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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第五章 婚約指輪の謎

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77 消えた指輪



 レイモンド、ミリアム、モード、リチャード、ダートランダー伯爵夫妻、侍女長は赤の客間に急行した。


 赤の客間ではダートランダー伯爵夫人の侍女であるマーリア、モードの担当である侍女のクラリス、召使いのマーサ、ミリアムの担当になった召使いのメアリーが部屋中を確認していた。


「婚約指輪がないそうだな?」

「大変申し訳ございません!」


 クラリスが深々と頭を下げた。


「全力で探しております!」

「恋人の指輪の箱に入っているかもしれないわ!」

「私もそう思いましたが、恋人の指輪の箱の中は空でした。他の宝飾品と一緒になってしまった可能性もあると考え、全ての箱を開けました。でも、ありません。そうなりますと、どこかに落としてしまった可能性があります。全員で部屋の中を調べております」

「宝飾品の箱を全部持ってきなさい! 私が確認します!」


 ダートランダー伯爵夫人が厳しい口調で命令した。


「かしこまりました!」


 クラリスが衣装部屋の方へ行く。


「モード、婚約指輪をはずしたのはいつだ?」

「身分の高い方々を見送りして部屋に戻ったらすぐにはずしたわ。絶対に傷つけたくないから一番先にしまいたかったの」

「そのあとは?」

「他の宝飾品をはずして、クラリスが一つずつ確認しながら箱にしまっていたわ。そのあとで金庫にしまったわ」

「奥様、お持ちしました!」


 クラリスとマーリアが宝飾品の箱を多数持って来た。


「モード様の金庫にある宝飾品の箱はこれで全部です。他にはありません」

「モードも確認して」

「開けて確認するだけなら母上とマーリアでいい。モードやクラリスには婚約指輪があった時の状況とないとわかった時の状況を聞きたい」

「そうね。私とマーリアで調べるわ」


 ダートランダー伯爵夫人とマーリアは宝飾品の箱を順番に開けて中身を確認し始めた。


「クラリス、モードから部屋に戻ったあと、真っ先に婚約指輪をはずしたと聞いた。間違いないか?」

「間違いありません。一番大切なものですので、最初にはずされていました。それから他の宝飾品を順番にはずしました」

「すぐに箱にしまったのか?」

「いいえ。宝飾品は一旦トレーの上に置き、問題がないかを一つずつ確認してからしまいました」

「私もその様子を見ていたわ。婚約指輪は最初に確認していたわよね?」

「はい。最初に確認して箱にしまいました」


 そのあとはネックレス、イヤリングの順番だった。


 髪飾りは問題がないかどうかを確認するのに時間がかかるため、最後に確認したことが説明された。


「確認後はどうした?」

「金庫にしまいました」


 そのあとはドレスを着替える順番になった。


 金庫のある衣装部屋に出入りしたのはマーサだけ。


 クラリスは先にモードの髪型と化粧を直すことにしたため、衣装部屋には行かなかったことが説明された。


「メアリーはどうしていた?」

「メアリーはミリアム様の担当ですので、ミリアム様の支度をしていました」


 ミリアムは元々ダートランダー伯爵夫人の部屋で着替えることになっていたが、パーティーが終わった後の着替えはモードの部屋ですることになった。


 メアリーはワンピースの入った箱や宝飾品をしまう箱を持ってモードの部屋に来ると、ミリアムが戻ってくるまで応接間で待機していた。


 ミリアムが来たあとは寝室に移動し、宝飾品をはずしたりワンピースに着替えさせたり、髪型や化粧を修正したりした。


 それが終わると宝飾品の箱と衣装箱をまとめて、ダートランダー伯爵夫人の部屋へ持って行ったことが伝えられた。


「だが、正装することになっただろう?」

「そうです。ですので、私とマーサは慌てて衣装部屋から必要なものを運びました。メアリーは戻っていませんでしたので、モード様がミリアム様にダートランダー伯爵夫人の部屋へ行くよう言いました」

「……思い出しました。指輪がなくなったのは私のせいです」


 ミリアムが申し出た。


「どういうことだ?」

「帰るまでに見せてほしいと言ったので、モードが私に箱を渡したのです」

「そうだったわ! 婚約指輪の箱だけは金庫にしまわないでミリアムに渡したわ!」

「そうなると、婚約指輪を最後に見たのはミリアムだな?」

「見ていません」


 ミリアムはきっぱりとした口調で答えた。


「モードから受け取ったあと、暗いので隣の部屋で見るよう言われたために移動しました。するとドアがノックされてレイモンド様が来ました。正装で茶会に来るよう言いましたよね?」

「言った。あの時、ミリアムは何も持っていなかったと思ったが?」

「ドアを開けることになると思ったので、箱をコンソールテーブルに置きました」


 ミリアムはその時のことを思い浮かべた。


「伝言を聞いてすぐにモードのところへ行って伝えました。モードたちはすぐに支度を始めましたが、私のドレスと宝飾品はメアリーが返却しに行ってしまいました。なので、モードにダートランダー伯爵夫人の部屋へ取りに行くよう言われました。慌てていたので婚約指輪の箱のことを忘れてしまい、コンソールテーブルの上に置いたままにしてしまいました」


 そのせいで指輪がなくなってしまったのではないかとミリアムは感じた。


「すみません。あまりにも不注意でした。高価な品なのに置きっぱなしにするなんて……」

「母上の部屋に行ったあと、戻って来ただろう? その時に箱を回収しなかったのか?」

「急いで着替えないといけなかったので、すっかり忘れていました。ずっと置きっぱなしでした」

「他の箱にも婚約指輪はないわ」


 ダートランダー伯爵夫人が険しい表情で呟いた。


「間違えて違う箱にしまったわけではないわね」

「マーリア、コンソールテーブルの上にあった箱を持って来たのか?」

「いいえ。クラリスから受け取りました。寝室の方へ行ったので、金庫から箱を持って来たのだと思います」

「クラリス、どういうことだ? なぜコンソールテーブルの上にあった箱が違う場所にある?」

「……詳しくご説明してもよろしいでしょうか?」

「当たり前だ! 詳しく話せ!」

「レイモンド様とリチャード様が迎えに来られ、モード様とミリアム様はお茶会に向かわれました。私とメアリーは寝室で片づけをしていたのですが、衣装部屋にいたマーサが使用人用の化粧室に行くと言って出て行き、戻って来たあとに箱を持ってきました」


 その時、ミリアムに婚約指輪を見せるために箱を渡していたことをクラリスは思い出した。


「応接間にあったと言われたので、ミリアム様が置いて行かれたのだと思い、急いで金庫にしまいました。そのあとでマーリア様が来たので、金庫から箱を取り出して渡しました」

「マーサから箱を受け取った時、中身を確認したのか?」

「いいえ、開けていません。ミリアム様が応接間で指輪を見ていたことは知っていますし、モード様はお茶会で指輪をつけないと言っていました。指輪が入っている箱だと思い、すぐに金庫へ持って行きました」

「それで応接間にあった箱が金庫に入っていたわけか」

「そうです……」

「マーリアが来るまで時間があっただろう? どうしていたのかも詳しく話せ」

「部屋の片づけを終えたので、一時的に休憩することにしました」


 クラリスとメアリーは使用人用の化粧室に行くため、マーサに留守番を頼んで客間を出た。


 戻った後、クラリスとメアリーはモードやミリアムが戻るまで応接間で待機。


 マーサは小腹が空いたため、厨房に向かった。


 やがてマーサが戻り、三人で応接間のソファに座りながら休憩していた。


 そこへマーリアが来たため、金庫から婚約指輪の箱を出して渡した。


 そのあとまたしてもマーリアが来て、指輪が入っていななかったことを知った。


 クラリスは恋人の指輪の箱や他の宝飾品の箱を確認したがどこにも指輪がない。


 どうして指輪がないのかわからず、大変だということでマーリアが侍女長に知らせに向かった。


 侍女長がダートランダー伯爵夫人に伝えに行くと言ったため、マーリアは客間に戻ってそのことをクラリスたちに伝えた。


 必ず部屋のどこかにあるだろうということで、四人で一緒に探していた。


「……以上です」

「そうなると、婚約指輪の箱がコンソールテーブルの上に置いてあった時に指輪がなくなった可能性が高いわけだな?」

「そうだと思われます」

「本当にすみません……私のせいです」


 ミリアムは責任を感じずにはいられなかった。


「もしかしたら、その時に誰かが指輪を持って行ってしまったのかもしれません」

「屋敷内で盗難が起きたのであれば大問題だ!」


 ダートランダー伯爵が怒りの声を上げた。


「ドアに鍵をかけていなかったのか? 厳重にするよう通達したはずだ!」

「鍵をかけるようにはしていました。でも、ミリアム様が奥様のお部屋に向かった時だけはかけていませんでした」


 急いでモードの支度を変更しなければならないため、クラリスもマーサもドアの鍵をかけるために応接間へは行かなかった。


「返したものをまた持って来るだけです。すぐだと思いました。実際、ミリアム様とメアリーは短時間で戻りました」

「どの程度の時間だ?」

「十五分程度。長くても二十分程度だと思います。奥様の部屋から戻った時にミリアム様かメアリーが鍵をかけていればの話ですが」

「メアリーが鍵をかけていました」


 ミリアムが答えた。


「メアリーがノックをしたのですが、返事がなかったのでドアノブを回していました。すぐにドアが開いたので中に入り、ドアを抑えてくれました。私は衣装箱を持ったまま寝室へ向かいましたが、後ろでドアが閉まる音と鍵がかかる音がしました」

「ミリアム、箱をどの辺りに置いたのか具体的に教えてほしい」


 リチャードが尋ねた。


「ここです」


 ミリアムは赤いバラが生けられている花瓶の隣を指差した。


「箱を置くのに丁度良いと思いました」

「箱は小さい。大輪のバラと大きな花瓶があるせいで目立ちにくいかもしれないね」

「マーサを呼べ。どこに箱があったのかを聞く」


 衣装部屋で指輪を探していたマーサが呼ばれた。


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