第12章 町での評判と依頼殺到
黒棘狼との死闘から数日後。
三人は次の町――交易の要衝でもある「リオネール」に到着した。
城壁に囲まれた町は活気にあふれ、行き交う商人や冒険者でごった返している。
美月は目を丸くして立ち止まり、リナが嬉しそうに袖を引っ張った。
「わぁ! 人がいっぱい! ねぇお姉ちゃん、あのお店からおいしそうな匂いする!」
「ほんとね。市場が大きい町だし、食材もたくさんありそう」
彼女の胸は高鳴っていた。
――新しい食材、新しい出会い。ここでどんな料理を作れるのだろう。
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まず三人は冒険者ギルドへ向かった。
ギルドの建物は石造りで大きく、中は昼間から賑わっている。
扉を開いた途端、ざわめきが一斉に広がった。
「あれが噂の連中か?」
「黒棘狼を倒したって……ほんとに?」
視線が集中し、美月は思わず戸惑う。
リナはおそるおそる美月の背に隠れた。
「……どうやら俺たちのことがもう広まってるらしいな」
カイが苦笑する。
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受付嬢の女性が笑顔で迎えた。
「黒棘狼の討伐、確認済みです! 本当にお見事でした。町の安全に大きく貢献されましたね」
証拠の魔核を提出すると、場の空気が一気にざわついた。
周囲の冒険者たちが口々に話し始める。
「黒棘狼なんて上級パーティーでも苦戦するぞ!」
「女の子が混じってるのに……どうやって倒したんだ?」
美月は視線に圧倒されつつも、正直に答えた。
「三人で協力して……私は直接戦えませんが、料理や知識で支えました」
その一言に、さらにざわめきが広がる。
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その日のうちに、依頼が殺到した。
「護衛してほしい!」
「討伐に同行してほしい!」
「それと……料理をぜひ食べさせて!」
最後の一言に、美月は目を丸くした。
「えっ、料理……ですか?」
「黒棘狼を食べられるようにしたって聞いたぞ! ぜひ腕前を見せてくれ!」
冒険者たちは半ば押し寄せるように美月に詰め寄り、結局、ギルドの一角を借りて即席の「料理披露会」が開かれることになった。
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美月は慌てつつも、調理台に立つ。
市場で手に入れたばかりの新鮮な野菜と、保存用に持ち歩いていた狼肉を使い、料理を作ることにした。
「よし……今日は『黒棘狼の香草焼き』と、『野菜たっぷりスープ』にしよう」
肉は臭みを消すために塩と香草で下味をつけ、こんがりと炙る。
スープは骨からとった出汁に根菜を加え、じっくり煮込む。
香りが立ち込めると、冒険者たちの表情が一気に和らいだ。
「うおお……いい匂いだ!」
「腹が減ってきた!」
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完成した料理を並べると、試食が始まった。
「……っ、うまい!」
「魔物の肉とは思えない柔らかさだ!」
「スープも身体に染み渡る……戦いの疲れが取れるな!」
歓声が次々と上がり、あっという間に料理はなくなってしまった。
リナが嬉しそうに美月の袖を引っ張る。
「お姉ちゃん、みんなが笑ってる! すごいよ!」
カイも頷いた。
「……やはりあんたの料理は、人を元気にする力がある」
その言葉に、美月の胸は熱く満たされた。
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夜。
ギルド近くの宿に戻った三人は、遅い夕食を囲んでいた。
「今日は大変だったね……でも、なんだか楽しかった」
リナが笑い、カイも苦笑する。
「依頼の数が多すぎて困るな。だが、それだけ俺たちに期待しているってことだ」
美月は静かに頷いた。
「戦うのは大変だけど……こうして料理を通して人の役に立てるなら、私も嬉しい」
そして心の中で呟いた。
――前世で果たせなかった「家族を守る力」。
今は剣ではなく料理で、仲間を、町を、少しずつ守れているのかもしれない。
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こうして「黒棘狼討伐」と「料理の腕前」は瞬く間に町中へ広まり、三人は一躍評判の的となった。
依頼も次々と舞い込み、彼らの冒険はさらに大きな舞台へと広がっていく。




