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第39章 リナ奪還と料理で繋がる絆


⸻




 リナが連れ去られた翌日。

 情報屋や孤児院の子どもたちの証言から、美月たちは犯人の正体を突き止めていた。


「やっぱり……ヴァルモンド侯爵の屋敷に囚われてる」

 カイが険しい表情で地図を指し示す。


 侯爵の屋敷は警備が厳重で、正面から挑めば返り討ちだ。

 だが、美月の心には迷いはなかった。


「どんなに危険でも……リナを助け出す」


 リナの存在は、もう一度妹と巡り会えたような奇跡。

 その絆を、絶対に断ち切らせはしない。


⸻




 その頃、リナは屋敷の地下牢に閉じ込められていた。

 薄暗い石の部屋。鉄格子。冷たい床。


「……お姉ちゃん……」

 膝を抱えて小さく呟く。


 恐怖と孤独が胸を締めつける。

 だが、頭に浮かんだのは美月と過ごした温かい食卓だった。


 ――お姉ちゃんの作るシチュー。

 ――みんなで笑いながら食べたカレー。


 思い出の味が、彼女を絶望から守っていた。


⸻




 夜更け。

 美月とカイは仲間たちと共に、侯爵の屋敷の裏手から忍び込んだ。


 カイが兵士を気絶させ、美月は持参した「香辛料入りの煙玉」を投げ込む。

 辺りは強烈な香りに包まれ、兵士たちが咳き込み、動きが鈍った。


「美月、やるじゃねえか!」

「香りの調合は料理の応用だよ!」


 彼女の“料理の知識”は、戦いの場でも武器となっていた。


⸻




 地下牢を見つけ出すと、そこには震えるリナの姿があった。


「リナ!」

 美月が駆け寄ると、リナの瞳に光が戻る。


「お姉ちゃん……!」


 二人は鉄格子越しに手を取り合った。

 その瞬間、積み重ねてきた絆がはっきりと確かめられる。


 カイが鍵を壊し、リナを解放すると、彼女は涙をこぼしながら美月に抱きついた。

「もう……会えないかと思った……!」


「大丈夫。絶対に離さない。何度でも守るから」


⸻




 だが、安堵も束の間。

 侯爵が護衛を率いて現れた。


「ふん、小娘が……私の屋敷に侵入するとは」

 侯爵は冷たい笑みを浮かべる。

「その娘を置いていけ。でなければ命はないぞ」


 リナを背にかばいながら、美月は睨み返した。

「リナは私の妹。絶対に渡さない!」


 戦いが始まる――その直前。

 美月は懐から一つの鍋を取り出した。


⸻




 それは、前夜に急いで仕込んでおいた スパイスシチュー。

 強烈な香りと、体を温める力を持つ特製の料理だ。


 美月は兵士たちの前に鍋を差し出した。

「あなたたちだって本当は空腹でしょ? 食べてみて」


 最初は警戒していた兵士たちだったが、一人が口にした途端――表情が和らいだ。

「……うまい……」

「なんだこれ、体が熱くなる……!」


 次々と兵士が鍋に手を伸ばし、戦う気をなくしていく。


 侯爵は顔を真っ赤にして叫んだ。

「馬鹿ども! 何をしている!」


 だがもう遅い。

 兵士たちは美月の料理に心を奪われ、侯爵に従う意思を失っていた。


⸻




 混乱の中、美月たちはリナを連れて脱出した。

 月明かりの下で走り抜け、やっと安全な路地にたどり着いた時――リナは美月に強く抱きついた。


「ありがとう……やっぱりお姉ちゃんは私の……本当のお姉ちゃんだよ」


 その言葉に、美月の胸は熱くなる。

 血の繋がりはなくても、料理と絆で結ばれた“家族”がここにあった。


 涙をこらえながら、美月は答える。

「これからもずっと一緒だよ。リナ」


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