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第十三話

潮星の試練、海の深さに耐えられるか


福禄寿が島を目指し海へ辿り着いた日。


海は静かに波を引いた。

まるで彼を拒むように。


 福禄寿は杖をつきながら海を見つめる。

「海よ」

「私は争いに来たのではない」

だが海は答えない。


 その代わり潮が乱れた。

海面の下に巨大な影が生まれる。

やがて深海から声が響いた。

――星の神よ。

――お前は天を知る。

――だが深さを知らぬ。

――海を渡る資格があるか試そう。


 福禄寿は静かに頷いた。

試練。、潮星の迷い。

夜が訪れた瞬間、空と海の境界が消えた。

星は海に映り。

海は星を呑み込み。

上下すら分からなくなる。

福禄寿は星の神。

本来なら星を見れば道は分かる。

しかし海は星を偽っていた。

映る星は揺れ。

位置を変え。

嘘の道を示してくる。


海は問う。

――お前は真実を見抜けるか。

福禄寿は焦らなかった。

一本一本の星を見つめ続ける。


 そして気づく。

「本物の星は揺れない」

偽りの光を捨て。

真実だけを辿った時。

迷宮は静かに消えた。

海は小さく波を寄せた。


 ――よく見抜いた。

試練、寿命の渦。

巨大な渦潮が福禄寿を包み込む。

その中には無数の命が流れていた。

長く生きる者。

短く散る者。

まだ生まれぬ命。

すでに消えた命。

あらゆる寿命が混ざり合う。


 海は問う。

――寿命を司る者よ。

――迷わず立てるか。

福禄寿は目を閉じた。

流れる命を感じる。

悲しみも。

喜びも。

後悔も。

希望も。

すべて受け止めた上で答える。

「寿命とは長さではない」

「どれだけ深く生きたかだ」


 その瞬間。

渦は静まった。

命の光が福禄寿を包む。

海は静かに頷く。


――よくぞ本質を忘れなかった。


試練、未来の海。

海は三つの未来を見せた。

争いに沈む世界。

命の尽きる世界。

そして七柱が揃う世界。


 海は問う。

――どれが正しい未来だ。

福禄寿は長く沈黙した。

やがて微笑む。

「未来に正解はない」

「未来は選ぶものではなく」

「歩む者が作るものだ」


 海はさらに問う。

――ならば何を望む。

福禄寿は迷わなかった。

「人々が笑う未来」

「そして七柱が揃う未来だ」

海は大きく波を揺らした。

それは拒絶ではない。

祝福だった。


海は福禄寿の杖を包む。

杖の先に潮の紋様が浮かび上がる。

潮寿の杖。

寿命の流れを読み。

星の巡りを整え。

未来への道筋を照らす神器である。


 福禄寿は深く一礼した。

「海よ」

「その深さを忘れぬ」

海は穏やかに答えた。

――行け。

――お前を待つ者たちがいる。

潮風が吹く。

海が道を開く。

福禄寿は新たな杖を手に歩き出した。


遥か彼方。

島の影が見える。

そしてその先には。

まだ出会っていない仲間たちが待っていた。

光は、確かにそこへ続いていたのである。

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