第33章 食堂を開きたいという決意
⸻
リナが少しずつ元気を取り戻し、孤児院に笑い声が戻ってきたころ。
美月は、夕暮れの厨房で鍋をかき混ぜながら考えていた。
豆と野菜で作ったとろみのあるスープ。
肉は少ないけれど、子どもたちが「おかわり!」と喜ぶ味に仕上がっている。
それを見ていると、美月の胸にある思いが強く膨らんでいった。
(料理で病気の子を救えた。お腹をすかせていた子たちを笑顔にできた。
だったら、この力をもっと多くの人に届けられたら……)
だが同時に、不安が心をかすめる。
(私に、そんなことができるのかな……?)
⸻
食事のあと、リナが小さな声で言った。
「ねえ、お姉ちゃん。ずっとここでごはんを作ってくれるの?」
美月は一瞬言葉に詰まった。
リナの瞳は、不安と期待が入り混じった色をしている。
「もちろん、リナのためにはずっと作るよ。でも……」
少し間を置き、美月は決意を込めて続けた。
「私ね、食堂を開きたいんだ。もっとたくさんの人に、ごはんを食べてもらいたいの」
リナは目を見開いたあと、ぱっと笑った。
「すごい! きっとできるよ! だってお姉ちゃんの料理、すっごくおいしいもん!」
その無邪気な声に、美月の胸が熱くなる。
⸻
夜。
孤児院の庭に集まったのは、美月を支えてきた仲間たちだった。
カイ、冒険者の仲間、そして商人や孤児院の院長もいる。
「……私、決めました。食堂を開きたいんです」
突然の宣言に、皆は一瞬驚いた顔を見せた。
だがすぐに、カイがにやりと笑った。
「やっぱりな。ずっと考えてたんだろ」
「ええ。でも不安もあって……」
「不安なら俺たちが支えるさ。だろ?」
冒険者たちが「おう!」と声を上げ、商人は帳簿を取り出して言った。
「資金の工面なら、商会を通じて協力できる。食材の仕入れ先も紹介しよう」
孤児院の院長も微笑みながら言った。
「子どもたちも、毎日あなたの料理を楽しみにしている。……だからきっと、町の人たちも同じ気持ちになるわ」
⸻
みんなの言葉を聞きながら、美月は拳を胸にぎゅっと握りしめた。
自分ひとりでは夢のように思えたことが、仲間と一緒なら現実に変わるかもしれない。
「ありがとう……。絶対に、夢を形にしてみせます!」
その夜、美月は星空を見上げながら、心に固く誓った。
(“異世界食堂”を開こう。
家族の味で、人を救い、人を笑顔にするために――)




