第40章 最後の大饗宴と“家族の食卓”
⸻
リナ奪還から数日後。
王都の大広場には、国王からの正式な依頼を受けた美月が用意した巨大な宴の準備が整えられていた。
広場の中央には長大なテーブルが並べられ、料理人や冒険者、市場の商人、孤児院の子どもたちまでもが協力して立ち働いている。
「こんなに大きな宴……本当にやれるのか?」
カイが苦笑する。
だが美月は笑顔で鍋をかき混ぜた。
「みんなが力を合わせればできるよ。料理ってそういうものだから」
――国も身分も立場も超えて、同じ食卓を囲む。
それが美月の願いだった。
⸻
宴には王侯貴族から農民、さらには異国の使節団までが集まっていた。
彼らの目の前に並べられたのは、多彩な料理の数々。
・スパイスを利かせた東方風カレー
・北方の保存肉を使ったシチュー
・王都で人気のプリンやケーキ
・庶民に人気の焼き鳥やおにぎり
そして、それらを組み合わせて新しく生まれた “融合料理”。
人々は最初こそ戸惑ったが、一口食べれば表情が一変する。
広場は笑顔と歓声に包まれ、国境も身分の差も、料理の前では意味を失っていった。
「……これが、美月の目指す食卓か」
国王が感嘆の声をもらす。
⸻
宴の最中、美月は壇上に立ち、皆に語りかけた。
「私は異世界から来ました。でも、どの世界でも“ごはんを一緒に食べる”ことは同じです。
料理は人を繋げて、心を癒して、未来を変える力を持っている――そう信じています」
拍手が沸き起こる。
孤児院の子どもたちも、冒険者ギルドの仲間も、商人たちも、声を揃えて美月の言葉を讃えた。
その輪の中心にリナが立ち、にっこりと笑う。
「お姉ちゃんのごはんは、世界で一番だよ!」
⸻
大饗宴が終わった夜。
人々が去った広場の片隅で、美月とリナ、そして仲間たちはこぢんまりとした机を囲んでいた。
並べられたのは、豪華な料理ではない。
美月が手作りした オムライス。
「やっぱり最後はこれがいいよね」
美月は笑って皿を差し出した。
リナはスプーンを握りしめながら、目を潤ませる。
「お姉ちゃんと一緒に、このごはんを食べられるなんて……幸せ」
カイも口元をほころばせる。
「大宴会よりも、この小さな食卓のほうが温かいな」
みんなで手を合わせる。
「――いただきます!」
その声が重なった瞬間、二人の絆と新しい家族の物語は確かに結ばれた。




