第14話 兄妹作戦会議
嵐のような夕餉が終わり、ねむが帰路についた。
ほんの目と鼻の先の家だというのに、彼女の後ろ姿が夜闇に溶けていくまで、俺は玄関先で見送っていた。
風呂上がりの頬は、冷たい夜気に触れて淡い桜色に染まっている。
その色が、瞼の裏から離れない。
小さく頭を振り、引き戸を閉めた。
階下では、仕事を終えて帰宅した父さんと母さんが、遅い夕食を取りながら笑っている。
その声を聞きながら、俺とユウは二階の大広間へ上がった。
ここからは、兄妹の作戦会議だ。
カタカタと、キーボードを叩く音だけが響く。
画面にはきょうだいの成績一覧。ユウの画面には、学校の行事予定や配布物が並んでいる。
「……ねえ、お兄ちゃん」
しばらくして、ユウが手を止めた。
「ナナとレオの成績。富山とか、高伏とか……行けそう?」
「余裕。A判定」
「レオには言った?」
「ああ。さっき風呂で」
「なんて?」
「俺たちと同じ、冰渼ノ江に行きたいってよ」
「はぁ……やっぱり」
ユウが長く息を吐いた。
「ナナも、なの」
「……マジかよ」
俺は椅子の背もたれへ体重を預けた。
「これさ……私が冰渼ノ江に入学したからなのかな?」
ユウが膝の上で指を組む。
「違うだろ」
「そうなのかな……」
「お前はこれから音大でも留学でも、行けるところまで行け」
「……でも」
「それが弟のコタツに見せるべき背中だろ?」
ユウは少しだけ黙り、それから小さく笑った。
「……そうなのかな」
「ナナには俺からも話す。父さんと母さんにも相談しよう。まだ時間はある」
「うん。私もレオにもう一回言ってみる」
「頼むわ、妹」
「任された、兄」
しばらくすると、部屋にはまた、キーボードを叩く音だけが残った。




