27.思わぬ出会い
仕事を終えて、帰ってきたとある日。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいまフローラ!今日も楽しかったわ!」
「それは良かったです。主はまだ戻られていませんが、どうされますか?」
「先に森に行っておくわ!お兄様に伝えといて!」
聖女見習いになってからも、兄による剣の稽古は続いている。八か月前のように、大規模の群れで攻められたとしても、スライムくらいなら倒せるくらいには強くなったと思う。
今から何をしようかと考えていると、いつの間にか服を着替え、森についていた。
「んー。素振りから始めようかし…」
シャーロットはそこで何かに気づいたように口を閉じる。
そして、短く息を吸って素早く木の上へナイフ投げた。
「うおっ!」
すると、何もいないはずの木の上から誰かの声が降ってきた。
(やっぱり誰かいたわね…)
その声の主は少ししたあと、仕方なさそうに飛び降りてきた。
(すごい、無駄のない身軽な動きだわ)
普通、自分の傍の木に誰かいたのなら怖がってもおかしくないのだが、シャーロットはどこまでもシャーロットなのである。
降りてきた男にすぐさま剣を向けると、男は手を上げて降参を示してきた。
「あなたは誰?ここで隠れてた目的は?」
害意は無さそうなため剣を下ろしたが、それでもなお警戒していると、男は手をひらひら横に振り、へらりと笑う。
「そんな警戒しなくても大丈夫だぞ。どっかのお前を大事にしてるJさんから頼まれてお前を安全を見守ってただけだから。おっと、本人には秘密って言ってたか?まぁ、聞かなかったことにしてくれ。あぁ、そうだ。俺の名前はアレクシスだ」
「は、はぁ」
軽い口調で一人でどんどん話してしていくアレクシスに少し圧倒されながら、シャーロットは思考を巡らせる。
(お兄様が頼んだの?いや、けどお兄様、私の事になるとかなりの心配性だものね…なかなかにありえるわ。…ただ)
「…確かに、お兄様があなたにお願いしたのは事実だと思うの。けど。それってあのお兄様が安心して私のことを頼めるほどにそういう行動に慣れている人間、ということとも言えるのよね。だからもう一度聞くわ。あなたは何者なの?」
兄はシャーロットに関わることについて誰かに頼むとき、本当にその仕事について信頼している相手にしか頼まない。そんな兄が頼んだ相手など、十中八九只者ではない。
「……。はぁ、妹ってのはこんなにも兄の事を理解してるもんなのか?...あー、確かに俺はあまり普通の人間とは言えないかもな。あれだよ。ちっと裏の方で動くのを専門にしてるんだよ。『コンバラリア』、こう言ったら分かるか?」
「コ、ンバラリア...」
「ジェラルドの溺愛する妹だし、お前の性格を聞く限り大丈夫だとは思うが、絶対に情報は漏らすなよ」
アレクシスは深紅の背中がぞくりとするような鋭い目でシャーロットを見る。
「お...え...く...」
「なんて?」
そんなアレクシスに対して、シャーロットは蚊の鳴くような声で呟いた。
これは誰が見ても睨むアレクシスに怖じ気づいた姿にしか思えないだろう。実際、アレクシス自身も少し睨みすぎたかと思ったところだった。
だが、それらの予想を全て裏切ってシャーロットは叫んだ。
「...その技術、教えてください!!」




