↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
第二章 異世界での新生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/85

68話 保護②

 


 リビングへと戻りエレンちゃんを見ると、金色のウェーブがかった髪がきらきらと輝き、肌も真っ白。深窓のお嬢様そのものだった。


「あらまあ。エレンちゃんは可愛いわねぇ。将来も絶対可愛く、ううん、美人になるわね」

「ええっ」

「エレンちゃんのことも聞いていいかな? さっき隣国の辺境伯家のお嬢様だと教えてくれたけれど、どうしてアニマーリア王国へ?」

「お父様の視察に付いていっていたの」

「でもこの2か国間を抜けるのは大変でしょう?」

「父の船で辺境伯家の騎士団も同行していたからなんとか辿り着けたの。それから護衛の者と一緒に領地の街を見て回っていたら私だけ人混みではぐれてしまって。気付いたら路地裏に迷い込んで、そのまま……」

「そっか。辛いこと思い出させてごめんね」


 彼女は私よりモカのほうが良いらしい。モカにぎゅっと抱き着いた。モカは少し複雑そうな顔をしていたけれど、大人しくされたままだ。


「ボクが狼煙をあげてるからもう大丈夫だよ。明日には辺境伯家へ帰れる」

「え、そうなのですか!?」

「ボクは聖獣なんだ。だから多少のことはどうとでもできるから、君も転移で送り届ける」

「聖獣様!? わたしったらなんと失礼なことを!」

「モカは気さくだから大丈夫よ。害を加えなければ」

「そんなことする人間はいないと思います! この不思議な空間もなぜなのかようやく理解できました」

「ここは君たちが良い子だから入れてるのよ。だからここは安心だからご飯食べてぐっすりよく寝ようね」

「うん、ありがとう! あの、あの子も帰れる?」

「あー、彼は帰るところがないのよね。だからどうしようかと考えている最中」

「それなら、一緒に連れて行って! わたしが帰ったあと父に聞いてみる! だってわたしを助けてくれたんだもの」

「そうだね。でも彼の意見も聞いてあげてね?」

「わかったわ!」


 エレンちゃんはきっとシロ君と離れたくないんだろうな。微笑ましいけれど、胸がちくっとした。なんだろ。胸に手をあてて首をかしげるようにしているとちょうどそのシロ君がお風呂から出てきた。


「……気持ちよかった」


 ふにゃりと微笑んだ彼を見て、三人とも時が止まったかのようになる。

 真っ白でところどころ銀色に光る前髪が分けられて明らかになった彼の素顔。髪と同じ色の眉にバサバサの睫毛。大きなくりくりとした澄んだ蒼い目。やはり聖水の効果が出たようだ。とんでもない美少年が現れたものだわ。


「あの……?」

「あ、ごめんごめん! 気持ち良かったようで安心したわ。2人ともドライ魔法が使えるのね」


 二人をよく見ると髪はすっかり乾いていた。ディルクがいない今の私は疲れ切って動けない限りはモカに頼らず、ドライヤー頼みだ。


 そのあと、二人とも特に希望もなかったから夕食はモカ希望の親子丼になった。二人にはご飯も柔らかめにして食べやすくしてみたんだけれど、とても好評だった。エレンちゃんにはうちの料理人に教えて欲しいと言われ、やはり金持ちの家には料理人がいるんだなと感心する。


「ベッドはこの部屋のを使ってね」


 二階のもう一部屋にシングルベッド二台を急遽設置し、二人を案内する。


「2人1部屋で申し訳ないんだけど、私とモカは下の寝室にいるからなにかあったらいつでも来てちょうだい。お水も置いておくから好きに飲んで。起きてくるのも好きな時間で構わないからね」


 エレンちゃんは素直にベッドで眠れることを喜んでいるが、シロ君は戸惑いのほうが大きく、ベッドの上でそわそわしていた。


「ここは誰かが入ってきたりもしないし、今はボクとママしかいない安心できる場所だよ。だからゆっくり眠るといい」


 モカがそう話すと、二人とも嘘みたいにこてんと寝た。「えっ」と思わず声に出したら、モカから魔法をかけたと言われて納得する。


 子どもたちには聞こえないよう小さな声でモカと話しながら階段を下りていく。


「モカ、今日も1日ありがと。2人を助けてくれてありがとうね」

「ママもお疲れ様。奴らは外で縛り付けてあるから安心して。絶対取れないし叫んでも誰にも聞こえないから」

「あの子たちには聞かせたくないから良かった」


 これから奴らに尋問しないとね。



 ◇◇◇◇



「さてっと、洗いざらい吐いてもらいましょうか」


 モカが犯人たちを起こし、自白するよう魔法をかけた。おかげで簡単に状況がわかった。

 この男たちは、孤児院から子どもを引き取って売る役目だったらしい。魔力が多い子や、白に近い髪や肌を持つ子は高く売れると言われ、常日頃から人身売買を繰り返していた。


 その取引には教会と孤児院、それからヴォーン辺境伯家が関わっていて、王家の人間から指示が来ることもあったという。どうやら、とことん腐っている国のようだ。これは早急に魔物たちへさらなる調査を依頼したほうがよさそうだと判断し、モカがその場で念話で依頼してくれた。


『ママ、シロの血筋については創造神様に確認してくるよ。この人間たちから聞けるのは、売買のことまでみたいだから』

『お願い。ご両親のことと、記憶がない理由も分かるなら聞いてきてほしい』

『うん。先に、こいつらのシロとエレンに関する記憶は消しておくね』


 少なくとも、こいつらの口からシロ君とエレンちゃんの存在が伝わることはなくなった。孤児院や教会については、引き続き調べる必要があるけれど。


 モカが犯人たちを再び眠らせ、そのまま創造神様のところへ、私は自宅へと戻った。

 モカが創造神様のところへ行っている間に、子どもたちの様子を見にいく。二人ともよく眠っていた。その姿に少しだけ安心して、リビングへと戻った。


 家事を済ませながらしばらく待っていると、モカが帰ってきた。

 戻ってきたモカから聞いたのは、思っていた以上に複雑な事件と、シロ君の重い過去だった。


 白銀狼族には、魔界へ渡ったものと、獣人国に残ったものがいたという。獣人国に残った一族は徐々に数を減らし、血筋は途絶えたと思われていた。けれど、実際にはシロ君の父親が生きていたのだ。


「シロの父親は人間の娘と駆け落ちして、人里離れた場所で暮らしていたんだって。でも、父親の白い髪と尻尾を見た人間が、王家に知らせた」

「……それで、狙われたの?」

「うん。いまの王家もヴォーン辺境伯家も虎の獣人なんだ。その一部の者たちが、白銀狼族の血筋を支持する者が出れば、自分たちの地位が危うくなると考えたらしい」


 そこまでして守りたい地位ってなによ。

 静かに暮らしていた家族を襲って、子どもまで売り物にして。同じ目に合わせてやりたいぐらいだわ。


「ご両親は、そのときに?」

「事故に見せかけて殺されている」

「そう……」


 モカはあっさり言ったが、声音には侮蔑がこもっていた。


「シロも狙われたけど、獣耳も尻尾もなかったから、血筋を受け継いでいないと判断されたんだって。髪も汚れていて白には見えなかったのかも。その後、教会を通して孤児院へ送られた」

「見た目だけで決めたのね。モカの鑑定では分かったのに」

「うん。その場では見抜けなかったんだね」


 生き残れたことはよかった。けれど、その先で待っていたのが虐待に近い扱い。いや、虐待だ。


「記憶は? それも孤児院で何かされたの?」

「違うよ。あれは両親が、シロを守るために封じたものだって」

「戻せるの?」

「そういう魔法は、かけた本人でないと解けないんだ。だから、ボクにもどうしようもないんだ。創造神様ならできるだろうけれど、それをシロが望むかどうかはわからない」

「そう……でもご両親はそうまでしてシロ君を守りたかったんでしょうし、無理には聞けないわね。このことに関しては私が口を挟むことではないのかも」

「そうだね。本人が知りたくなったら聞いてくるんじゃない? ボクたちはその時まで待とうよ」

「そうね」


 まずはここで落ち着いて暮らせるようにしよう。その先のことは、シロ君の気持ちを聞きながら考えたい。


「それから、ここでもうひとつの出会いがあるって言われていたでしょう? ママもボクもディルクも関係してるって」

「創造神様が仰っていたわね。もしかして、あの子?」

「たぶんそう。ボクにとってっていうのがよく分からないけれど、なんとなく長い付き合いになりそうなのは感じてるんだ。ボクと長い付き合いということは当然ママもだけど」

「ディルクはどうして?」

「あの子は白銀狼族の血を引く子だ。それに、魔物を含む異種族の意思を理解して自分の意思も伝えられる全言語理解を持っている」

「私の全言語理解とは違うの?」

「ママのとほぼ同じだけど、魔物や異種族との意思疎通がより深いといった感じだね」

「なるほど、上位互換って感じかな。でもそれって他人にバレると危ないかもしれないわよね? 本人が気付いているのかどうかも確認しないといけないけど」

「そうなんだよ。だから他からの鑑定は弾くようにしていいかボクが明日確認するね。辺境伯家に行くときも髪色は変えたほうがいいと思う」

「無難に茶色とかにしておこうか」

「うん。それでね、さっきのディルクのことなんだけど」


 モカは一旦、話を切ってから私の様子をうかがった。ここへ来てから私が、ディルクの名前や話題をあまり出さないようにしていたことを、モカはわかっているからだろう。いつまでもモカに気を使わせる情けない飼い主で申し訳ないと思いながら「そのまま話を続けて」と答えた。



「魔王には常に寄り添う相棒がいたんだ……それが白銀狼族だよ」

「……つまり、ディルクと会えばなにかを感じる可能性があるってこと?」

「そこまでは、会ってみないと分からないよ。だけど、ディルクにとっても良い出会いというのは、そういうことなのかもしれない」


 なるほど。創造神様はだから私にもモカにも関係があり、もうひとつの運命だと話したのだろう。

 それならと、私は今後のことでひとつ、モカに相談を持ち掛けてみた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。