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聖獣と自宅、異世界に着地  作者: 冬実 なぎさ
転移した先での出会い

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24/50

23話 写真撮影

 


「そうだ、ひとつお願いがあるんですけれども」

「お願い?」

「皆さんの写真を撮りたいです」

「「しゃしん??」」


 ディルクさんと殿下の声が重なり、二人ともこっちを見る。顔面圧が凄まじい。


「写真は、こっちでは絵画に近いものですかね。こういうものなんですけど」


 この部屋は、結界がかかっているし、モカからも許可を得ているのでスマホを取り出す。二人揃って覗き込むから距離がかなり近くなってしまう。近い。息が触れそうな距離だ。


「なんだ? その板は」


 確かに、板と言われれば板だけれど。一気に冷静になれたわ。


「これは、もしかしてモカ様?」


 ディルクさんが待受画面の赤ちゃん期のモカを見て指を差す。色も大きさも違うけど、顔に名残りがある。


「そう! 可愛いでしょ!?」


 パッとディルクさんを笑顔で見上げれば、彼が驚いたように私から目を逸らし口元を隠すようにして、「ああ、うん、可愛い」とボソボソ言ってる。

 それを殿下は、「あのディルクがねぇ……」とか言いながらニヤニヤしていたけど、なんだろ。私からすればモカを可愛いと認めてもらえればそれで良いや。


「それでこの板、いや、板じゃないんだけど。これはもともと、国内だけでなく世界中と連絡を取ることもできる通信機なんです。でもその機能は使えなくなっています。それでも元からあった動く姿を撮影できる動画や、とまってる姿を撮影できるカメラは使えるままなんです」

「へぇ、こちらにも似たものはあるけど、使える者が限られているし、君の世界は随分と進んでいる世界なんだね」

「私からすれば魔法があるっていうことの方がすごい気はしますけど。写真は、見てもらったほうが早いと思いますので、1枚モカたちを撮ってみても良いですか?」

「ああ、私も見てみたいから許可しよう」

「ありがとうございます。モカー! 写真撮影してみるから、皆でそこに並んでみてくれない?」

「まかせてっ!」


 騒がしく元気組が集まり、モカの指示に従いながらモカを真ん中に横一列に並んだ。さすが撮られ慣れているだけある。被写体が良いって素晴らしい。本物の騎士の制服姿の写真撮影ができるなんてかなり贅沢な気がする。


「じゃあ、撮るよー。はいチーズ!」


 小さな音が鳴った瞬間、空気が止まった。全員が、息を飲んでいる。手招きして集まってもらい、スマホの画面をじゃじゃんと見せた。

 そこには、モカに寄り添う少し戸惑い照れたようなアナと、笑顔の指示を出されていたロキ君とロク君、大神官長様とクィンさん、団長さんの恥ずかしそうな笑顔が写っていた。


 それを見て、みんなもワーキャーとなった。ロキ君とロク君は自分たちの写真をまじまじと覗き込み、アナは恥ずかしそうに顔を赤らめ、団長さんは「これが俺か!」とがっはっはと笑っていた。

 個人的には絶対に殿下とディルクさんのツーショットは欲しかったので、なんとか説得して並んでもらったら、画面割れるかと思ったわ。凄まじい破壊力だった。ブロマイドとして売れるんじゃないだろうか。


 ソファでそれを眺めてると、モカがひょこっと膝枕にきたので撫でていると、恐ろしいことを言う。


「ママも一緒に撮ろうよ」

「その美軍団にはこんな薄化粧で入れないわ」


 ただの公開処刑だ、やめてほしい。それに、私がばっちりメイクしたところでこの美軍団には入れない。


「トワ様は、お化粧されてないのですか?」

「今日は最低限しているよ。でも例えフルメイクしたとしても無理だわ」

「そんなことありません。トワ様はお綺麗ですよ」

「うん、ママは可愛い」

「ありがとう。でも私のことはいいのよ。ほら、モカも好きなもの食べてきな」

「でも、トワ様もあまり食べられてませんよね?」


 アナは侍女だというけれど、周りをよく見ている子だ。きっと仕事もできるに違いない。


「ママはもともとあまり食べないんだよ。お菓子はよく食べていたけど」

「モカ、そういうことは忘れてくれて良いのよ?」

「お菓子か、甘いお菓子?」


 モカを撫でていると、いつの間にか反対側にディルクさんが座ってきた。ソファで隣に座られると肩が当たり、かなり距離が近くてドキドキしてくる。

 そんなこちらの様子には気づかないのか、どんなお菓子が好きかと聞いてくる。


「甘いものは時々疲れたときに食べてたかな。チョコレートは好きだし。口さみしいときは、ドライフルーツもよく食べてた。頑張ったなってときは、実家近くのお店のフルーツタルトも好きだった」

「チョコレート……?」

「ん? チョコってないのかな」

「よく似たものはあるが、苦い薬としての飲み物で王侯貴族にしかまだあまり知られてないはずだが」


 そういえばチョコレートは昔、スパイスが入ってたり薬だったり、飲み物だったってことは聞いたことがある。それぐらいの世界観だろうか。この世界も時代が中世レベルなのかなんなのか外に出ていないのもあってよくわからないな。


「元は同じだよ。でも私の世界では、固形の甘いお菓子だよ。それこそすごい種類あるし、ドリンクとしてもあるけどそれも甘いし、驚くかも」

「ボクは、焼き芋と焼き栗も好き!」

「モカはそういう系好きだったよね。こっちにあるのかわからないけど、あれば食べてみたいね」

「チョコレートがこうも違うとなると、栗も芋も同じなのか怪しいな」

「ちょっと待って。どれか写真が残っていないかな」


 写真フォルダをずっと辿っていく。バレンタインのものがあればいいけど、このフォルダは私かモカ、家族が写っていないと残っていないから、なかなか探すのが大変だ。その様子を隣から覗き込むように見ていたのは、ディルクさんだけではなかったようで。


「待って!」

「えっ」


 後ろから腕が伸びてきて、スマホに手がかざされた。

 声は殿下なんだけど、振り向いたら間違いなく顔が、ぴったりと合ってしまう距離だ。

 なんでこんな近くに! 息が、できない。

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