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聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
転移した先での出会い

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48話 浄化

 


 殿下がそのことを両親に告げている間、私はドアを一度ノックした。すると、即時に表が騒がしくなる。


 そっとドアを開けると、なにが起こったのかわからない様子の捕らえられた二人と、近くにいた近衛さんが目を丸くしていた。

 二人は魔道具の拘束具を付けられ、口も閉じられていた。驚きの早業だ。


「トワ嬢、コイツらはどうする?」


 ニヤリと笑ったゲイル団長さんがかっこいい。団長さんは、アレだ、推しだな、うん。


「とりあえず地下牢で良いとのことでした」


 殿下には、あの医者も関係者のはずだから即捕らえると説明してあったので、スピーディに事が進んでいく。

 クィンさんは、近くにいたイケメン近衛隊長さんと数人にここの警備をお願いするかどうかを確認してくる。


「トワさん。僕たちが離れてる間、近衛隊長たちに外の警護頼んで大丈夫?」

「なにがなんだか分からないが、私たちはいつも以上に警戒してここを守ればいいんだな?」

「お願いします」

「任された」


 その人がニコッと微笑む。爽やかな風が吹いたように感じるわ。さすが近衛。顔も大事なのね。


 部屋に戻り、殿下が両陛下に説明しているのを確認してからその隙にモカに念話で聞いてみる。


『モカ、私も浄化使えるんだよね?』

『練習していないけどね。2人分だから魔力も足りるかどうかギリギリかもしれない』


 私の魔力は、特別多いわけでもなく、スキルのためだけにある。最近は付与を頑張っているがこれもスキルだ。魔法使いが使う浄化は治癒より難易度が高く使える者はいま現在いない。だけれど、こちらは神様からのスキルとしてもらった最高峰の浄化である。どんなものでも可能だと言っていた神様の言葉を信じるしかない。


 モカの魔力は、魔力より神力が大きいから人間にはあまり向いておらず、特に弱った体には効果が強く出過ぎてしまう可能性がある。となると、私が浄化した方が良いかもしれない。初めてなのに、確実に決めないといけないからプレッシャーはもちろんある。


『ママ、ここはやるしかないんじゃない?』

『――そうね』


 覚悟を決める。間違えば死。成功すれば、なんだろ、褒賞? でも私一人の力じゃないし。呑気に褒賞のことを考えられるなんて、失敗することなんて最初から頭になかったことに気が付く。


 大丈夫、私には最高の相棒のモカがいるんだから。


「殿下、治療に関してお話があります」


 殿下は、私に賭けると言ってくれた。私が浄化を使えることに関しては、くれぐれも秘密にするようにとモカが殿下に言うと「必ず守る」と約束してくれた。王と王妃にも誓約をもらってくれるらしい。


「トワ様は浄化が使えるのですね」


 それまで黙って聞いていた大神官長様がぼそっと呟くと、モカが絶対に聖女などと言わないようにと念押ししていた。大神官長様はその気迫に気圧され頷いていたけれど、神殿って聖女様がお好きなんですかね。でもいまはそんなことはどうでもいい。やるべきことがある。


「それでは、いっちょやりますか!」


 殿下には飲料水を大量に用意してもらって、ベッドから少し離れたところで待機してもらう。


 私のいまの魔力量で足りない場合、モカが補填してくれることになった。


 モカに「ママは雑だから2人まとめてした方が良い」と言われ、軽く凹む。


 モカが、目を閉じて魔力を練り出すと、二人の体から淀んだ黒い影のようなものがうねうねと出てきた。それを事前に予想していたモカが、大きな甕のようなものに集めていく。しばらく見ていると、徐々にそれが細くなってきた。


「ママ、もうすぐだよ。浄化と言ってから、2人の方に掌をかざして」

「分かった!」


 いま私の魔力は、アイドリング運転状態。


「ママ、いまだよ!」


 モカの合図と同時に、アイドリング運転状態だった魔力を意識する。


「浄化!」


 絶対良くなって!


 そう想いを込めて両手を二人に向けると、パァッと一斉に目も開けられないような光が広がる。この部屋に結界がなければ、部屋から漏れ出ていた光だろう。


「ママ! 大丈夫!?」

「トワ嬢! 大丈夫か!?」


 膝に手を当てながら体を屈め息をついていると二人が慌てて寄ってきた。


「う、うん、大丈夫。少し疲れただけ」


 ヘラっと笑えば、ホッとした表情になる。


「それより、お2人は?」


 ベッドを覗くと、二人とも大きく目を開けて、いま起こったことを確認しているようだった。

 殿下は二人に近寄り、再度説明しているようだ。


「モカ、これって成功?」

「成功もなにも、大成功だよ」


 モカが誇らしげにそう言いながら頭をドンっとぶつけてくる。そんなモカを撫でながら、涙を流し喜ぶ二人を見て思った。

 もう地球人ですらなくなったけど、こうやって人を救えるならスキルが使えることも、召喚されたことにも少しは意味があるといいな。


 そこで、私の意識は途絶えた。

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