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第34章 店の場所探しと資金集め


⸻


 王都に朝日が昇ると同時に、美月は大きく息を吸い込んだ。

「……今日から本格的に、食堂の準備を始めるんだ」


 決意は固まった。けれど、理想を現実にするには越えるべき壁がいくつもある。

 店を開くには、まず場所と資金を用意しなければならないのだ。


⸻


 午前。

 カイとリナを連れて、美月は商人ギルドを訪れた。

 帳簿を抱えた馴染みの商人グレンが、にこやかに迎えてくれる。


「食堂を始めたい、か。……なるほど、君なら必ず繁盛するだろうね。ただし問題は、王都の土地代と初期費用だ」


 机に広げられた帳簿には、目がくらむような数字が並んでいた。

 厨房設備、テーブルや椅子、皿や鍋の数々。

 加えて、店を構える土地の賃貸料はとんでもなく高い。


「これだけ必要なんですか……」

 美月は思わずため息をつく。


「でも、全部を自分で背負う必要はないよ」

 グレンが微笑んで言った。

「投資家を探す手もあるし、俺の商会も出資を検討しよう。……ただ、場所探しは簡単じゃない」


⸻


 翌日から、美月たちは王都を歩き回った。


 人通りの多い大通り、商人が集まる市場の一角、静かな住宅街の裏路地。

 それぞれに利点と欠点がある。


 大通りは客が集まりやすいが、家賃が高すぎる。

 市場近くは新鮮な食材を仕入れやすいが、既に料理屋がひしめいている。

 裏路地は安く借りられるが、人通りが少なく、集客が難しい。


「どこも一長一短だな」

 カイが頭をかきながら言った。


「でも……私は、子どもも大人も気軽に入れる場所にしたい」

 美月は真剣な顔で言う。

「庶民でも安心して来られる場所じゃないと、意味がないんだ」


⸻


 そんなある日。

 リナが路地裏で古びた建物を指さした。


「お姉ちゃん、あそこ……!」


 煉瓦造りの小さな建物。

 窓は割れ、看板も色あせているが、不思議と温かな雰囲気を残していた。


 持ち主に話を聞くと、かつてはパン屋だったが、店主の高齢で閉めたままになっているらしい。

 市場にも近く、裏路地にしては人通りもある。しかも、家賃は比較的安い。


「ここなら……!」

 美月の心が高鳴った。


⸻


 だが、契約するには資金がまだ足りない。


 そこで美月は一計を案じる。

「屋台をもう一度やろう。みんなで協力して、資金を少しずつ貯めるんだ」


 決意を聞いたカイは頷き、リナは「私も手伝う!」と笑顔で答える。

 仲間たちも同意し、再び町の広場に屋台が並ぶこととなった。


 焼き鳥、おにぎり、温かいスープに甘い焼き菓子。

 美月が作る料理はどれも瞬く間に売り切れ、客の笑顔と硬貨が積み重なっていく。


「これなら……夢に近づける!」


 汗だくで笑うリナとカイの隣で、美月の心は未来への希望でいっぱいになった。


⸻


 夜。

 数えた売上を見ながら、美月はぽつりとつぶやく。


「いつか必ず、この屋台じゃなくて“私たちの店”で……みんなに料理を食べてもらうんだ」


 その言葉は誓いのように、仲間たちの胸に刻まれた。


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