26. 望まぬ結果3
「昨日、初めて仕事をしてみてどうでした?なにか感想とか」
「感想...」
シャーロットは少し昨日の活動を振り返ったあと、ふわりと微笑み、心に浮かんだままの言葉を紡いだ。
「…実は、私他人を治療するのは初めてで、練習ではいつも自分に傷をつけては治すという自己人体実験しかしたことしかありませんでした。ですが今日、私はリリーと一緒に多くの方を治療して気づいたことがあります。当たり前かもしれませんが、負った怪我もその方々の性別も、年齢も様々で。⋯それでも1つ、共通するところがあったんです。皆一様に治療後、笑って『ありがとう』そう言ってくれたんです」
(……ごめんなさい。これは半分本当で半分嘘です)
今の言葉は、確かに今世においては事実である。しかし、記憶を取り戻した前世において、治療した人から感謝は浴びるほどに貰ってきていた。村とはいえど住民は多かったため、村を歩けば大小はあれど怪我人と出会う、そんな場所だったのである。
────しかし、だからこそであろう。人からの感謝に慣れすぎて、その言葉の持つ温かさに気づいていなかったのだ。人の心のケアまでできるのかも!...まぁ、まだ見習いなんですけども」
前世では、『人のため』という思いが治療の数を重ねるにつれてなくなってしまった。怪我人がいれば治療をする。それが自分の役目、全うすべき義務だと、そう思うようになっていたのだ。
その考えに問題が生じているわけではないが、理想形とは言い難い。オールマイティというからには、全てにおいて完璧であるべきだ。今世にはせっかく前世の経験というアドバンテージがあるのだから、更なる高みを目指そうではないか。
そう密かに決心するのだった。...そう、実はシャーロットは普段の言動から受ける印象と異なり、かなりストイックな完璧主義者なのだ。
「あぁ!そういえば、リリーの治癒能力ってすごいんですね!昨日隣で見てて正確さ、素早さ、丁寧さどれも優れているように思いました!」
(はっ……!)
「あ、いや、べ、別に他の聖女を見たことありませんし?私と比べてーってだけですけど!」
慌てて付け足したため少し不自然かと思ったが、フィンは怪訝な顔をして見てくるだけでなんとか言及から免れたらしい。
ほっと溜め息をつき、冷や汗を拭った。
罪悪感がずしりとのし掛かってくるが、致し方ない。
シャーロットの頭には兄、ジェラルドの『くれぐれも前世の記憶のことは秘密に』という耳にタコができるほど言い聞かされた言葉が頭によぎっていた。
(むぅ...嘘つくのって難しいのね。...フィン様なら話しても問題ないのでは───い、いえ!シャーロット・ライトは約束は守る女よ!これも諜報員になるための練習と思えば...!)
毎週土曜日8時投稿予定です!変更(主に書くのが追いつかなかったら)があったらまたtwitterの方でご報告します…!




