第22章 料理対決!ギルド権力者との衝突
王宮での成功から数日。街に戻った美月たちは、再び料理ギルドに呼び出された。
ギルド本部は大理石で飾られた立派な建物で、外には豪華な馬車が並び、いかにも権威を誇る場所だった。
「なんだか……嫌な予感がする」
リナが不安げに美月の袖を握る。
カイは周囲を睨みながら小さく唸った。
「……宮廷で名を挙げすぎたな。ギルドの連中が黙っていない」
応接室に通されると、待っていたのはギルドの重役たち。特に中央に座る大柄な男が、威圧的な眼光を放っていた。
「貴様が美月か。……我らの伝統と格式を乱した張本人だな」
男の名はバルド。長年ギルドを牛耳り、格式ばった料理を守ることで権威を保ってきた人物だった。
「料理は芸術であり、貴族のためのものだ。貴様のような庶民が触れてよい領域ではない」
バルドの言葉に、リナが顔を真っ赤にして立ち上がった。
「美月お姉ちゃんの料理は庶民のためのものでもあるんです! みんなを笑顔にするんです!」
場がざわつく。
バルドは鼻で笑った。
「ならば証明してみせるがいい。我らギルドの“至高の料理”と勝負しろ」
◇
急遽、ギルド主催の料理対決が行われることになった。
観客席には貴族や市民が詰めかけ、豪華な厨房が用意される。
対決の条件は――「同じ食材で、より多くの人を感動させた方が勝ち」。
用意されたのは、特大の《岩鳥》の肉だった。筋が多く、扱いが難しい食材だ。
「こんなもの、煮込むしかないだろう」
バルドは大量の香辛料と油を使い、濃厚で豪華なローストを仕上げていく。見た目は派手だが、香りはやや重い。
一方、美月は岩鳥肉を細かく切り分け、野菜と一緒に煮込んだ。
鶏ガラのようにじっくりと旨味を引き出し、最後にお米を加えてリゾット風に仕上げる。
「豪華さでは勝てない。でも、心に残る一皿にすればいい」
リナも必死に手伝い、カイは火加減を調整する。
出来上がったのは――素朴な「岩鳥のチキンリゾット」だった。
◇
審査の時間。
バルドの料理は、見た目は華やかで香辛料が効いていたが、肉は固く、油が重すぎる。
「……豪華だが、食べ疲れるな」
「うむ、半分で箸を置きたくなる」
続いて、美月の料理。
ひと口食べた貴族が目を見開き、次々とスプーンを口に運んだ。
「柔らかい……!」
「優しい味わいだ。胃にすっと入る」
「……思い出すな。母が作ってくれたあの雑炊を」
会場の空気が一変した。子どもから老人まで、皆が温かい笑みを浮かべている。
勝敗は明らかだった。
「勝者――美月!」
会場に歓声が響き渡る。
バルドは顔を真っ赤にし、拳を震わせていた。
「こんな庶民料理が……」
だが美月は穏やかに答えた。
「料理は、誰かを幸せにするためにあるものだと思います。格式や派手さだけじゃなくて――心を満たす一皿を作りたいんです」
その言葉に、市民たちが一斉に拍手を送った。
◇
対決の後、ギルドの若い料理人たちが美月の元へ駆け寄ってきた。
「……俺たち、あなたの料理に憧れました」
「庶民のための料理をもっと学びたい!」
リナは目を輝かせ、美月の手をぎゅっと握った。
「お姉ちゃん、やっぱりすごい!」
カイは腕を組んだまま、ほんの少し口元をほころばせていた。




