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聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
転移した先での出会い

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50話 創造神様との面談③



「あれ? ここどこだろ」


 気が付けば真っ白な部屋にいた。さっきまで両陛下の部屋にいたはずなんだけどな。


「目が覚めたかい?」

「……ウィスティアード様?」

「そうだよ、ようこそハルカちゃん。あれ以来だね。こんなことになるとは思ってもいなかったけれど」


 久しぶりに呼ばれた本名にドキッとする。それよりまずは気になることを確認しよう。なぜここにいるのかわからない神様の小部屋。思いつくことはただひとつだ。


「あの、私、もしかして死にました?」

「死んではいないよ。気絶はしているけれど」

「なるほど。魔力切れですか。少しヤバいなと思ってはいたのですが」

「こういう機会でもないとなかなか会えないからね。ついでにここへ君に来てもらったんだよ。どうしようもなければ私が行こうと思っていたのだけれど、モカとリオレスが君の命を繋いで助けてくれたよ」

「モカは神力が混ざってるから大変だったろうに……私、殿下の魔力も受け入れることが出来たんですね」


 そういえば初日に殿下の魔力には反応があったのを思い出す。


「他の人はダメだったけれどね。さ、ゆっくり話そうじゃないか」


 創造神様が指を鳴らすと、湯気と香りがたつお茶がどこからか現れた。ほっとする優しい味わいのお茶だった。それをいただきながら、ついでとばかりにこの世界で現代日本技術を使っても良いか確認したところ、私名義で管理をすれば良いとOKをもらえた。

 ほかにはこれまでの人生を話したり、現在、未来のことを話した。それからずっと気になっていたこと。


「もしあの時、召喚が行われていなければ、私は日本での運命を全うできていましたか? それとも、やはりどこかでこちらの世界へ行くことになっていましたか」

「天寿を全うした後にこちらへ来ていただろうね」

「転生ですか」

「そうだね。モカも君に合わせて同じように転生していたと思うよ。ただ、その先で出会う人は違うまた別の人生だね」


 転生。それはつまり、いまのモカでもディルクでもない誰かと出会う人生だということだ。想像しただけで胸の奥がきゅっと締め付けられる。


「転生となると前世の記憶があるだけで、別人ですもんね。それならいまのほうが私には良かったかもしれません。大好きなモカがいて、ディルクが側にいてくれるのはそう思うと贅沢なことですね」

「そうそう、ディルクとようやくまとまったんだね。おめでとう。これで魔王化はほぼ抑えられたといってもいい」

「本当ですか! ほぼって言うのが気になりますけどとりあえず良かった。私の最大任務が最近はずっとそれになってましたから。ですが、国を出てからのことが心配です」

「そうだね。一度は君の願い通り、モカと自立することになるだろう。その時に、もう一つとても大事な出会いがある。ただし、これも全て君の選択次第なんだよ」

「選択……」

「そう。このままこの国で過ごし、ディルクも側にいて、後見人は王太子だ。誰も手は出せず、安心して暮らすこともできる。それを選ぶことだって出来るんだよ」

「すべては自分次第、ということですね」

「どの道を選ぶかは君次第だけれど、神としては魔王誕生は避けて欲しいね」

「まぁ、そうですよね。私も嫌です」


 私たち以外にいまそのことを知る人間はいないけれど、魔王誕生だなんて誰だって嫌だろう。

 

「彼は君を手に入れるために色々すっ飛ばしているからね。私もせっついたしね。これからはなんでも話し合うといいよ」

「神様に恋愛相談って贅沢すぎますよね、申し訳ありません。今更ですけど」

「ふふ、楽しいから構わないよ。特に君とモカは私の愛し子でもあるんだから。またいつでもおいで」

「え、そんな簡単に来られる感じなんですか?」

「モカはよく来ているよ? 来たくなったらいつでも歓迎するし、手紙も待っているよ」

「はい。ありがとうございます」

「さぁ、そろそろ目覚めの時間だ。またね」


 すぅっとその空間に靄がかかり、目を開けると真っ黒だった。


 夜だろうか。時間を確認しようと体を動かそうとしたら動かない。

 え、金縛り?


「……トワ?」


 ん? その声がする方に顔をあげれば、間近に彼の顔があった。タンザナイトの瞳が苦しそうにこちらを見ていた。どうやら彼に抱き締められて眠っていたらしい。


「トワっ!」 

 

 泣きそうな声と痛いほどの力で抱き締められながら、心配かけたことを謝った。


 なんと、五日も眠っていたみたい。


「ママっ!」


 私とディルクの間にモカが飛び乗ってきた。押し付けてくる顔をぐりぐりと撫で回してからめいっぱい抱き締める。


「心配かけてごめんね」

「目覚めるの遅いよっ、もうっ!」


 いや、私からしたら小一時間ほどなんだけどな。いまはディルクがいるから神様のことは言わない方がいいだろうからとりあえず再度謝っておく。


「どこか辛い所はないか? 些細なことでもいい」


 体を起こした彼がまだモカと寝転んでいる私の頭を撫でながら聞いてくる。


「うん。なんならよく寝たせいかスッキリしているよ」

「……そうか、良かった。……本当に」


 彼はさっきからどこか苦しそうで、いまもそんな顔をしている。私はモカに膝枕しながら、体を起こしてヘッドボードにもたれている彼の横に一緒に並ぶ。その時も彼は体を支えるように手伝ってくれる。


「私、魔力もらいすぎた?」

「まさか。確かにいまあなたの体の中のほとんどは俺の魔力だけど、それぐらいでなくなるような魔力量じゃない」


 さすが街を滅ぼせるだけの魔力量なだけあるわけね。


「魔力に酔うような感覚はしていないか? どこか気持ち悪いとかだるいとか」

「ううん、大丈夫。助けてくれてありがとう」


 彼の手に自分の手を重ねると、絡め取るように手を繋ぎなおされた。


「……このまま目覚めなかったらどうしようかと思った。宰相一族を滅ぼせばいいのか、王と王妃を恨めばいいのか、原因の王弟たちを処分しにいけばいいのか、それとも全部なのかどれが正しいのかさえわからなかった」

「うん、どれも正しくはないからね?」


 良かった、目覚めて良かった! 私が魔王を誕生させるところだった!


「モカ様にもそう言われた。あなたが目覚めた時にそんな俺は見たくないだろうからと言われてやめた」

「モカ、ありがとう。モカはヒーローね」

「ボクが一番ママのことを分かっているからね」

「俺を転移で連れてきてくれたのもモカ様だよ」

「モカとあなたのおかげで私は目覚められたのね、二人とも本当にありがとう」


 モカとディルクを順番に抱きしめるが、ディルクがそのまま離してくれない。


「あれからお2人は大丈夫? 殿下も大丈夫かしら」

「両陛下が目覚めてすぐに仕事させていたようだから問題ないだろう」

「殿下、ものすごくスパルタなのね。ディルクも仕事滞らせてしまったわね」

「俺の一番の仕事はあなたを目覚めさせることだったから、ここから出てすらいないよ」

「えっ、仕事や着替えとか食事どうしてたの」

「仕事はほら、あそこ。ちょうど遠征帰りだから書類仕事がいくらでもある。まだしばらく籠もれる。風呂はここのを使わせてもらっていたし、食事もモカ様が通販で用意してくれていたよ」


 彼が指さす方には、ソファとテーブルがある。そこには今まで見たことがないぐらいの書類が載っていた。


「ちゃんと庭仕事もしたよ!」

「まぁ。ありがとう。ディルクも一緒にしてくれたの?」

「ああ、ものすごい量が成るんだな。思っていた以上で驚きの毎日だったよ」


 私が普通に受け答えができることに少し安心したのかうすく微笑んでから私の頬を撫でる。普段の冷たそうな顔立ちからは想像できないこの人の微笑みは、満開の花のようだ。


「……殿下たちに知らせてくるよ」

「待って。こんな格好で会うわけにいかないでしょ」


 今の私はこちらの世界のパジャマ、ネグリジェだ。日本のシャツのようなパジャマより露出部分は多い。Tシャツと短パン、スウェット上下で寝るのが常だったからこれに気付いた今はかなり恥ずかしい。


「知らせるだけだ。時間的にも会うのは明日だな」


 時間を見れば、いまは夜の20時過ぎだからもう定時はとうに過ぎていた。


「夕食は食べられそうか? ああ、でもこの国のものは無理かもしれないな」


 なんせいつだって大雑把な味付けなうえに、肉肉肉だ。さすがにそれは食べられそうにない。


「なにか果物とかあれば嬉しい。モカは? ちゃんと食べていた?」

「食べてたよ。ロクがくれた魔物肉がすごく美味しかったんだよ!」

「そう、ロク君にもお礼言わないとね」

「また追加で貰っておきましょう。すぐ戻るからベッドから降りないように」


 頬にキスをしてから出て行く彼を確認して、あらためてモカに向き直る。


「モカ、心配かけてごめんね。色々ありがとうね」

「ボクは目覚めるのはわかっていたけど、ディルクが気の毒だったよ。皆もすごく心配している」

「うん。後でお礼言わないとね。ディルクは、もしかしてずっとああやってベッドにいてくれたの?」

「そうだよ。仕事はしていたけど、ママの手を繋いで魔力送ったり、眠る時は抱っこしてたよ。あ、ちゃんとボクのこともお世話してくれていたよ。散歩はロキとロクかアナが連れて行ってくれていたし」

「そうなんだ。こんなに時間経っていると思わなくて」

 

 モカを撫でながら時間経過のことを考える。前に創造神様と会ったときとはまた違う経過の仕方だ。法則みたいなものはないってことだろうか。


「それって創造神様に会ったんでしょ?」

「うん。途中から恋愛相談みたいになっちゃったけど」

「ボクたちは愛し子でもあるから、神様は大事にしてくれるんだよ」 

「そっか。ママもまたおいでって言われたんだけど、神殿以外からはどうやって行けばいいのか聞き忘れてたわ」

「ママなら寝る時かな? 神様に会いたいと思えば会えるよ」 

「そんな簡単なことでいいのね」

「ママには簡単じゃないでしょ。すぐ眠るもん」

「モカ、それは寝付きが良いっていう良いことなのよ」


 モカがジト目で見てくるけど、寝付きが良いのは大事なことよ?


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