第十一話
潮風の中の琵琶の音
島に降り立つ
海が開いた“道”弁財天の舟が島へ近づくと、
海は静かに割れ、
潮の道が彼女の前に伸びた。
それは恵比寿が通った道と同じ。
しかし、弁財天のために開いた道は
どこか柔らかく、優しい光を帯びていた。
潮風が彼女の髪を揺らし、
琵琶の弦が自然に震えた。
「……あなたたちが、私を呼んでいるのね。」
海は答えるように波を寄せた。
三柱が待つ浜辺の岩屋。
そこにはすでに三柱が立っていた。
海の光を背負う 恵比寿
大地の慈悲を背負う 大黒天
雷の覚悟を背負う 毘沙門天
三柱は、遠くから近づく舟を見つめていた。
恵比寿は潮の匂いで気づいた。「……来る。」
大黒天は頷いた。
「第四の柱。水と音を司る者。」毘沙門天は静かに構えた。
「心を整えよ。女神は“音”で心を見抜く。」
琵琶の音が浜に降りる舟が浜に触れた瞬間、
弁財天は琵琶を抱え、
一音だけ弾いた。
その音は――
潮風を震わせ、
砂を揺らし、
空の色を変えた。
恵比寿は思わず息を呑んだ。
「……海が、喜んでる。」
大黒天は微笑んだ。
「音に慈悲がある。」
毘沙門天は目を細めた。
「そして、強さもある。」
弁財天は舟から降り、
三柱の前に立った。
弁財天、三柱と対面する弁財天は恵比寿を見て微笑んだ。
「あなたが……海の子ね。」
恵比寿は頬を赤らめた。
「う、うん……海が、あなたを歓迎してる。」
次に大黒天へ視線を向ける。
「あなたの音……優しいわね。」
大黒天は深く頷いた。
「あなたの音は、心を潤す。」
そして毘沙門天へ。
弁財天は一瞬だけ表情を引き締めた。
「あなたは……雷の音。」
毘沙門天は静かに答えた。
「そしてあなたは、水の音。」
二柱の間に、
一瞬だけ緊張が走った。
しかし弁財天は微笑んだ。
「水は雷を恐れない。
雷は水を割くけれど……
水は必ず、また流れる。」
毘沙門天はその言葉に、
初めて柔らかな笑みを見せた。
四柱の共鳴弁財天が琵琶を弾くと、海が揺れ、大地が震え、空が光った。
四つの力が交わると、
島の空に七色の光が走った。
恵比寿は胸の奥が熱くなるのを感じた。
「これが……四柱が揃った力……」大黒天は静かに言った。
「まだ七柱のうち四つ。
だが、世界はすでに動き始めている。」
毘沙門天は宝塔を輝かせた。「残る三柱も、この島へ向かっている。」
弁財天は潮風を受けながら言った。
「ならば……迎えに行きましょう。」
四柱、国生みの丘へ四柱は並んで歩き出した。
海の恵比寿
大地の大黒天
雷の毘沙門天
水と音の弁財天
向かう先は――
国生みの丘。




