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Le commencement de l'amour  作者: 篠宮 英
5/5

♪×5 苦いお酒。

更新しました。

 はぁ~、どうして休日ってこんなに短くてすぐに過ぎちゃうんだろ?

 もっと常備菜とかの作り置きとかしたかったのに。


 自分に対する少しの苛立ちと無念さに溜息を吐きつつ、カーテンを閉めてないリビングの出窓から外の景色を見てみれば、外は無情にも少しもの悲しさを感じさせる茜色に染まっていて、あと少しでお月様が完全に空の支配者に切り替わることを示してる。


 それは私にとっては休日の終わりを告げるものであって、でもだからと言って悲観するものでもない。けど、明日だけはちょっと気が重いかも。

 だってだって、普段知り合いの人のプライベート(しかもラブシーン)に遭遇する確率って少ないのに、何で職場の保護者の生々しい光景を目撃しなきゃなんないの?


 え?単なる不運な偶然だって?

 それが解ってるから気が重たいんじゃないの。


 自分で自分を罵倒しながらも、とりあえず手だけは大量に作った唐揚げの油を軽く切って、南蛮酢と葱ソースの中に漬け込み、茄子の素揚げは醤油ダレに。

 あとは適当に保存容器に適当な量を小分けにして冷蔵庫に入れる。


 そうしてる内にも時間は無情にも過ぎていくわけで。


 こんな日は特に何もかもが面倒になって自分の分だけの夕飯を作るのが面倒になる。だからってことではないけど、今日みたいな日は私は外に飲みに行くことにしてる。

 そうすれば、夕飯も食べれて気分の憂さ晴らし出来るし、一石二鳥でしょ?


 っていう安易な考え方をした私が莫迦だったのよね・・・。


 そうよね、今日はまだ週末だもんね。

 前から雑誌でチェックしてあったおしゃれなBarに入った途端、目に飛び込んできたのはおしゃれなお客さんという名の保育園関係者。


「厄日なの...?厄日なのね?」


 大袈裟という事勿れ。

 だって、そうとしか思えないんだもの!!

 なんだって今回の休みに限って(まだそうとは限らないかもだけど。)よりによって欝な気分の原因ともいえるご夫妻と遭遇するの?


 と、込上げる口惜しさと怒りで地団太を踏みたくなる気分を必死に心の中で押し宥めてる時に私はふと、昔別れた恋人に言われた言葉を思い出し、スぅーっと、急に冷静になれた。そしてそのまま私はカウンター席に座り、軽食と軽めのカクテルを注文し、結局私は店が閉まるまで飲み続けた。


 なのに、私は不思議と正常でいられた。そんな私の状態に、Barのオーナーや店員も驚いていたけれど。


 酔わなかった、酔えなかった理由は自分でも嗤いたくなるほど理解できていた。


「因果なこともあるのね…、リュウイチ」


 それは元カレに別れの際に言われた言葉が理由だった。


「確かにリュウイチの言う通りだったわ。」


 ――私は自意識が過剰だったのかもしれない。


 夜明けを告げる朝陽を浴びながら、私は出勤の準備をするために家路を急いだ。まさか彼が私に気づいていたとも知らないで。

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