表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎解きに誘われて  作者: 美雪
第五章 婚約指輪の謎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/94

81 ミリアムの案


「バカなことを言うな! ミリアムに罪をかぶせるなどありえない!」

「さすがに犯罪者になる気はありません。うっかりしていた、あそこにあるのを思い出したということにするのです」

「婚約指輪を発見して丸く収めたいのか?」

「私は外部の人間です。うっかりミスをしたところでここに来ることは二度とないかもしれませんし、困ることもなさそうです。でも、ここで働いている人にとっては違います。自分の人生を左右する大ごとです」

「偽りで誤魔化すべきではない! どのような理由があったのかはわからないが、犯罪行為かもしれない。このような問題を起こした以上、指輪を持ち去った者が責任を取るべきだ!」

「私も責任を取ります。高価な品の入った箱を放置してしまいました」

「だからといって、指輪を持ち去った者を庇うべきではない! うっかりでは済まされない! 犯罪者、あるいは共犯者にされてしまうことがわかっていない! それこそミリアムの一生に関わる! 絶対にダメだ! ミリアムは潔白だ!」


 常に冷静でいるようなレイモンドが強い感情をあらわにしていた。


 その迫力はかなりのもの。


 だが、ミリアムは怖くないどころか、とても嬉しかった。


「……レイモンド様は本当に私を疑ってはいないようです」

「当たり前だ!!!」

「おかげでより冷静になれます。誰の仕業なのかを知りたいのは当然のことですが、慎重さが必要です。灰色はあくまでも灰色。黒だと決めつけるわけにはいきません。白か黒かの証拠がなければダメなのです。だから、時間をください。考える時間も手がかりを探す時間も欲しいのです。クラリス、マーサ、メアリーがいない時に私が赤の客間の全室を調べる許可をください!」

「……三人を別室に連れて行けばいいのか?」

「モードの支度が終わったあと、他の部屋で待機させてくれませんか? レイモンド様も晩餐会に参加してください。その間に私が探します!」

「それはダメだ! 指輪を発見したとしても、一人ではミリアムが隠したのではないかと疑われてしまう! 私も一緒に探す!」

「ここは女性用の部屋です。モードの持ち物がたくさんあるのに、男性のレイモンド様が隅々まで探るのは紳士として不味い行為なのでは? リチャード様だっていい気はしませんよね?」

「……」


 レイモンドは無言のまま顔をしかめる。


 それはミリアムの指摘が正しいことをあらわしていた。


「絶対的な信用がある侍女を一人つけてくれませんか? その人と一緒に部屋を探します」

「ミリアムに疑いがかからないようにするには、二人はつけた方がいい」

「では、二人で」

「侍女長とマーリアにする。すでに事情を知っているからな。母上も許可してくれるだろう」

「では、それで」

「条件を付ける。絶対に不正はするな! ミリアムが他人の罪を被ることは許さない!」

「わかっています。レイモンド様がどう思うのかを知りたくて、念の為に聞きました」

「心臓に悪い話をするな!」

「すみません。でも、私を本当に信じてくれているのがわかって嬉しかったです。頑張ります!」

「困難な状況であっても正しい道を進め。そのために私が力を貸す」


 どうするかが決まった。





 モードの支度が終わったあと、クラリス、マーサ、メアリーは別室で待機することになった。


 そして、ダートランダー伯爵夫妻やモードの許可が出たため、ミリアム、侍女長、マーリアの三人で晩餐会が行われている間に赤の客間を隅々まで調べることになった。


「ここだけの話ですが、私はこの部屋にいた当事者の一人。婚約指輪は赤の客間にあると思っています。そして、具体的な場所についてもいくつか目星をつけています」


 作業を始める前にミリアムはそう切り出した。


「本当ですか?」

「では、すぐにその場所を探しましょう!」


 侍女長とマーリアの表情が一気に明るくなった。


「でも、慎重さが必要です。推測通りの場所に指輪があると、私がそこに隠したのだと思われてしまいます。違うと言っても信じてくれるかどうかの問題になります」

「確かにそうなってしまうかもしれません」

「ミリアム様の言う通りだと思います」


 侍女長もマーリアも、ミリアムの冷静さと慎重さを感じた。


「でも、神に誓って私ではありません。苦労してモードとリチャード様が婚約したことを知っています。二人の愛の証である指輪を隠すわけがありません。潔白を証明するためには赤の客間に指輪があるのかどうかを調べ、同時に誰がこのようなことをしたのかを示す証拠も探そうと思うのです」

「なるほど。指輪と犯人の証拠が揃えば事件が解決します」

「証拠とはどのようなものですか?」

「それはこの部屋にいた人の証言に嘘がないかどうかを示すものです。嘘をついていたらその人が怪しいです。逆にその人の言う通りだったら疑いが減ります。最終的にこの部屋にいた全員の潔白が強まった場合は、ドアに鍵がかかっていなかった間に第三者が来た可能性が強まります」

「単純明快です」

「納得しやすいです」

「私の身体検査は終わっているので、指輪を持っていないことは証明済みです。でも、二人が証拠を探している間に私がこっそり何かした、なんて思われたくないので、二人は私を見張っていてください。実際に指輪や証拠を探すのは私だけです」

「ミリアム様が不審なことをしないよう監視しておけばいいわけですね?」

「そうです。なので、一人でもいいと思ったのですが、レイモンド様が二人いた方が証明になると言ったので、お二人にお願いします。では、一番奥にある衣装部屋から開始します!」


 部屋に誰も出入りできないように廊下から入るドア、寝室のドアには内鍵をかけておく。


 三人が同じ部屋にいる状況にして、ミリアムの様子をしっかり侍女長とマーリアが監視するよう念が押された。


「私が懸命に探し、それでいて不審なことをしていなければ、私の仕業ではないことを証明する材料が増えます。なので、本当にしっかりと見ていてください!」

「わかりました」

「しっかり見ておきます」

「晩餐会は一時間から二時間だと聞いたので、急ぎます!」


 ミリアムは気合いを入れると、衣装部屋の端から順番に持ち物を調べ始めた。





「やっぱりないですね……」


 ミリアムは衣装部屋の中にあるものを全部確認したが、婚約指輪はなかった。


「ここは一番物が多いので隠しやすいはずです。私が知る限り、クラリスさんとマーサさんは何度も出入りしています。でも、婚約指輪はないです。確定です」

「金庫は見ないのですか?」


 侍女長が尋ねた。


「鍵がかかっていますよね? なので、調べることができません」

「開けましょうか?」

「えっ?」


 ミリアムは驚いた。


「開けられるのですか?」

「私は侍女長です。管轄する部屋の金庫は開けられます。ですが、どうやって開けるのかは教えられません。お客様がどうしても開けられないという緊急事態が発生した時に備えてのことなので」

「じゃあ、寝室に行くので開けてもらえますか?」

「わかりました。マーリアも寝室に」

「はい」


 ミリアムとマーリアは寝室に移動した。


「侍女長って一番偉いのですか?」

「ダートランダー伯爵邸における女性の使用人では最上位級です」

「級? 他にも偉い人が?」

「大奥様や奥様の側近は同等かそれ以上です」

「側近……ものすごく偉そうに聞こえます」

「実際に偉いです」

「開けました!」


 侍女長の声がしたために戻ると、金庫の扉が開いていた。


「中のものを全部出してもいいですよね?」

「モード様の貴重品も入っていますが、お部屋を調べてもいいという許可が出ているので大丈夫だと思います」


 ミリアムは金庫から宝飾品の箱や私物入れを全部取り出した。


「現在、金庫の中はからっぽです。見たところ、一般的な小型の金庫のようです。秘密の引き出しや隠し場所はないですよね?」

「ありません」

「じゃあ、ちょっと失礼して……こっちの箱はダートランダー伯爵夫人とマーリアさんが開けて確認していましたよね?」

「そうです。先ほど確認しましたが、婚約指輪はありませんでした」

「一応、確認します。申し訳ないのですが、私が蓋を開けるのでマーリアさんが閉めてくれませんか?」

「わかりました」


 ミリアムが次々と箱の蓋を開け、マーリアが次々と閉めていく。


 手分けしたことによって宝飾品の箱のチェックはすぐに終わった。


「モードは私物の宝飾品を持って来ているのですね」

「そうです」

「やっぱり伯爵令嬢です」


 高価そうな宝飾品、お洒落なデザインの宝飾品、普段につけるような小ぶりの宝飾品まであるが、婚約指輪はなかった。


「財布もお洒落です。高そうですね」

「それはリチャード様からの贈り物です」


 マーリアが答えた。


「一緒に買い物に行かれた時にリチャード様が購入されたのです」

「これも愛の品でしたか。実用的な贈り物はいいですよね。私もお財布を新調したいです」

「古い財布をご使用になられているのですか?」


 マーリアが尋ねた。


「子どもの頃から使っています」

「どんな財布なのでしょうか?」

「小さくて蓋をボタンで留める布製のお財布です。手作りです」

「ミリアム様は裁縫が得意なのですか?」

「全然。裁縫の本に載っていたので作ってみようと思って。でも、縫い目がイマイチです。かといって、お財布が必要になることはほとんどありません。それで十分なのですが、革や口金付きの財布に憧れます。パチンと音がするのがかっこよくて……」

「わかります。口金がついたデザインの財布やバッグは非常に人気があります」

「いつかお金を貯めて、安くてもちゃんとしたお財布を買いたいです」


 ミリアムは金庫の中身をどんどん戻していく。


「侍女長、婚約指輪用の箱ですが、空ですよね?」

「そうですね」

「それだけは私が持っていてもいいですか? コンソールテーブルの上に置いた時、マーサさんがどんな感じで発見したのかを再現したいので」

「わかりました。その箱だけはお預けします」

「ポケットに入れてもいいですか?」

「大丈夫です。私とマーリアで空箱であることを確認していますので」


 ミリアムは空箱をポケットに入れた。


「普通にポケットに入るサイズですね。目立ちません」

「そうですね」

「指輪用ですので」

「指輪を持っていくのであれば、箱ごと持って行けばいいのに。どうして箱を残したのかも謎ですね」


 侍女長とマーリアはハッとした。


「確かにそうですね……」

「小さい箱ですのでポケットに入れても目立ちません。その方が指輪も傷つきませんね」

「まあ、何か理由があったのだと思います」


 ミリアムはそれ以外のものを全部金庫に戻し終えた。


「これで衣装部屋は全部調べ終わりました。ちょっとした収穫があってよかったです」

「収穫があったのですか?」

「婚約指輪の箱のことですか?」

「あとで靴のことが役に立つかもしれません」


 侍女長もマーリアも困惑するように眉をひそめた。


「靴ですか? むしろ財布にご興味がありそうでしたが?」

「靴に関する情報で収穫があったということですね?」

「次は寝室を調べます。侍女長、金庫の鍵を閉めてください。私とマーリアさんは寝室に移動します」

「わかりました」


 ミリアムはマーリアと一緒に寝室に移動した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ