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聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
転移した先での出会い

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3話 異世界側-ディルク視点ー



 「大至急ご報告です!」


 執務室の重厚な扉が勢いよく開いた。部下が血相を変えて駆け込んでくるのを、俺は横目で確認する。先ほど甚大な魔力の揺らぎがあり、その後もずっと違和感が続いている。きっとそれに関することだろう。


「落ち着いて説明しろ」


 部下の説明を聞きながら、王弟が動いたか、と殿下と目を合わせる。


 王位を狙う王弟と、大神官長の座を狙う副神官。その二人が強引に行った聖女召喚の儀が、今回の騒動の原因だった。聖女を呼んで自分の立場を盤石なものにしたかったのだろう。

 大神官長様が違和感に気付き、部下を通じて宰相に知らせを送り第一騎士団を動かして彼らを捕縛したようだ。関係者は全員地下牢に入れられているらしい。


 だが、問題はそれだけではなかった。問題が起きているのは、殿下の自宅でもある別宮だという。そこへと向かう。王弟はとりあえず宰相に任せておくこととなった。あの方なら冷静に処罰してくれるだろう。宰相はそういう男だ。


「ハァ、なんだって私の自宅なんだ……」


 なんでも、殿下の別宮の中庭に見たこともない建築物が現れたのだという。しかもそれが見えるのは、いまのところ部下の二名のみというよくわからない報告だった。


「いっそ見えない方が通常通りに暮らせるのではないのか?」

「それはそれで気持ち悪いと思いますがね」


 普段は王宮内を走るなんてことを絶対にしない殿下が小走り気味になりながら、今後の対策案を並べていく。


「殿下! 団長!」


 駆け寄ってきたのは双子の部下、ロキとロクだ。将来有望なだけあって、その奇妙な建築物が見えるというのも彼らだ。


「ロキ、ロク。どうなっている?」

「あちらです。見えますか?」


 ロクが指さしたほうの別宮の中庭へと付いていくと、なるほど。奇妙な建築物が見えてきた。二階建ての見たこともない造りの建築物と庭があり、その横には四角い巨大な箱のようなものが見える。


「あれは、誰かの家なのだろうか」

「殿下も団長も見えるんですね、良かった!」

「誰も見えないからオレらがおかしいのかと思いましたよ!」


 二人は安心したようにほっと息をついた。

 

「2人以外にはどう見えているんだ?」

「白い靄がかかっているんだそうです。何人かでそれが取れないかと魔法放ったんですけど、どれも弾かれるので強力な結界もかかっていると思います」

「我が国の精鋭部隊の君たちでも無理なら、残るは第三騎士団か。それから、ディルク。お前だな」

「俺には見えてるんですから、結界を壊す必要あります? 見てください、よく手入れされた庭ですよ。当たってしまうと賠償金発生するかもしれませんよ」


 庭には花壇があり、なんの花かは分からないが小花が咲き、玄関ドアへと続く石畳を彩っていた。


「ああっ! ダメです! 攻撃をしてはいけません!」


 その時、大声をあげて走ってきたのは王弟のところにいるはずの大神官長様だった。この方が走っているのも珍しいが、大声を出しているのはさらに珍しい。


「どうした、大神官長。向こうは宰相がいるとはいえまだ終わっていないだろう?」


 殿下が確認する。いくら地下牢に入れたとはいえそんな簡単に終わることではないはずだからだ。


「ご神託があって慌てて駆けつけたんです! そしたら攻撃しているし、恐怖しかありませんよ!」

「ご神託? 恐怖?」


 大神官長様曰く、聖女召喚の儀式は失敗だが、もともとこちらに縁のあった聖獣とその主が異世界転移してきたこと、彼らを拘束することなく自由に過ごさせること、害なす者は天罰がくだるだろうとご神託があったとのこと。


 すでに攻撃していたから遅い気もするが。


「なるほど、丁重にお迎えする必要があるわけだな。聖獣様はどのようなお姿なんだ?」

「聖獣様のことも主のことも詳細はわかっておりません。ですが、この建築物等をみる限り、相当進んだ世界から来られたはずです」

「確かにな。今の段階でこれが見えているのは、私、ディルク、ロクとロキ、大神官長だけか」

「いえ、私の護衛のクィンも見えているようです」


 大神官長様の後ろに控える明るい茶髪の護衛、クィンは俺と同期で魔力も多く神聖力も使えるかなり有能な男だ。


「共通点は魔力が多いということか」


 ぼそっと考えながら口に出してしまっていたらしい。視線が俺に集まるのがわかる。


「それなら、第三騎士団でも可能性はあるな。呼んでみるか」

「ディルク団長! 魔力が揺らぎ出しました!」


 俺たちより建築物に近い場所にいたロキが、建築物を指差す。俺とクィンで殿下と大神官長様を守るようにしながら建築物に近付く。片手はいつでも剣を抜けるように添えながら。


 魔力の揺らぎが建築物前に集中したと思った瞬間、扉が開いた。

 出てきたのは黒髪の女性だ。服装はこの国では見たことがない。

 小さな犬を胸に抱え、こちらを見て固まっている。


 その瞳が、妙に気になった。

 

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