第29話 他の子がくっついているのを見ると露骨に嫌な顔を浮かべる勝ち確ヒロイン
揚々とした夏の熱気が汗を浸らせる。
夏服になって服装は涼しくなったとはいえ、この国の夏は暑すぎる。外国行ったことないけど。
「(ミキティの夏服眩しすぎん? そんな薄着で登校してきて俺を魅了しているのかな? 相変わらず清楚に着こなすし、最近なんか距離が近いから余計ドキドキするというか。しかも服の生地が薄いから素肌の密着率が上がっている気がする)」
おぉう。広井くんが健全な男子みたいなこと言い始めている。
アイドル的に祀る感じじゃなく、素の私にドキドキしてくれている感じだ。
……嬉しいかも。
「広井君くん! 一緒にテスト勉強しよ」
広井君の腕を揺らしながら、甘えるように彼に声を掛けた。
「(ち、近いって~!)。えっと、決定事項?」
「決定事項だよ。逃がさないよ」
「う、うい」
高校に上がってから初めてのテスト。気合も入る。
広井君、真面目に授業聞いている印象だから良い成績取りそうだ。負けたくないな。
「どっちの家で勉強する?」
「どっちかの家でやることも決定事項なのか!?」
「私、また広井君の家行きたい。あのお団子クッション抱き心地いいんだよね」
「そんなに気に入ったならあげようか? ゲーセンのクレーンゲームで取ったやつだし」
「アレは広井君の家にあるからいいんだよ」
「そ、そういうものか? まぁ、気に入ってくれたなら全然使ってくれていいぞ」
今日は広井君の家で勉強することになりそうだ。
息抜きのタイミングでゲームもやりたいな。今度こそ勝ちたい。
そんな風に考えていると——
「未希ちゃぁぁぁん! 広井くぅぅぅぅん! 勉強おじえでぇぇぇ!!」
急に大泣きの席子ちゃんが私に抱きついてきた。
「授業が全然わかんないのぉぉ! このままじゃ赤点とっちゃうよぉぉぉ!」
「まだ1年生の1学期の段階で!?」
「おじえでぇぇぇ! 私をたずげでぇぇぇぇ!」
席子ちゃん。勉強できないキャラだったんだ。
なんでも要領良くこなせる子だと思っていたけど、意外な弱点だ。
「それじゃあ席子も俺の家に来るか? これから氷室さんと俺の部屋で勉強会するんだ」
「バカ! 女の子を自室に招くなんて何考えてるの!?」
「理不尽!?」
「ここで3人で勉強しよ。わからない所教え合ったりしよう」
「未希ちゃあああん! 私に教えられることないよぉぉぉ! 私ここにいちゃ駄目ってことぉぉ!?」
うわぁぁ! 席子ちゃんが面倒くさい子になってる!?
普段、お姉ちゃんみたいにしっかり者なのに勉強絡むとこうも幼児化してしまうのか。
「落ち着け席子。まず苦手教科の克服からゆっくりやっていこう。大丈夫。まだ1年の1学期なんだ。全然取返しつくさ」
「ひ“ろ”い“ぐぅぅぅん”! 優しいぃぃ! あ“り”がどう“~!」
席子ちゃんが広井君の首に手を回しながらわんわん喚き散らす。
広井君は困ったように頬をポリポリ掻いている。
「席子ちゃん。早く座って教科書開きなさい! 今すぐ!」
「う、うん。なんか未希ちゃんが急に物凄い迫力を放ちだした……」
「広井君は後でお説教ね」
「どうして!?」
「ふん!」
こうしてちょっとだけ空気の悪い中、3人のテスト勉強会が始まった。




