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聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
転移した先での出会い

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9話 この世界について①

 


「護衛対象を危険に晒した上に、侍女にも怒られる騎士と聖獣って!」

「それはほんっとすみません!」

「いや、怒ってはいないのよ。笑えたぐらいだし。でもなんであんなことに?」

「最初は普通にボールで遊んでいたんだけど、ゴムボールもこっちにはないし、感覚が掴みにくいみたいだったから魔力乗せてみたらって言ったらああなった」

「もともと、俺とロクは細かい魔力操作が苦手でよく団長にも怒られるんですけどね」


 頬をポリポリと掻く仕草がなぜか似合うロキ君。


「だから、これからロキとロクはボクが鍛えてあげようと思ってる!」

「「「えっ」」」

「ダメなの?」

「まさか! めちゃくちゃ嬉しいです!」

「本当にそんなことして大丈夫なの? 2人も仕事があるし、怪我させたら大問題よ」

「だって結界があるとはいえ、ママの護衛が弱いなんて絶対許可できないよ」

「……モカ様から見たらみんな弱いんじゃ……」

「そうよ、アナの言う通りよ」

「いえっ! オレとしてはすごくありがたいのでぜひこのまま受けさせてください! ロクも同じだと思います」


「お願いします!」と頭を下げられたら仕方がない。


「じゃあ、私とモカの散歩の時間か、2人の勤務時間に合わせて怪我しない程度でね? モカも約束できる?」

「うん!」

「はぁ、困ったことに大きくなっても可愛らしいままね」


 モカの首周りをわしゃわしゃしてからおでこにチュってしてるとモカもベロっと舐めてくる。ポメラニアンのときとは違う勢いにはいまだ慣れない。


「それでは、そろそろお時間です。お部屋をお借りしておりますのでそちらへ移動しましょうか」


 殿下が用意してくれた部屋へ四人で移動する途中、何人もの人に遠巻きにされたり、ジロジロと視線を感じて居心地が悪くなる。その度にモカが軽く威嚇してくれているけれど、どこ行ってもきっとこんな感じなんだろうな。


「トワさん、すみません。このことは報告しておきますので」


 ロキ君が申し訳なさそうにそう言ってくれたけど、大丈夫と答えておいた。私が気にしなけれは良いだけのことだ。


 しばらく歩き続けていると「ここです」と案内されたのは壁一面の本棚に囲まれた部屋だった。大きな机と椅子が並び、黒板まである。


「ここは別宮の図書室です」

「ということは殿下専用のものでは?」

「そうではありますが、殿下がこちらを使えば本を取りに行く手間が省けるからとのことで使用許可を出されました。この部屋の周囲はトワ様がいらっしゃる間は誰も近づけないようになっております」

「そうなんだ、そこまで気遣ってもらって申し訳ないわね」

「ここは警備もしやすいからオレたちからしてもやりやすいんですよ」

「それならいいんだけど。ロキ君は私が勉強中はどうしているの?」

「中で待機していますよ。外には別の騎士が付いていますし。その者たちはモカ様とトワ様と直接会うことはまだ許可されていませんので、顔を合わせても会話はされないようお願いします」

「え、私たちと話すのに許可が必要になっているの?」


 モカはともかく、私はそんな大層な存在じゃないのに許可が必要だなんて申し訳なくなる。


「あの家が見えない者は全員そうなっています。なにかがきっかけで見えるようになった場合には許可がおりるかもしれませんが、基本的には我々だけが会話できると思っていてください」

「そう決まってしまったならわかったわ、従います。じゃあ、アナは先生で、ロキ君は警備で、モカは?」

「お昼寝!」

「お昼まだだと思うよ?」

「お昼ご飯には起きるから起こしてね!」


 そう言ってモカは一番陽当たりの良さそうな窓際にポンと飛び乗り、丸くなってすぐに寝息をたてだした。そのスピードに三人で驚きながらも、各自配置につくことにする。


 アナがお昼までに教えてくれたことをまとめるとこうだ。


 私とモカが転移したのは、大陸の中央にある領土的には大きな国ではないけど、魔法大国として知られているバナード王国。

 国民のほとんどが少なからず魔力を持っており、魔法ありきの生活をしている。他国でも魔法を使える者はいるが、この国ほどではないのだとか。必然と魔道具というものが続々と開発され、それが他国に輸出もされていて、莫大な利益をもたらしている。


 この国から見て左上にある大国は、ギルフォード帝国。第二王子殿下が留学されているそうだ。第二王子殿下は、リオレス殿下が大好きらしく、将来王となる彼を支える勉強のために留学されているらしい。外見もよく似ているとのこと。あんな顔が兄弟で二人もいるのか。この国、美形の密度がおかしい。


 それ以外には、ギルフォード帝国の左側に軍事国家ヴェリタス王国、その隣に獣人国アニマーリア王国がある。その二か国の間にあるのが瘴気の平原と大森林だ。これがあることによって獣人国は他国との関わりが少ないのだとか。


 瘴気の平原と大森林はかなりの土地の広さがある。この土地が欲しい国は多いが、入れば出てきた者はおらず、詳細もわからないらしい。軍事国家や人より丈夫で強い獣人国ですらどうしようもできないため他国はほぼ諦めの境地らしいけどね。……というか、そんな土地に私とモカの二人で行くことになっているのか。

 少し不安になりながらも、アナの話に意識を戻す。


 他には、観光大国で花の国と呼ばれているヴィルセンナ王国。ここはバナード王国から見ると真上、つまり隣国である。ドワーフやエルフもいるが、それぞれ各国に集落を持つのみで国家は持たないとの返答だった。


「ここまででなにか質問などありますか?」

「この中で入国が難しい国とかあるの?」

「一番難しいのはやはり獣人国でしょうか。瘴気の土地がありますし、エルフ族も国という形を持たないぶん関わりが難しいと聞いています」

「なるほど。それにしても、アナは物知りだね」

「私の実家は商会を営んでいるんです。だからあれこれ子どもの頃から教えられました」

「なるほど! 知っていて損することではないもんね。あと、もうひとつ質問なんだけど、他国へ行く時に、身分を証明するものって必要だったりする? 私の世界ではパスポートって呼んでいたんだけど」

「身分証明は国だけでなく、地域によっても必要なところがほとんどです」

「え、そうなの! それなら私はどこも行けないわね。というかこの国でも家すら借りられないんじゃないの?」

「そちらは殿下がご準備されると思いますよ」

「そうかなぁ」

「必需品ですからね。では、他になければ続けても?」

「はい、お願いします」


 この世界は、一年12か月、一日24時間、一ヶ月28日、一週間7日、6日働いて1日休みらしい。祝日は建国祭だけ。日本でいう建国記念日みたいなものかな。ブラックな世界だ。日本の労働環境を笑えないかもしれない。


 季節は、日本のように四季はない。でも暑い時期は酷暑らしい。酷暑かぁ……日本とどっちが暑いんだろ。エアコンのある家付きで本当によかったわ。


 それから教わったのは大事な貨幣価値。


 銅貨1枚が10円、大銅貨1枚が100円、銀貨1枚が1,000円、金貨1枚が1万円、白金貨1枚が10万円だ。

 白金貨は商会やそういったお店で経営でもしない限り滅多に見ることはないそうだ。

 パン一個100円の世界で、月収が金貨10枚〜15枚(10万〜15万円)あれば、平民として普通の暮らしが送れる感じだろうか。


 ますます私が持っている金額の異常さが理解できた。神様、やりすぎです。

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