SS バナード王国面々
「ギルフォード帝国、広すぎない?」
「ここからヴェリタス王国の王都までさらに3日もかかるなんて信じられないな」
バナード王国からここギルフォード帝国まではヴィルセンナ王国を経て馬車で六日。そこからもう一日をかけて、一行はようやく帝都へ到着した。帝都はまるで要塞のような造りで、その頂点に石造りの頑強な城が聳え立っていた。華美さを排した帝国の城は、地下に広大な錬金術研究所を擁する巨大な要塞となっているらしい。
「ロキとロクは、ギルフォード帝国の帝都に来るのは初めてか?」
「はい。第二王子殿下をお迎えしたのもバナード王国側の国境付近でしたので」
「なるほど。ディルクは何度か来ているだろう?」
「そうですね。なので、ここの騎士団には会いたくありません」
「え、団長が勝てない相手いるんですか!」
「違う、逆だ。稽古をつけろとうるさいんだよ」
「そうそう、ずっとディルクを国へ来いって誘っているぐらいだしね」
「へぇー、さすが団長。じゃない、ディルク様、じゃない、ディルク先輩」
「一体いつになったらお前たちは慣れるんだ」
ディルクは二人を見て呆れた。
「無理です! 慣れません!」
「もういいじゃないですか、団長で」
「ダメだ、いまの間に直しておけ」
「えー、じゃあ、アナはなんて呼んでるんだ?」
「わ、私ですか? 私はその、団長様ですね……」
「ほらっ! 団長は団長っぽいからこれで我慢してください!」
「こら、お前たち。出迎えが来たぞ」
リオレス以外、全員が後ろに控えた。前方には、この世界最大国の矜持を背負う、威風堂々とした皇帝が姿を現した。三十代半ばのはずだが、ずいぶんと若く見える。物腰が柔らかそうだが、実際は見た目ほど甘くはないことで知られている。
ここからまた腹の探り合いが始まり、しばらくの滞在を余儀なくされた。
ディルクは一刻も早くトワの元へと行きたいのだが、外交のためそれが叶わなかった。憂さ晴らしに使われたのは稽古を頼んできた騎士団の連中だった。
それを双子とアナは、完全に八つ当たりだなと思って見ていたのだった。




