第29章 リナの病と不穏な影
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王都に戻り、支援の任務を終えた美月たちは、久しぶりに穏やかな日々を取り戻していた。
市場で新鮮な食材を仕入れ、子どもたちに笑顔を見せながら料理を振る舞う。
カイも任務の合間に顔を出し、仲間たちで小さな食卓を囲む夜もあった。
けれど、そんな安らぎは長くは続かなかった。
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ある日の朝。
リナが布団から起き上がれず、苦しそうに咳き込んでいた。
「……ごほ、ごほ……お姉ちゃん……」
その声を聞いた瞬間、美月の心臓が跳ねる。
(まさか……また妹を失うの? 今度も……私の前で……!)
冷や汗が背中を伝い、手が震える。
前世で最愛の妹を病で失った記憶が、鮮明に甦る。
「リナ、大丈夫、すぐに薬師さんを呼んでくるから!」
美月は必死に声を張り上げ、カイに伝令を頼んだ。
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やって来た薬師は診察をし、渋い顔をする。
「これは……ただの風邪ではありません。体力を奪う奇病の初期症状に似ていますな」
その言葉に、美月は血の気が引いた。
孤児院の子どもたちも心配そうに集まる。
「でも、治せるんですよね……? 何か方法は……!」
「正直に申しますと、薬草だけでは難しい。高価な霊薬や、特別な調合が必要です」
淡々と告げられる現実。
庶民には手の届かない額の薬――。
リナは苦しそうに美月の手を握り、小さく笑った。
「……ごめんね、お姉ちゃん。私、弱くて……」
「そんなこと言わないで! 絶対に助けるから! 今度こそ、私は諦めない……!」
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その夜。
美月は眠れずに、調理台に突っ伏していた。
頭の中に浮かぶのは、前世の妹の最期。
病室で手を握ったあの冷たさが、心臓を締めつける。
「どうして……神様はまた、同じ試練を私に与えるの……?」
涙がぽとりと落ち、まな板に小さな染みを作る。
しかし――不意に、料理人としての直感が胸を突いた。
(食べ物……そうだ。薬草も、食事に取り入れれば……)
完全な治療薬は無理でも、体力を保ち、病に抗う力を引き出せるのではないか。
「私にできるのは……料理。でも、それがきっと……リナを救う道になる」
美月の瞳に、再び強い光が宿った。
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その頃。
王都の一角では、ある権力者が不気味な笑みを浮かべていた。
「孤児院の娘が病に倒れたか……利用できるな。あの料理人も、こちらの掌の上だ」
リナを巡る陰謀が、静かに動き始めていた――。




