく初めて互いの存在が認められた気がした。

 ひょっとしたらこの行為が私の勝ち確定の状況を揺るがしてしまったのかもしれない。

 だけど、ズルをしてまで勝ちを得たいとは思わなかったから。

 チャンスは平等になければいけない。

 でも——


「ちなみに私は相手から『ミキティ』って呼ばれるくらい慕われているよ」


 勝ち誇った顔で鼻を鳴らす。

 これくらいイキり散らしてもバチは当たらないよね。


「ず、ずるいですわ! 私だって花ぽんって呼ばれたいですわ!」


「呼ばれ方それでいいの!?」


「『花ぽん』『りーちゃん』って呼び合う仲になりたいですわ」


「特別な呼び方に憧れるのわかるなぁ。わ、私も『ミキティ』『サトくん』って呼び合——ん? 『りーちゃん』?」


「『サトくん』??」


 広井サトル。

 ……え? どこにりーちゃん要素ある?

 私と花宮さんは目を見開いてキョトンとした表情で見つめ合った。

 私はもしかして重大な勘違いをしていたのではないだろうか。

 ここで初めてそんな懸念を抱いた。


 過去2回、私達仲良し3人組の中に花宮さんが乱入してきたことがあったことを思い出す。


 1回目は席子ちゃんが広井君の筋肉を触って楽しんでいた時。

 2回目は広井君が席子ちゃんにミニトマトをあーんしようとしていた時。


 大好きな広井君が席子ちゃんとイチャイチャして腹を立てたから花宮さんは乱入してきたのだと思っていた。

 でも、その根本が間違っていたとしたら。

 私は恐る恐る花宮さんに聞いてみた。


「ねぇ……もしかして……花宮さんの好きな人って……広井君じゃない……の?」


 同時に花宮さんも私に一つの疑問を投げてくる。


「もしかしてですが……氷室さんの好きな人って……莉々様ではないのですか?」


「「…………」」


 互いに沈黙。

 そして——


「「なんだそりゃあああああああああっ!!」」


 私達は同時に感情を爆発させたのであった。


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